-スカウト!薔薇の庭園でのために。三本目

書けば出る信者のため、書いた。
お題ひねり出してみたさんを使って。
『スカウト!薔薇の庭園で』★5鳴上嵐を10連で絶対にお迎えするマンへのお題は『君に出逢わなければ幸せだった』です。


君に出会わなければ幸せだった。なんて言う単語は俺には存在しない。むしろあの頃が地獄だったからだ。
ナルくんに誘われてお茶をする。というのはいつぶりだったかと記憶を掘り返すが、あまり覚えていないし、誘った当人はなかなかくる気配がない。もしかするとお目当ての先生と話しているのではないのだろうか。そう思案して俺は記憶を掘り返すことにした。
当時、消費されてそれを善しとしている俺と、当たり前の顔して俺を吊し上げて贄としていた周り。情報のあつめ方も知らなかったから、これが普通だと思ってたわけで。…まあ集め方も知らなかったのだけれども。あの時もこうして誘われていて、二人で食堂で向かい合って腰を下ろしてあれやこれやと話していたような気がする。…正確にはむこうが名前の通り嵐のように話を繰り広げて、俺は相槌を打つだけだったが。話の流れは、確か、今の派閥はどうか。だったりそんな話だった気がする。

「それっておかしいわよ。」
「…そうかな?」

セナの伝手で知り合った鳴上嵐くんことナルくん。彼は俺が小さな頃に何度かすれ違ったりしたことはあったけれど、話すことはなかった。今の彼はどうもマイノリティを走ってるらしいのだけれど、まぁそれは俺の人生には関係ないのでほったらかしにしておく。そうだ、今の派閥の話であった。

「別に高校時代なんて3年間だけの付き合いなのに、そこまでする必要ある?3年たてば、みんな別れるだろうに。」
「そんなことないわよ。小さなころに出会ってすれ違ったアタシたちはこうしてお茶をしてるじゃない?」
「別に、その頃友達だったわけでもないよ。」

でもお互い名前だけは知ってたりしてるわけじゃない。文哉ちゃんの出てたテレビとかよく話になってたし。…それって一方的だよね。俺別にナルくんの雑誌を読んでたわけじゃないし。

「…それでもこうしてアタシのお茶に付き合ってくれるんだから多少の友情も芽生えてるわけじゃない?」
「最低限の付き合いだからかな。」
「もうちょっと人間系統ちゃんとしたほうがいいわよ?泉ちゃんみたいになっちゃうわよ。」

セナと一緒のようになるならいいのかもしれない。とか考えてれば、絶対に今よからぬことを考えたでしょう?なんて図星。まぁ、そんな顔してたのかな。小首をかしげていると、呆れられた。まぁなんでもいいな。そんな思考を放棄していると、俺の携帯が鳴る。セナからだ。電話に出ると、クソオカマしらない?レッスンに出てこないんだけど!離れてても聞こえる声量は、確実にナルくんに聞こえてたらしく思い出したように驚いた表情をしている。

「…ん?どうだろう?俺の目の前にはいないよ?」
「そう、じゃああんたの目の前にいるのは誰なのかな?」

電話口からでないところから聞こえてきて、俺はそっと後ろを向くとそこに怒りをあらわにしたセナが立っていた。あのあとこってり俺も鳴上くんも叱られるわけなんだけれど。
そう思い出したところで俺をここに呼び出した人物が現れた。

「文哉ちゃん。ごめんなさいね。泉ちゃんに捕まってたの。」
「お疲れ様。鳴上くん。」
「もう、昔みたいにナルくんって呼んでくれていいのよ?」
「…そうだね。なんだか。ちょっと環境の違いに戸惑ってる感じだから、許して。」
「もう、仕方ないわねぇ。」

いつか前みたいに、ナルくんって呼んでほしいわねぇ。アタシの方が年下なのにちゃんづけで呼んで、年上の文哉ちゃんが苗字にくん。だなんて改まってるんですもの。おかしいじゃない。
そう言われれば確かにそうだと俺は納得して、いつかね。と適当にはぐらかした。

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