レクイエム*誓いの剣と返礼祭-07

どの順番でライブをするか。と思ってたら、だんだんハードルが高くなってるのだが。一番手の俺がライブを始める。ベースのおれは、チューニングの音を出して、そこに順番に音が乗る。俺、すーちゃん、ナルくん、りっちゃん、セナ。レオの順で乗っかってきて。まとまった音になる。俺の目を全員見てくるので、レオを見るとあったと言わんばかりに笑ったので俺はそこでゴーサインを出して、歌い始める。一曲目はレオの音で始めるアカペラ。耳のいいレオだから調整していい具合に音を合わしてくれるのを信じてる。
そのまま楽曲を進ませて、二曲目は俺のソロ楽曲。駄目押しのアレ。前に事務所問題でゴタゴタしてた時に俺にくれた曲。しょっぱなは一人、そしてレオが、セナが入って踊り、最後にりっちゃんなるくんすーちゃんが入ってきて俺たちを追い越して、また最後に俺がセンターで踊って回る。
前の踊った光景がふと脳裏に停まって、思考が一瞬止まったが体は普通に動いてた。そっと周りを見回しても、みんな何食わぬ顔で動いてるので俺はどうも正常に動いていたらしい。何食わぬ顔で俺も踊ってたら、セナからひじ打ちされたので、ばれてるようだ。…ちぇ。
それでも、そのまま俺たちはパフォーマンスを続けていく。俺の指示通りに動くことがきもちわるいんだけど、それをも飲み込むのが王なんだろうか。こんな負担負わせてたのかな。なんて思うと胃が痛くなる。曲間でナルくんとセナの見せ場を出す。その間に俺たちはバックを務めて、最終兵器、りっちゃんとレオのピアノ連弾でセナとナルくんのコーラスで俺とすーちゃんの殺陣まで入れて、新しいことも昔のことも全部全部取り入れて俺のライブは終わらせた。
終わった瞬間に、たぶん負けただろうな、なんて思う。レオが居ないから、帰ってきたらやりたかったライブだ。誰が一人いなくてもまわらないライブにしたつもりだったけれど、こうやって実際に動かしてみるとどうも欠点ばかりが見えてくる。ライブが終わってスタジオに戻り、次の打ち合わせもそこそこにして、必要そうなものを掴むだけ掴んだ俺はふらりと席を立った。俺ってなんだろうね?っていうのが心の根っこに刺さってどうも抜けない。廊下にでて横に反れてずるずるしゃがみ込んで、エネルギー補給のためにお菓子を頬に詰め込んでたら、セナが出てきて俺の横に立って壁に身を預けてた。

「文哉。」
「ん、セナ?」
「どこいこうとしてるの?」

外の風に当たりに…?なんで疑問形?なんて言われたけれど、俺もはっきり何とも言えない。だんまりを決め込んでたら、セナが水分とった?って言われてまだ。だったことを思い出したらペットボトルぶつけられた。感謝しつつ飲み、胃にご飯を収める。

「今、何考えてる?」
「セナとレオの根性の別れの一言について。」
「馬鹿。まだ結果も出てないのに。」
「予防線ばっかり張る人生だからねぇ。俺は。」

そうして自分を守ってた。そう思うことがたくさんあった。自分を守るために空想に入る。本の世界に入り浸る。自分を消費してもなお無視して生きてきた代償なんじゃないかな、って今更思う。もっと、なんとかしておけばよかった。なんて思うけれども、過ぎてしまったものは仕方ない。そっとセナの足に抱きつく。

「…大丈夫、これからもなにがあっても生きていけるよ。」

はぁ?とセナが言うと同時にナルくんがそろそろいくわよぉ。と言ってくれたので、俺も返事をしつつのろのろと動き出した。俺の手をセナがギュッと握って動くように引いてくれるので俺はそれが嬉しくて、かみしめながらセナの後ろを歩いてると、レオが俺の背中を叩いた。…なんだったんだろう?そう思いながらも、時間は進むから周りを見ながらライブに務めて、それぞれの『王さま』のサポートに俺は務める。レオは嬉しそうだし、セナはちょっとなんだか不満気だし、それぞれの『王さま』は主張が激しいので俺が入って緩衝したり、補佐して流したりして恙なく進める。やることはいつも変わらないので、そこで心を落ち着かせながらも。プログラムを進める。レオが意味ありげに頷いてるのがよく解らないけれど、でもきっと。何かを想っているのだろう。みんな対策がバラバラだから其処を縫うように俺も決めたけど、暗記の得意な俺と違ってすーちゃんは必死になって覚えてたのでコツを教えたりいろいろやったけれど、沢山パターンをつくったりっちゃんの『王さま』にも頑張ってついてきている。俺は『王さま』に振り回されてるので、俺はあんまりファンサービスできなくて、団扇になんかいっぱい書いてるけど、対応できなくてごめんね。ってほんとに思う。けど、ナルくんの『王さま』がしゃべってるんだもんな、いいよな。って思ったらりっちゃんに首根っこ掴まれた。ちぇー。

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