-ナルくんと俺とカイロ

あなたに書いてほしい物語さんを使って。ナルくんが誕生日だったので。
鳴上嵐と保村文哉さんには「指先が触れた」で始まり、「君には届かない」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字)以上でお願いします




指先が触れた。スタジオの床に落ちたペンを拾うために文哉の手と嵐の手が重なるように触れた。思ったよりも冷たい手だったので、嵐は小さく驚きの声を上げて手をひっこめた。音を聞いて文哉はごめんね?俺の手冷たいでしょ?と困ったように笑いながら文哉はポケットからカイロを取り出して、嵐に押し付けた。

「冷え性なの?」
「どうだろうねぇ…足もとはだいたい暖かいけど…?」
「手が氷みたいに冷たいじゃない。せっかく綺麗な手をしてるんだからぁ。」

体温低いんじゃない?言われて、文哉は自分の首筋に手を添えてみたがあまりよく解らない。全体的に下がっているのだったらわかるはずないか。そう判断して、自分でペンを拾って筆箱に入れて、とりあえず寒いしスタジオが温まるまでに、あったかい飲み物でも買いに行こうと嵐は文哉を誘う。断る理由もなくて、文哉も二つ返事でそれに乗っかって嵐の手をとって歩き出す。冷たい手だけれども、文哉の手と嵐の手の間には世界を分けるかのようにカイロがあった。

「ナルくんの手あったかいね。」
「文哉ちゃんの手が冷たいのよ。」
「んー自覚はないんだけどなぁ。」
「カイロ持ってるんだから使いなさいよね」

足の大きな血管を温めるほうが大事だよ。ほら、熱中症でも冷やすでしょ?そう言われた論に苦笑を浮かべる。確かにそうだけども、熱中症でそれって効果ないって聞いたから、温めても効果ないんじゃないかしら?純粋な疑問を投げてみたら、文哉は驚いてからあれやこれやと思考を回している。文哉はよく思考を巡らせているのをよく見る。そういう時はよく口元に手をやって小言を台詞を覚えるかのように呟くのを知ったのは最近だ。第一を『Knights』にして思考を展開するので、こういうときは自分たちによりよい提案をしてくれるのを知っているので嵐は文哉の返事を待った。

「……まぁ、人体ってよく解らないよね」
「カイロ返すわよ。ちゃんと文哉ちゃん使ってちょうだい。」

最近テレビの仕事も落ち着いてるし。大丈夫だよ。ナルくんの方が大事だから、使ってやってよ。それともこうして、ずっとカイロを挟んだ状態で手をつないでおく?俺は別にかまわないけど?
いじわるな子どものようににっこり笑った文哉はつないだ手を嵐の目の高さまで持ってきてゆるく主張するように振る。黒い文哉の瞳は楽しそうに弧を描いてる。

「文哉ちゃん意地悪。」
「忠実な犬だって羽目を外してたまには飼い主の手を甘噛みしたくなるんです〜因みに外すつもりはありませーん。」

ほらほらいくよ〜と文哉は嬉しそうに先を歩き出して、つられてその後ろを嵐が従う形になった。嵐は文哉の背中を見ながら、ふと思い小さな言葉で感謝を告げる。だから、この感謝の声は君には届かない




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