スカウト!ブルーフィラメント-2e

打ち合わせの最中飲み物を買いに出かけたらレオと行き会った。どこかに用事があるらしく俺と出会った瞬間俺の腕を掴んで走り出した。まって!?また?ばたばたと足音を鳴らしながら廊下を駆け抜ける。蓮巳や生指に会ったらえらい目にあうぞ。と言えど、レオは聞いてくれない。そのままバタバタ足を鳴らしていると、レオが言う「文哉、ついて来い!」だとかいうから俺は即断で首を振る。「ん!」と短い返事をしたらついて来い!とか言いながら俺の手を離すから、追いかけるために走る。
長い廊下の人ごみを縫って階段を駆け上った先でレオは大きな声を上げた。

「ソラ〜!ついに見つけたぞ!また会えて嬉しい!そこを動くな!じゃなくて…ええと、ちょっと話せるか?」
「え?」

屋上に緑のメッシュを入れた男の子が一人。おそらく、レオが言ってるので彼がソラなんだろう。先ほど青葉がしゃべっていたユニットの。…なんでもいいけど、なんで俺ここによばれてるの?レオがよくわからんと首を傾げていると、ソラと呼ばれた子がレオの言葉をなぞるように言う。だから、なんだんだ。

「おっ、謎かけか!魔法使いっぽいな!おまえらそういう『ユニット』なんだろ?」
「はい!宙たち『Switch』は幸せを運ぶ魔法使いな〜」
「すてきなコンセプトだな!そういうやつらが、去年度にもいたらよかったのに〜?なぁ。文哉」

昨年度の話が出るとどうも俺は無意識にいろいろと考えてしまう。自己防衛の一旦なのかわからないが、何もないので俺は返事もせずいるから終わったら呼んで。と端っこに移動した。こうやってみたらレオって高校一年生でも通用しそうだな。…って身長的に俺もか。…くそ、なんで俺こんなに身長低いの?来年になったら瀬名を追い抜いて…ればいいな。だとか。ちょっと自己嫌悪に陥りながらも視線はレオに向ける。カラカラ笑いながら二人であれやこれやとやってる。

「いや、この屋上は色々といわくつきだから。昔はそういう連中もいたって聞くし。」

そこで俺が呼ばれた必要性も理解した。万が一飛び降りでも仕掛けてたら俺が引き揚げろってことですね。はい。不発でしたけど。それで呼ばれたの?じゃあ俺もういらないじゃんね。とか思いながらもいつ再びなるかなんてわらないので、思考トレースしつつ様子をうかがうが、レオの隣の奴の性格もなにもわかったもんじゃないのでトレースもできない。くそ。見ておくしかないね。

「おれの言葉におまえが傷ついて、世を儚んで飛び降りるつもりじゃないかって、だから行き当たりの文哉を拾って心配で大慌てで駆けつけてきたんだよ。なんか思いのほかにあっけらかんとしてるし、杞憂だったっぽいけど。」

宙は飛び降りたりしません!死んじゃうので。
うん、はっきり言ってくれてわかったが、俺はここで無用の長物となってしまったようだ。…さて、どうしようか。と思っていれば携帯の存在を思い出した。掲示板にレオに連れ去られた。とだけ書いておけば大体許されるだろう。あんだけ渋い顔されてたんだし。なんか別の話もあったんだろう。仕事も最近忙しくなってきてるので、丁度良い休憩時間だ。

「おれが勝手に慌てちゃっただけだし、むしろおれはお前に謝りに来たんだよ。ごめんなソラ。」
「どうして、レオさんが謝ります?」
「おれ、おまえを宇宙人って読んじゃったから普通の人間じゃないって言ったんだ。それって場合に寄っちゃ最大の侮辱だろ」

ぼんやりとレオたちの会話を聞きながら、異端についてぼんやりと想いを馳せる。人間離れした才能を弾く。ということは、彼もまたどこか人からかけ離れたものを持っているのだろう。…正直な話、今は売れてないからそういうのもいいな。って思って試行錯誤した時期は有ったけれども、まぁやってると人から遠くなっていくのは解る気がする。

「レオさん、騎士さんなんです?格好良いな〜」
「名前だけの張りぼてだけどな。まだ名前ぐらいは残っているみたいだし。そういう立場を求められるようならそのようにふるまうよ。呼び名なんかどうでもいいけど、そういうもので規定されないと、どうやって生きていけばいいか解らない。わかんなくなっちゃったなぁ。いつのまにか。」

レオ。と呼びかける前に、一年がレオの頭を撫でた。…たぶんきっと今は俺の出る幕じゃない。あとでちょっと話は必要かもしれないけれどね。…ちょっとそう思ってたのなら俺が怒る。べつに『Knights』じゃなくてもいいとは言わないが、レオが幸せじゃないっていうなら俺が改善するためにどれだけでも動いてやる。って言うのに。

「後ろの人が怒ってる『色』してるから、宙はこれ以上しないな〜」
「あ!?文哉?」
「…文哉ですけど?違う。これは!」

…なんだよ、不倫のばれた男みたいな感じの言い方してさぁ。慌てて俺の方に首を振る姿を見て、絶対に今俺のこと忘れてただろ。っていう確信を持つ。人を呼んでおいてこれなんだから、レオは。「このひと、レオさんのこととんでもない『好き』の色してるな〜」とか言うから俺もちょっとドキッとする。むっとしたら満面の笑みで図星なんだな!とレオに言われて俺は何も言えなくなる。もう、そうです。悪かったな!でも好きは人としてだからな!!いきなり言われたことに思考がぶっ飛んでしまったが、違うそうじゃない。

「レオさんの『色』はとっても綺麗、月から見える地球みたいです。あらゆる生命の坩堝、この広くて淋しい大宇宙に一粒だけ浮かんだ奇跡。でも今は曇り空でちょっと哀しそう、だけど、宙を宇宙人だと思って声をかけた時、レオさんを覆ってた雲がほんのすこし薄れたんです。」

ほんとに心から宇宙人に会いたいんだな〜って思いました。今のお前とおなじようなことを宇宙人が言ってくれたから。だからおれはすこしだけ前を向けて、立ち直る『きっかけ』を得られたんだよ。感謝してる。でも宙は宇宙人じゃないので、ちょっと困りました。
こら、よそ様困らせるんじゃないの。さすがに俺でも呼べないから、どうするかと頭をひねる所なんだろう。そうして、行き着いた先が転校生と資料を集めて本物の宇宙人を呼ぶ方法を調べたそうだ。…なんという、浮世離れしてると言うか。正解がわからないから、可能性があるから試したとのこと。

「ベントラーベントラー、スペースピープル、スペースブラザー?何でもいいけど、宙の呼びかけに答えて姿を見せよ!これが呪文です、さぁレオさんも後ろのお兄さんも一緒に!」
「えっ?おれも?っていうかなんで、おまえは俺のために?何の特にもならないのに、粋狂な子だなぁ?」

っていうか、ほぼ日本語じゃねえか。なんて俺はぼやきつつ、呆れるし、なんかレオが珍しくペースを乱されてる感じ?そっちの方にビックリする。俺は参加するつもりもないので二人でやりなよ。と掌を振って勝手にしてろとモーションかける。

「損得じゃないな〜。人を助けるのが魔法使いの役目です!むかぁし、息苦しかった宙をししょ〜が助けてくれたみたいに!ほら後のお兄さんも!興味がある『色』してますからご一緒に!」
「文哉も呼ぼうぜ!」
「…レオに言われちゃあな。」

そう、しかたなくだよ。俺の知的好奇心が疼いているとか絶対ないんだからな。そう、仕方なくだよ。

「宙は他の人に比べて変なのかもしれないけど、その『変な部分』をそのために使います…なにこかしいですか?まだ『何で?』ですか?」
「ううん、正しい。おれは全面的に肯定するよ。文哉もだろ」
「まぁね。レオが言うならば。しゃーないね。」

本心は別にどうでもいいんだけど。まぁ、優しい世界を作りたいって言うならいいんじゃない?っていうぐらい。ほんと。そうやって見境なく魔法を使うのはいいけど、使いすぎんなよ。とも俺は口を出す気もないので適当に二人の方によっていく。

「ほら、さっさとやるぞ。」

セナが怒ってさっきから着信かけてきてるのがトレースでわかってるからさっさと終わらせてレオの気を済ませて、首根っこつかんで俺は行かねばならないのが予想できたからだ。断じて恥ずかしいからじゃないからな。

「仕事の打ち合わせをさぼって宇宙人を召喚する儀式をするとか。知られたらあとでまたみんなに怒られそう。たまにはそんな日があってもいいよな。大人がみんな無意味だって笑い飛ばすようなことを一生懸命やる日があってもな。文哉?」
「俺はセナには嘘つけないからね。」
「げっ、俺の命令でも?」
「うーん…板挟みになっちゃうけど。どっちにも正直に話すよ?」
「文哉、命令だ!話をごまかせ」
「はーい」
「お兄さん嬉しそうな『色』な〜レオさんと一緒に何かするの幸せみたいな『色』してるのな」
「ちびすけ、知ってるか?そういうのを大体『青春』って呼ぶんだ。ほらやんぞ。」

ちびすけがなんか言ったけど、それよりも俺は今貰った命令をなんとかするのに必死に頭を回さねばならんからさっさと宇宙人召喚するならさっさとやろうぜ。なんでもいいから!!


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