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そんな初回が終わって次回の予約を取るために、職員室に行くため歩いていると朔間零が姿を現した。いつもと変わらない様子で赤い目がじっとりと登良を上から下まで見た。

「登良くんや。」
「朔間先輩、こんにちわ。」
「面白いことに巻き込まれてるようじゃな。」
「……面白い、ことなのでしょうか?」
「深海くんと、斎宮くんの子と、愉快なことをしようとしていると転校生の嬢ちゃんから聞いたぞい。」

……面白いのだろうか。三奇人の一人朔間零が面白いというのだから『臨時ユニット』なるものは面白いにつながるのだろうか。恐らくは物珍しいだけで言っているのではないかと勘繰ってしまう。

「その様子じゃとかなり色々あったみたいじゃな。いい意味で。」
「大丈夫ですかね。俺で。俺が中心で…。怖いんです。」
「心配性じゃのう。」
「三年生の先輩と二年生の先輩を差し置いて俺でいいのかと。」
「そういうのは向き不向きあるのは知っておろうに。」

そうですけど……。言葉尻がしぼんで、なんだかなぁ。と視線を落とした。恐らくそういう意味で考えるならば、適任は自分だと理解してはいるけれども、何とも飲み込めなくて唸った。その様子が手に取るようにわかるのか楽しそうに目が弧を描いている。

「……そもそも、俺は中心になるべき人間ではないんです。」
「うむ?」
「いいえ、なんでもないです。今のは聞かなかったことにしてください。」
「どういうことかの?」
「今回の宿題を一つに兄と交渉もしますし、望んだ形ではないにしよスキルチェックができるので、頑張りますよ。朔間先輩。俺は自分の吐いた唾を飲み込まないようにします。」

どこか影のある笑みを一つして、急いでいるのでと登良は駆け足で零の横を通り抜けた。これは一度三毛縞くんに聞いてみる必要があるやもしれぬな。と一人ごちて、ふらりと歩き出した。そんな消えたことにも気づかず登良の頭の中には、一つのひっかかりが残っていた。
そういう話を聞いていたので、『Ra*bits』の休憩時間になずなは探りを入れてみることにした。

「登良ちん!」
「あ。はい。」
「創ちんから聞いたぞ!リーダーやるんだってな」

俺がメインをやっていいのかな。とは思うんですよね。そうこぼしながら、視線を落とす。安心しろって、みんないるだろう?なんて声をかけてなだめて、なにが心配なのかを問いかける、なずなの問いかけに登良は言葉を選ぶようにぽつりぽつりと落としていく。

「大丈夫だとわかってても不安で不安で仕方ないんです。この瞬間に。おおきなトラブルが舞い込んでくるんじゃないのか。と思うと、怖くて。いきなり照明が切れたり、電気が落ちたりとか。」
「考えすぎだって。登良ちん。」
「でも、そういうものを上手にかわさなきゃ、リーダーなんてできないんでしょう。臨機応変とか」
「誰でも初めはそうだよ。」
「……あの兄は、最初からなんでもできてました。それが『当たり前』で、俺も求められてました。」

なにもできなかったから、俺は……。
そこで口が閉じられた。俯いていて登良の表情は見えない。なずなは登良の名前を呼ぶが、少し反応が鈍く間をおいてから一言詫びてから登良は顔を上げた。難しく色々考えているのか表情は暗い。もう少し考えてみますし、一旦飲み物買いにいってきます。と一言述べて頭を下げてなずなの脇を逃げるように走っていった。

「まぁ、あの斑ちんはなんでもできるからなぁ。」

兄弟の苦しみなんていうのはあるのかもしれない。と消えていく背中を見つめて思う。創が一緒にユニットを組むから見ていてもらった方がいいのかもしれないな。と思いながら深いため息をついた。



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