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しばらくして創が帰ってきて、お茶をしてると光とへとへとの友也が帰ってきた。どうだった?と聞くと、光が太陽みたいな笑顔でアドちゃん先輩と合宿!となるほどわからん。の報告に友也が解説をいれる。
「『UNDEAD』も同じことを考えてたみたいで、今回合同合宿になりました。」
そんな一言を聴いて登良は固まった。背徳的で過激的なユニットだと記憶している。そのリーダーの朔間は、兄が師事していたと記憶している。言わば、師にあたる人がいるユニット。そんな中に『Ra*bits』が入る。一人が足を引っ張ればそれはもう『Ra*bits』全体の評価の下落に繋がる。今回、もしかしてこの合宿で頑張らないといけないのでは?そう考えると、自分の顔から血の気が引いた。真面目にアイドル活動の練習をやらねば。どうしよう、なにから始めればいいんだろう。
「登良くん、大丈夫ですか?」
「あ……荷物とか考え事してた。」
「大丈夫ですよ、今回は転校生さんが手配してくださるので、必要なのは着替えだけで。現地でテントを立てる。って言ってましたよ。」
「そっか……ならよかった。」
力なく笑うと、登良くんご飯はなににしましょうか。と言うからみんなでわいわいと決めたりして、あっという間に当日。
学院の最寄り駅に集合とのことだったので、朝から鞄を持って家から出ようとすると兄に捕まった。神経質な妹が心配そうにこちらを見ていたので、登良はひっそりとため息をつく。部屋にも戻れとアイコンタクトを察したのか妹はひっそりと移動するのを見送る。妹を送ったのはいいが、この化け物みたいな兄をどう処理すればいいのだろうか。と考えあぐねた。
「登良くん、お出かけかあ?」
「ユニットの合宿。ホワイトボードにも書いてる。行ってきます」
「行ってきますのハグを!」
「日本です。しません。」
「送っていこうか?」
「いらない」
あの頃の登良くんは素直だったのになあ!と笑う兄を蹴飛ばして、登良は荷物を抱える。鞄は二つ。ひとつは着替えと、もう片方は休憩のおやつ。行ってきますと声をかけると、お兄ちゃんにはないのかな?と再度ハグを強要してくるので足蹴にしておいた。はははっ元気なのはいいことだあ、という兄の声を聞きながら登良は家を出た。出る瞬間からこれは疲れる。と思いながら、ため息をつく。思ったより兄に時間をとられた事を根に持ちながら、集合場所に急ぐ。空を見上げると、今日もいい天気になりそうだと思いつつ、時計に目をやるともうすぐ電車がやって来る時間。やば。と小さく声を出して、一気に駅まで加速した。
現地に到着すると、友也とあんず。それから『UNDEAD』の先輩が一人いた。確か、乙狩だという名字だったのを思い出して、登良は挨拶をする。
「おはようございます、あんず先輩、乙狩先輩。友也。」
「登良、早いな」
「兄に絡まれて、面倒だから逃げてきた。」
お前も大変だな。と背中を叩かれて、登良は話題を変えるように何の話をしてたんですか?と投げかかける、乙狩くんが待ち合わせの場所の確認しようとしてたから、私が集合場所はここだよ。と教えてたところで言う登良くんが来たんだよ。とあんずに教えてもらう。一通りのあらましを聴いて、みなさん集合早いですね。と無難な相槌を打つ。
「安心したら腹が減ったな。」
「あ、駅の中にね、いいお蕎麦屋さんがあるよ。トッピングが自由にできるの!」
「それ、立ち食いの蕎麦屋ですよね。」
女子高生が一人でそういう場所って、と言葉を飲み込んだ。もしかするとユニットの誰かといったかもしれないのだから、言わない方がいいかと登良は三人のやり取りを黙って見ていることにした。口は災いの元、触らぬ神になんとやら。たぶん、触っても怒らないのがあんずだろうけれども、親しき中にも礼儀はいる。
「改札口からちょっと離れたところにあるお店ですよね…まだ時間もあるし、食べていきますか?念のためにに〜ちゃんに連絡を入れておけば朔間先輩にも連絡がいくと思いますし。」
「そうか、真白は気が利くな、お前も肉そばを食って力をつけろ、あんずも三毛縞も、今よりもっと大きくなれ」
「俺は、家で食べてきたので、三人でどうぞ。」
「えっ!?お、俺もいいですよ。あんずさんと乙狩先輩だけで食べてきてください。」
俺は真白と三毛縞を見ていると不安になる。不安を覚えるほど頼りないってことですか。確かに、俺は何をしても普通だし、実力が足りてないって自覚してますけど。まさか面と向かって言われると思わなかったなぁ。大丈夫だよ、友也は凄いって思うよ?
肩を落とす友也をなだめると、乙狩が言葉が足りなかった。と謝って言葉を説明する。
真白と三毛縞は『小さくて弱い生き物』だ。天満もそうだ。『Ra*bits』のメンバーは皆、ちいさい。俺は大きく強い、弱い生き物を庇護する義務がある。肉は夏バテも防止できる。だから、肉を食え。食って強くおおきくなれ。いや、朝から肉は……でも、乙狩先輩は俺たちのためを思って言ってくれたんですよね。光が乙狩先輩は優しくて頼りになる先輩だって、自慢したくなる気持ち今ならわかる気がします。登良、気を使わせてごめんな。
ぜんぜん。と首を振ると遠くからまた誰かがやって来るのを見て、お蕎麦屋さん、いけそうにないかもですね。と登良は苦笑を浮かべて遠くに見える姿に眉尻を下げた。
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