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「がたがたと貴方たちは…、話しているだけでは何も進みませんよ」

 声の先には紫がかった色素のアンシンメトリーな髪をした年若い青年がいた。

「…マルクス大佐っ!!若造が…我等に抗議する気かっ」

 馬鹿にされたと直ぐさま気付いた幹部の一人が、彼、ゼファール・マルクスに声をあげたと同時だったと言えよう。一羽の大鷲が硝子張りの窓を摺り抜け入って来たのだ。
 魔術が施されているこの一室に入ってこられたことから、この鷲が何者かによって術をかけられているということがわかる。室内は一瞬騒然とした、がしかしそんな中ゼファールだけが一人不敵な笑みをうかべていた。

「吉報、いや…むしろこれは悲報としか言いようがないですかね」
 
 ゼファールのその一言に気付いたルイーダは、すぐさま問いかけた。

「ちょっと!どういうことなの?」

「簡単なことだよ。まあ、あの慌てふためいているご老体共にはわからないだろうけど、君は曲がりなりにもあのギルベルト家のご令嬢だろ」

 その応答には、一つの答えが隠されていた。つまりあの大鷲には表面上はわからないがメッセージが魔術によってほどこされているということだ。

 すぐさま読み解いたルイーダは驚愕の眼を向けた。

「ゼファール…これは」

「そのままの通りだと思いますよ。バルトルを通さずにあれを私の元に飛ばしてきた。さすがは私の影狼だ…そうは思いませんかギルベルト嬢」

「あなたは本当に彼のことが大好きなのね。そんなことよりもこれの内容が事実だとしたら、いずれ国際問題になりかねないわよ!」

 記されていた事実、それは今この国ルーベルにおいて起こっている謎の病と同等のものが隣国カラバスでも発症が確認されたというものだった。

「まあ、これはさすがにここのご老体共も自分のことだけを考えてはいられないでしょう。にしても本当に困りましたね」

 普段表情を変えないゼファールだが、この時ばかりは苦々しい顔を浮かべていたのだった。





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