「ねえ、『ラルさん』」
座ったままの俺に体を密着させてくるのは白い髪の少女。にこりと微笑んで三日月形にした目の色は銀。その奥に、血管の色が浮いて若干赤みかかって見える。顔のパーツも、その笑い方も、たしかに彼女に似ているのに、絶対に彼女ではない。
「なんだ」
「何を考えているの?」
その体から香るのは花によく似た匂い。淡い香水の匂い。
あいつからは絶対に香らない。
「なんにも」
「嘘」
「お前にもわかるのか、俺の考えていることが」
わかんない、と彼女はけらけらと笑う。俺くらいの年頃の女はみんなそうだ。なんにも面白くないのに笑う。その声も、その様も、たしかにあいつに似ているのに、どうしてだか無性に腹が立つ。
「やめろ」
「何を?」
「笑うのを」
「どうして? 楽しいのを笑うのはいけないことかな?」
きょとん、としている顔。わざとらしいその姿。
「やめろって!」
その細い手首を握ると、あれよりも細くて驚いた。このまま少し力を入れたら折れてしまいそうなその手首をまじまじと見つめていたからか、その持ち主がもうすぐ鼻が触れ合いそうなくらい近づいていることに気がつかなかった。一緒にいると嬉しいんだ。だってね。
「だって、『ボク』は『キミ』のことが、大好きなんだよ?」
そういって唇を重ねた。
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