真夜中。草木も眠る丑三つ時……とかいう、そんな時間。ボクはおとなしく寝る気にもなれず、図書室で借りてきた本を、火を最小限に抑えて読んでいた。ぱらり。本の主人公は仲間を信じ、そして信じられ成長していった。もうすぐ、もうすぐ全てが終わる。それにしては、まだまだページが残りすぎているようだけど。……ノースが言っていた、裏切りがあるのもこの辺だ。伏線はいくつも貼られていた。多分、彼だろう。主人公の恋人の……。
と、ドキドキしながら読み進めていると、ドアの外に人の気配を感じて火を消して本を隠す。そしてなんでもなかったかのように布団をかぶって眠るふり。なつかしいな。まるでラルさんと夜ふたりで話し合っていた頃のよう。思い出して、布団の中で苦笑いをもらす。コンコン、とノックの音。この力加減は多分、いや、きっとラルさんだ。聞こえていないふりをしていると、しばらく間の空いたのちにガチャリと簡単にそれが開けられた。

(鍵をしてなかったんだ)

ころされる? そう思ったけれど動けなかった。動いてどうするんだ? 彼と剣を合わせるのか? 殺される前に、殺すのか? ほかの大勢と同じように。ボクが殺さなくても、ボクが死んでいたらきっと周りはラルさんを殺すだろう。……そこまで瞬間に考えたけれど、近づいてくる気からは、殺意を感じなかった。きい、とそろそろ油をさしたほうがよさそうなドアの音。閉めたらしい。

「寝てるのか?」

柔らかい声。寝たふりしなきゃと身じろぎひとつせずただ軽く目をつむる。かつん、かつん。彼の履いているブーツの音がただ響いた。視線を感じる。結構近くにいるんだなあと感じた。それでも、ばれないようにただじっと。
はあ、とか、ああ、とか、なんといっていいのか迷っているような声ばかり出す彼の気は、とても複雑だった。どうしたの? 何が言いたいの? 何を言ってもいいんだよ。そう彼を直接見上げて笑いながら言いたかった。一つため息をついて、それから彼は言った。

「ドリラ……。ごめん、な」

つぶやくように。それはまるでボクではなく、彼の中のボクに謝るみたいだった。まあ、ボクは寝ているのだから間違っていないけれど。何がごめんなの? どうして謝るの? ……謝らないといけないことになる前に、どうしてボクに言ってくれなかったの? ボクは、ボクは、頼りにならない?
じっとふたり押し黙ったままだった。いや、じっと、とかいうそんな時間だったんじゃないのかもしれない。でもボクはどうしても起き上がれなくて。目を開けることができなくて。どうしてだよ。どうしてなんだボク? いま言わなきゃ、ラルさんはきっと。

「じゃあな」

ふわり、と頭を撫でた手から伝わってきたその感情に、もう触れられないだろうその体温に、ボクは思わず涙した。

(もう会えないって、知ってるよ)(2012/04/11)
title by ふたりへのお題ったー

ねむるあいだにいなくなってね「おやすみなさい、いい夢を」→これ
多分もう続かない。多分。わかんないけど。
ラルドリ可愛すぎてそろそろ爆発するんじゃないかなあって思う。





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