-名もない虚構-
今日はやたらイミテーションが襲ってきた。
一体を倒したら間髪入れずまた一体。
ときには複数で来たりしたが、こちらは10人、余程の数でなければ相手にもならない。
俺とバッツ、ティーダが前線で暴れてその後ろでクラウド、スコールとフリオニールが援護。
前からも後ろから襲ってくるので、魔法を使うティナとオニオンを中心にぐるっと円(にしてはいびつだが)になっていた。
円になってると言っても、バッツとティーダでさえ結構離れている。
フリオニール達の姿を確認するだけで精一杯だ。
「ジタン!!そっち行ったぞ!!」
「まかせとけぇ!!」
こっちに向かってくるイミテーションの背後に素早く移動し、切り付ける。
不意を取られたイミテーションは、そのまま消滅した。
地面に華麗に着地すると、バッツがこっちに走ってきた。
「っと、これで最後か?」
「多分な、まだ出てくるかもしんねぇけど」
「ん?フリオニール達が呼んでるみたいだな」
よく見るとフリオニールが手を大きく振っている。
こっちにこいということか。
フリオニールのところへ行くと、クラウドもいた。
「どうやら、敵が増えたみたいだ」
フリオニールが神妙そうに言う。
そんなのわかってるさ。
さっきまでずっと戦ってたろ。
「あ…えっと、数もそうなんだが種類が」「種類が?」
「あんた達気づかなかったのか?」
クラウドの問いに二人で首を横に降る。
イミテーションなんて、一々確認してられない。
「フリオニールが言うには知らない戦い方をするやつと戦ったらしい」
「そうなんだ。あれは誰かの世界の人物なのかもしくは、」
「新しい敵か仲間かって事か」
「そういうことだ」
また増えるのか?出来れば味方でありたい。
今までのイミテーションは、仲間かもしくはカオスの奴らだったからな。
バッツが唸るように首を傾げていた。
「どうしたバッツ?」
「いや……またイミテーション?」
バッツの見てた方向を見ると、また一体のイミテーションがこちらにゆっくり歩いてきた。
「…見たことないやつだな」
そう呟いてさっきフリオニール達が言ってたのはコレか、と理解する。
あれ?でも……
「あのイミテーション、クラウドと服装が似てるな」
髪型こそ違うが、服装が似ていて。
「……クラウド、あれ、バスターソード…?」
フリオニールが遠慮がちに言う。
たしかに、バスターソードに似てなくもない。
クラウドは動かない。
「クラウド?」
バッツの問いにも動かない。
碧の色を宿した瞳は、あのイミテーションから視線を逸らさない。
イミテーションが顔を上げた。
表情の無い顔。
いつ見てもゾッとする。
「…−−ス」
クラウドが何かを小さく呟いた。
「…クラウド?」
なんか、すっげぇ、クラウド怖いんだけど…。
「誰も行かないなら俺が行くぜ!!」
「ちょ、バッツ!?」
空気読めよと言い終わる前にバッツは走り出してしまった。
バッツを追い掛けようと走ろうとしたらクラウドに肩を捕まれ体が止まった。そのままクラウドは俺を追い越して走り出した。
一瞬でバッツに追い付く。
クラウド…EXバーストになってる。
「バッツ、そいつは……俺がやる!!」
「え、うわっと!?」
バッツを俺と同じように止まらせて、あのイミテーションに走っていく。
瞳と同じような光がクラウドを包んでいた。
それからは一瞬だった。
イミテーションはいつの間にか消えていて、イミテーションが立っていたところにクラウドが立っていた。
「クラウド!!」
皆でクラウドのところまで走る。
クラウドが倒れるように膝を折る。
バスターソードを、抱きしめるようにして。
震えていた。クラウドが。
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(110611)