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雨。外は今雨が降っている。
自身に含んでいたものを支えきれなくなって雫として地上に溢れ出す。
やがてそれが引き金となり一つ、また一つと雫は流れ、今では数メートル先が見えない。
今まで溜め込んだものを、何らかの現象がトリガーとなって全てさらけ出す。
思想も思考も、ましては生き物でさえない灰色の雲が羨ましく思えた。
言葉にしなければわからないということを嫌というほど知っているのに、素直になれないのはもはや性格以前の問題なのかもしれない。
自身の年代では珍しくもないのだろうが、それが許されるのは10代までだ。
と自分はそう思う。
大人になるには、それさえもコントロールしなければならないのだから。
ましてや、自分はナイトレイ嫡子。
いつまでも子供ではいられない。

それでも、大人になるのが少し、ほんの少しだけ怖いのはやはりまだ自分が子供なのだろう。


決して表舞台にたつことはなく、闇に生きるナイトレイ。
そのナイトレイである自分。
闇にいながら、光を求めるのはやはり闇に生きてるがゆえなのか。

否、宿命なのだ。
やがてこの身も染まるのだろう。
ナイトレイに。

窓を開ける。
雨が髪を濡らすが、そこは気にしない。
今すぐ飛び降りたい衝動にかられるがここは三階だったと思い出し思い留まる。
かわりに、手を伸ばす。
いつかは、この手で人を殺めるときがくるだろう。



けれど、そのときまで。
そのときまでは。




手を伝って流れてゆく雨水は黒く染まりそうな感情さえも流していく気がした。



いや、そのときも、そのときからも。



握りしめた黒き刃の誇り。
染まってやろうじゃないか、とことん、漆黒の闇に。
俺は呑まれない。
たとえそこでも俺は俺でいてみせる。



…ああ、やっぱり。

「飛び込みてぇなぁ…」

激しく地面を打ち付ける雨に思考を停止させて純粋な欲望が口を出た。
あとでリーオに怒られるのを承知で、窓に手をかける。
三階くらいならどうってことない。
俺は土砂降りの雨の中、飛び込んだ。




夢を持つことだけは、やめないことにした。





センチメンタル少年


(雨の中は冷たくて心地良かった)






続きのリオエリ



(110611)
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