時間が経てば忘れてくれる

私は結婚して、1児の母。
私にはもったいない夫に出会えて、結婚後子供も授かり幸せだ。
今は、専業主婦で仕事を働かなくても、全く問題なく、生活もできている。
これも旦那のお陰で、沢山感謝なのに、あの人に偶然出会ったことで、苦しみに変わっている。
それは、あの日だった。
子供の面倒を見るから、ゆっくりお出掛けしてきなと言ってくれて、買い物に行くことにした。
普段ゆっくり見れない店をじっくり見たり、気になっていたカフェで休憩してりと、楽しく過ごすと、夕方になっていた。
家で待つ家族に土産を買って、家路に向かっていると、角から男の人が出てきて、軽くぶつかってしまった。
謝ろうと顔を見ると、どこかで会った事がある顔にジッと見てしまった。

「すいません。怪我はないですか?」

「えっ!あっ、だ、大丈夫です」

「良かったです……失礼ですが、名無しさん?」

「えっ?な、なんで名前……あっ!堂島君……?」

「あぁ。久しぶりだな名無し。変わってないな」

神室西高校の記憶を思い出した。
同じクラスに、どこか回りと違う雰囲気の高校生がいた。成績も優秀で、中間・期末とトップだったが、他の同級生みたく、楽しくお喋りとかしている所を見たことがなく、友達から、ヤクザの息子なんだと教えてもらった時は、怖くて出来るだけ近寄らないようにしていたが、同じ日直になった時、集めたノートを職員室に持ってまでに少し話をしたのをきっかけに、会話をするようになった。
毎日何気ない会話を段々してゆくうちに、好きになって、勇気を出して告白をしようとしたが、急に学校にこなくなった。友達に聞いても理由は知らなく、高校を卒業していた。

「そ、そう?」

「あぁ。所で今何してるんだ?」

「えっ。い、家に帰る所だったの」

「そうか。急いでいるなら送っていこうか?」

その言葉に、目を見開く。
昔好きな人に送ってもらえる?
告白しようとした相手が目の前にいるのに、会話が出来ると思えないけど、少しの間会話か出来る。
待って……自分は何を思っているの。
自分にな家庭がある。
優しく、家庭の為一生懸命に頑張ってる夫。
大変だけど、可愛い息子。
幸せの家庭があるじゃない。
何を迷っているのか。

「名無し?どうした?」

早く、答えを出さないと。
家庭に見られたら、夫はどう思う?
知り合いと言っても、相手は男なんだから、いい思いはしない。
そう言っている自分は、本当はもう決まってるのかもしれない。
心にしまって耐えろ。
時間が経てば忘れてくれる。
そしていつか「あの頃の私は若かったなあ」というキラキラした青春の思い出に変わっているだろう。

「堂島君……ごめん。自分で帰るよ」

「そうか?わかった……じゃあな名無し」

「うん。またね堂島君……」

離れていく姿をずっと見る。
そして、見えなくなってから、自分は逆の方に背をむける。
幸せがある家路に歩いた。




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