キメゴト
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『ねえ…もっと顔を良く見せて…』
「っ…はぁ…み、見てるよ…なまえ」
なまえはいつも俺が、なまえの上で達する前に襲う苦痛にも似た瞬間に顔を歪ませるのが好きらしい
そして、その時だけは─────
俺を求めるなまえの紅潮しうっすら汗ばむ肌はとてつもなく綺麗で
俺の為だけの瞬間に何故かなまえは必死に堪え、まるで流されるものか…と言わんばかり更に強度を増す
俺は─────、
最奥には届く事はない、言葉にもする事はない飛沫を放つ
その瞬間を感じピクピクと震え敏感になった俺自身を戒める様に
なまえはねちっこく巻きつくように少し遅れて俺を開放する
『じゃ…』
慣れてしまった無機質な声と、香りを纏う事のないシャワーを浴び呆気なく俺の前から消える。
今さら…だよな。だけど時々さ、
消えない香りをなまえに浴びせたくなる時がある
「帰らないで」
女々しい感情をぶつけたくなる時もある
だけど全て俺が望んだ事、、、
この腕に抱きしめる事は出来る。違う、知らない、消したい香りを漂わせ現れるなまえでも…
決して俺の名すら呼ぶ事はないなまえでも。
秘密の関係だから。
・・・・・…‥
「えっ?今なんて…」
何て言ったの…おかしいよ、だって俺らの関係は
未来のない始まりはあっても過去を知る終わりなんてないはず
今さらな事を言わないでよ。
俺だって…俺の方が、ずっと我慢してたんだよ?
こんな時すら、俺の名を呼ばないんだね…
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