キメゴト
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「何、暗い顔してんの?もしかして寝不足?」
嘘であって欲しい長い夜を越え日常の光景を素知らぬ顔で眺めていた
そんな俺をもちろん知る由もない本─"彼"─命が、珍しく職務を放棄しようとしている
「仕事ですよ」
しっかりして下さい。情けない
その言葉はのみ込んでいや、自分自身に言い聞かせて、なまえの幸せの為になら笑うしかない
だが後日、あの時の彼は寝不足でも、駄々を捏ねてた分けでもなかったなまえへの想いまだ片足残る俺に事実を教えてくれた
相名前…幾度そう言葉にしたかっただろう
付き合い始めの頃はどうして名前を呼んでくれないの?
『だって、うっかり出ちゃったらダメでしょ?』
初めは本当にそう思ってたの。私は構わないって。だけど相名前は彼と同じ仕事で毎日顔を合わせ、時にはチームワークも必要な場面もあるわけで
名前を呼ぶ、そんな些細な事で拗らす分けにもいかない。
俗に浮気と言う恋愛に二人の男に愛されてるという“感覚”だけで足を踏み入れ
このまま、二人一つに繋がり向き合い朝を迎えたい―――――
そんな大胆な警告に気付いた時から
気持ちを、感情を、固結びしようと誓う。
名前は呼ばない、
香りは残さない、
約束はしない。
そんな独り善がりなキメゴト、
私の身体で覚えていればいい、相名前の全てを。
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