「えへへ〜もう一杯ー!!」

「テメっ馬鹿野郎お前もう限界だろうが!!」

「んんー?なんだい蘭ちゃん、私にお酌出来ないって言うの!」

「違うっての!!落ち着けって言ってんだよ」

そう言って私からお酒が入った瓶を遠ざける。ああ、もうちょっとだったのに。美味しそうなお酒とは裏腹に、現実を向けるように水が差し出される。いらない、と水を机の上に戻せば蘭ちゃんからため息を零された。

「蘭ちゃん、焼酎は飽きちゃったー?酎ハイにする?あ、やっぱり生ビールかなあ、サワーとか梅酒もいいよねー勿論割り方はロックで!!」

「はあ………テメェは水だ」

「だからー、お水はいらないの。…酎ハイでいいよね!ジュースみたいな物だし!!」

「なっおい勝手に冷蔵庫開けんな!!」

だったら新しいのを開ければ良いと、上手く回らない思考で良い考えを思いつく。私って頭良いなーなんて馬鹿な事を考えながら鼻歌を歌いながら冷蔵庫に手をかけると、それをさせないように私の手の上に蘭ちゃんの手が重なる。…いつもより、冷たいと思った。でも、蘭ちゃんの手が冷たいんじゃなくて、私が熱いんだって分かった。

「どしたのー、蘭ちゃん」

「その名前で呼ぶんじゃねえ、馬鹿が」

「馬鹿って言う人が馬鹿なんだって〜」

「小学生かよ………」

そうやって私を馬鹿にしながらも、重なっている手の力は強い。さすがは男女の差、男の人ってズルいなあ。仕方なく諦めて力を抜けば、その行動が正しいとでも言うように優しく頭を撫でられる。……そんな事されたら、眠くなっちゃうよ。

「ん……………」

「……寝んのか」

「まだ、寝ない」

実際には寝たくない、だ。折角蘭ちゃんと一緒なのに、まだ終わらせたくない。もっともっと、傍にいたい。もっと、遊びたい。段々ぼやける思考を振り切って、最初のお酒を飲もうと立ち上がって。不思議そうに見上げる蘭ちゃんはとりあえず無視してお酒に手を伸ばせば、慌てた蘭ちゃんが私を止めようとする。

「諦めたんじゃなかったのかよ!!おい、名前!」

「ううーー蘭ちゃん離して!もっと飲む!まだ寝ない!!」

「クソッ………なっ!?」

「わ、ああぁ!?」

蘭ちゃんの先にあるお酒に手を延ばした瞬間、ぐわんと視界が揺らぐ。さすがに飲み過ぎたかと思うよりも早く、私の身体は傾いて。それにいち早く反応した蘭ちゃんは、私を支えようと手を伸ばす。冷静に解説してるけど、一瞬の出来事だからもう間に合ってなかった。

「ったぁ……ごめ…蘭ちゃん…」

「…だから落ち着けって言ったんだよ、学習しろ馬鹿。あー、痛え………」

「馬鹿馬鹿言い過ぎだよ……………って、」

「…あ?何だよ急に黙って……って、」

多分、今の私達を第三者の人が見たら凄く阿呆面してると思う。だって、予想以上に近かった距離に二人して真っ赤になって固まっているのだから。しかもこの状況、まるで私が蘭ちゃんを押し倒しているみたいだ。起き上がろうと思っても、酒の酔いが回って手に力が入らない。どうしようか悩んでたら、蘭ちゃんがゴクリと唾を飲む様が見えて私の心拍数も跳ね上がった。

「ぁ………えと、ご、ごめ……ん」

「べ、別に平気だっつの……、怪我ねえか」

「うん、大丈夫。……蘭丸、ありがと」

「っ!クソッ……言った途端これかよ…!」

「!?うぁ、な、なに……っ…!?」

目の前が歪んだかと思えば、それは酒が回ったのではなく蘭ちゃんが私を押し倒していたのが現実。片手は無造作に散らばる髪の毛を気にしつつ私の顔の横に手をついて、もう片方は私の頬を撫でる。重なる瞳から見えたのは、あまりにも無防備な私だ。獣のような瞳は私をギラギラと檻の中に閉じ込めているようで、私は今から食べられる小動物、なんて。

「ら、らんまる」

「……こうなるって分からねえのか。名前」

「でも………」

「何だよ、言いたい事でもあんのか」

「私………私ね、」



正直こういう展開を待っていました

「!そこ正直に言うとこかよ普通…」

「だっだだだだって!!好きな人の家に来たら、そう思うって…!!」

「っばーか、……責任だけは取ってやる」








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