※愛のシャイニング劇場設定



私は、誰にも言えない秘密がある。それは、二人の男性にアプローチを受けているという事。ついこの前、私は二人とも好きでどちらかを選ぶ事は出来ないと、わざわざ同じ場所同じ時間に呼び出して断ろうとした。なのに彼らは、そんな事を気にせず私を愛してくれる。でも私は、二人が傷付く姿を見たくないんです。その想いが限界に達した瞬間、ついいたたまれなくなって部屋を飛び出してしまった。

お二人はアイドルで、所詮皆が彼女みたいなものだ。実際は近くて遠い存在の筈なのに私はそんな二人から求められ、そんな私も、彼らを拒めない。でもあの一件があってからは、何だか何方にも会いづらくて避ける日々を過ごしていた。幸いなのは、私と違って彼らは毎日が忙しい。だから避けようと思えば簡単に避けられるのだ。…………そう思ってたのは、今朝までの話。

「やあ、おはようレディ」

「レン、さん………」

「ごめんね、突然来て。仕事があるからすぐ戻らなきゃいけないんだけど……どうしても、君に会いたかったんだ」

ピンポン、と音が鳴り条件反射で出た扉の先にいたのは、レンさんだった。突然の訪問者に、胸が早く鼓動をうつ。惚れた弱みか、彼を追い出す事も出来なくてつい上がりますか、と声をかけてしまう自分がいる。少しの沈黙のあとじゃあ少しだけ、と玄関に足を踏み入れる彼は、今どんな事を思っているのだろう。そんな事を考えながら、どうぞと部屋に入れようとする。後ろ手でドアが閉められたと同時に、レンさんはすぐに私に口付けた。性急に求められる、深いキス。腰に回った手は艶めかしく私の身体のラインをなぞり、うなじに触れる手は私を離してくれない。

「んっぁ……、ふ…レン、さ………っ」

「っは………やっぱり、君の唇は魅惑的だね。本当に、どこまでも俺を誘って…離れられなくなる」

「んゃ……っ跡、つけちゃだめ…っ!」

首筋を撫でられ、そこに吸い付くように彼の唇がそこに触れる。ちゅ、と音を立てられ吸われたそこは、確実に彼の証が刻まれていた。そんな所じゃ、誰かに見られちゃう。分かっているのに拒めないのは、その快感を知っているから。首筋の証を満足そうに見たと思えば、また口付けを求められる。舌先で促されれば、開くことを拒めない。口を開くことで溢れる声は、普段の自分とは思えない位に色があって羞恥心で壊れてしまいそう。

「……ごめん、つい抑えが効かなくて。でも名前にも罪はあるんだよ。君がカミュとも口付けをしたのかと考えたら、こんなもんじゃ耐えられない。もっと俺を見て………君の瞳に、俺だけを映してほしいんだ」

「レンさん………わたし、は…レンさんが………」

続きを言おうとした瞬間、甘い空気を遮る着信音がリビングから聞こえる。誰からだろう、とレンさんが呟いた言葉に、私は少し申し訳ない気分になった。この着信音は、カミュさんからだ。そう思うと出たい気もするし、出たくない気もする。長々と流れる着信音は鳴り止む事を知らず、私は耐え兼ねて出る事に決めた。それをレンさんに伝えると、じゃあ俺はもう仕事に行くね、と最後にリップ音を立ててキスをした。

「も………もしもし」

「遅い」

「カミュさん…………」

「貴様は今何をしていたんだ?この俺が直々に電話しているというのにすぐに出ないとは………どういう事だ、説明をしろ」

「ごめんなさい、家事をしていたら電話の音に気がつかなくて……本当に、ごめんなさい」

つい何秒前までレンさんがいただなんて、言えない。咄嗟に嘘をついた言葉はカミュさんのお怒りを買うことはなかった。どうして電話をしてきたのか尋ねると、内容はざっくり言うと今日私に会いに来る、という事だった。その話を聞いた瞬間、緊張して手が震えた。カミュさんが、此処にくる。お仕事時の執事のようなカミュさんでも、普段同僚に見せるような冷たいカミュさんでもない、私にだけ見せるカミュさんが、此処に来てしまう。私の心臓は、息がつまるくらい高鳴っていた。

「………お疲れ様です、カミュさん」

「慈悲を受けるまでもない。……久しぶりだな、この部屋も、そしてお前も」

「はい…」

「この甘美な香り、そして俺を誘うその身体。あの日から一度たりとも忘れた事はない。……来い、名前」

まるで何かの魔法にかかったかの様に、私は自然と彼に近付いていた。ソファーに座るカミュさんの前に立つと、徐に腕を取られ彼の膝の上に乗ってしまった。勢いで退こうとするも彼の腕は私の腰を抱く手を離さない。カミュさん、そう告げようと顔を上げた先に見えたのは、彼のアイスブルーの瞳だけ。

「んっ………!ふ、ぅ……っ」

「ふっ…やはり拒みきれないのだな。あの時の威勢など、一時の気の迷いに過ぎない。…素直に言え、もっと俺を求めろ」

「かみゅ、さ、ぁ……っもっと、して、」

「ああ、いくらでもくれてやる」

獣のような瞳にゾクゾクする。いつの間にか押し倒されていた私を、彼は上から見下ろす姿がひどく様になっていた。上まで止めていた服のボタンが1つ2つと外されると、今朝方付けられたレンさんからの証が姿を現す。それを見た瞬間、一瞬だけ止まった彼は次いでニヤリと笑った。そしてレンさんの証と真反対に、甘さを含んだ唇が降りる。また跡をつけられてしまう、そう理解したと同時に、今朝方とは違う感触が私の思考を溶かした。

「んんぅ………っ!!や、いた…ぁ…っ!」

「ん……俺がすぐ消える跡をつけると思うか?そうやって、ただ感じていれば良い」

吸われる訳とは全然違う、噛み付いてくる刺激に涙が出た。血は出ないけれど、出る手前くらいまでに噛まれる感触。痛いけど、気持ち良いなんて訳が分からない。声を抑えるように口元に当てた手は、止めろと言わんばかりに彼に絡め取られる。ーーーレンさんも、カミュさんも、まるで止まってくれやしない。

「レディ、好きだよ」

「お前を愛してやれるのは、俺しかいない」

脳裏に過る二人の顔。二人が私に魅了されているのは、同時に私も二人に魅了されているから。振り解こうとした手は、両手とも塞がれる。やっぱり私は、誰にもこの秘密を告げる事は出来やしない。





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