02.目も眩みそうだ

放課後、ホームルームを終えた名前は別教室へと向かっていた。新学期の始まりから数日経ち、今日は1年生を迎えて初めての委員会だ。
教室の扉を開けると、既に席に着いている生徒の数がちらほらと見えた。その中には、名前と親しくしている人の姿もあり、彼女は名前を見つけると溌剌とした声を上げた。

「名前センパーイ!こっちこっち!」
「彩子ちゃん、早いね」
「ウチの担任適当なんですよー」

彼女こと彩子は、昨年から同じ保健委員会に所属し、名前のことを慕ってくれている可愛い後輩である。仕事の振り分けで偶然ペアになって以来、名前はこの明るくしっかり者の後輩と意気投合し、交流を深めてきた。自分とは全く違うタイプの違う彩子だが、話しているといつの間にか元気をもらっている。まるで真っ赤な太陽のような子だと、名前は思う。

「先輩、今年もアタシと同じペアになりましょうね?」
「ふふ。うん、モチロン!」
「ヤッタ

程なくして委員会が始まり、初回は自己紹介と幹部決め、役割分担といった簡単な内容で終わった。希望通り、名前は彩子とペアになることが決まったので安堵の息を吐いた。放課後の保健室番はローテーションだが、優先的に1年生や帰宅部生が入るらしい。部活に所属している名前達の仕事は主に体育祭などの行事メインになったので、ふたりは気楽な気持ちで残りの時間を過ごすことができた。


教室を出ると、春の夕日が円やかに輝いているのがよく見える。鈍く輝く窓枠がほんの少し眩しくて、名前は目を細めた。廊下に伸びる長い影が、軽やかに歩く彩子の足元で踊っている。

「そういえば先輩の部活とこ、もう新入生勧誘始めてます?」
「うん、昨日から始めたよ。今入部届もらってるのが4人で、まだまだ増えそう」
「それぜえったい先輩効果ですよ!」
「でたぁ、彩子ちゃんの贔屓目」
「贔屓目じゃないのにナー」
「そういう彩子ちゃんのところはどうなの?」
「まずまずって感じですかねー。あっ、そうそう!アタシの中学の後輩が入ったんですよ」
「へぇ!それじゃあ彩子ちゃんの仕事も少しは楽になるかな?よかったね〜」
「アハハ!それがマネージャーじゃなくて選手のほうで」
「選手?」
「そっ。マネージャーなんてカワイイもんじゃないんすよ、流川は」
「え」

覚えのある名前が聞こえ、思わずといったように名前は声を溢した。数日前の、鮮烈な記憶が蘇る。

「流川って…もしかして流川楓くん?」
「え!先輩、流川と知り合いですか!?」
「知り合いというほどでもないんだけど…」

彩子の勢いに押されるよう、名前は入学式の日の出来事を語った。その話を聞いた彩子は、驚く様子を見せることもなく、慣れたように頷いた。

「マァ確かに流川はツラはいいですもんね」
「顔は、って」
「アイツ、見た目とバスケの才能はピカイチですけど、中身はちょっと難ありカモ。傍若無人なところあるし」
「えっ」
「アタシにとっちゃカワイイもんですけどね!」

こーんな顔してたでしょ、と鋭い目つきをする彩子に、名前は苦笑いする。流川が人当たりが良い方ではないことを、名前はあの一瞬で勘付いてはいたが…。気心知れた彩子ですら「傍若無人なところがある」と称する流川のことが、名前はほんの少し怖く感じてしまう。そしてやっぱり、関わることはないだろうという思いを強くするのだった。


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