アタシとオレ


「あっ、いけない、ノート置いて来ちゃった」

とある、よく晴れた日の放課後。
高校二年生であったナナシごんべいは、ノートを学校に置いて来てしまった事を思い出し、慌てて学校へと引き返す。
殆どの学生達は帰ってしまい、残っている者は数える程しかいない。

「あったあった、良かった…」

教室の自分の机の中にあるノートを取り、ごんべいはふうっと息を吐く。

「…んだよ」
「ん?」

ノートを持ち教室を後にした時、違う教室から荒い声が聞こえ、ごんべいは足を止める。

「ヒロてめぇさ、人の女取ってんじゃねぇよ!」
「…は?お前の女が勝手に告白してきたんだろ。好みじゃないから俺は断っただけだ」
「ふざけんな!」

ドンという鈍い音が上がり、ごんべいは思わずビクッとなってしまう。
彼女は恐る恐る音が上がった教室を除くと、一人の男子生徒に、数人が取り囲んでいる姿が目に入る。

「あいつは俺に夢中なんだよ!てめぇが誘ったんだろ?!」
「あの女が俺に告白してきたって言ってんだろ。自分に魅力がねぇのを人のせいにすんなよ」
「てめぇ…!」

顔を真っ赤にし、怒りを現わにした男子生徒が取り囲んでいる男性の胸倉を掴む。

「やめて!」

考えるより先に、ごんべいは彼らの前に飛び出していた。

「一人に対して数人がかりで取り囲んで喧嘩なんて…最低!男なら正々堂々と一対一で勝負しなさいよ!」

突然のごんべいの出現と言葉に、取り囲まれている男子生徒も取り囲んでいる生徒達も、ポカンと口を開け彼女を見ていた。

「もしこれ以上続けるなら、先生を呼んできます。どうしますか先輩達?」

ここは三年生の教室であり、彼等が二年生のごんべいより年上である事を物語っていた。
それでも尚、彼女の物怖じしない強い言葉に、男子生徒達は慌てて取り囲む事を止める。

「お、俺達は話し合ってだけだ、喧嘩なんかしてねぇよ、な?」
「ああ、意見の食い違いがあったから確認してただけだ」
「そうそう…はは」

進路を控え、教師に問題行動をした所など見せたくないのだろう。
ヘラヘラと笑いながら彼等はそう弁明し、教室から去って行ってしまった。

「男なのに最低…。あ、大丈夫ですか?」

出て行った男子達を怪訝そうに見やると、ごんべいは取り囲まれていた男子生徒に声をかける。

「!あ、ああ…大丈夫。君は…」

驚きの表情でごんべいを見つめる彼に、彼女は笑顔で答えた。

「私は、二年のナナシごんべいです。出しゃばってしまって…ごめんなさい。それじゃあ、失礼します」

ぺこりと頭を下げ、ごんべいは彼の名前も聞かずに行ってしまった。
嵐の様に現れ居なくなり、そして年上相手でも物怖じする事なく自分を助けてくれたごんべいの存在は、彼の中に大きく残っていた。

「…ナナシごんべい、か」

整った顔立ちを浮かべ、彼は笑顔で呟く。
女性が見たら、誰でも見惚れてしまうだろう。
ごんべいはその事を忘れてしまったが、彼ははっきりと彼女の事を覚えているのであった。




「ごんべいーお昼食べにいこ」
「うん、行こう」

それから数年後、ごんべいは社会人になり、とある会社のOLになっていた。
職場の食堂のランチは、他のレストランよりも引けを取らない美味しさで、それ目当てで勤めている社員もいる程である。

「ごんべい、何ランチにする?」
「うーん、Bランチにしようかなぁ…」
「ヒロさんー!一緒にランチしません?」
「ずるい、私もっ!」

ごんべいが友人とどのランチにするか選んでいると、テーブルの方から黄色い悲鳴が上がり、二人の目線は自然に其方へと向けられる。

「ふふっ、仕方ないわねぇ。ほら、みんなで仲良く一緒に食べましょうよ」
「わわっ、良いんですか?」
「ヒロさんとランチ出来るなんて夢みたいっ!」

きゃあきゃあと叫ぶ女性陣の真ん中で微笑む彼は、この会社でも一番有名で人気のある男性であり、女性でもあった。

「ヒロさん、相変わらず凄い人気だよね。確かにイケメンだし、でもお姉だからなぁ」
「うーん…そうだよね。男の人が好きだから、心は女性って事だもんね」
「でしょ?ヒロさんが本当の男ならアプローチするのになぁ」

友人は残念そうに言いながら、ランチのプレートを持ち空いている椅子に座る。
ごんべいも彼女の合い向かいに座ると、丁度視線の先に女性達に囲まれるヒロロウの姿が目に入る。
整った顔立ちの笑顔に、女性達は皆うっとりとしていた。

(ヒロさん、何処かで見た事ある様な気がするんだけど…思い出せない)

この会社に勤め始めロウと会った時から、ごんべいは初対面ではない感覚を覚えていた。

(でも、知ってる人でお姉の人なんかいなかったもんね…気のせいかな)

そんな事を思いながらロウを見ていると、彼の視線もごんべいの方へと向けられていた。

「…ふふ」
「!えっ…」

ロウはごんべいを見つめながら、はっきりと彼女に向かって微笑んでいた。
思わず驚いてしまい、ごんべいは声を上げながら慌てて視線をそらす。

「ごんべい、どうしたの?」
「う、ううん、何でもない」

何故か胸がドキドキと高鳴ってしまい、それを悟られない様にごんべいはランチに手を付けていく。

「ヒロさんって、どんな子がタイプなんですかー?」
「うーん、そうね、強くて優しい子かしら」
「素敵…」

ロウの言葉にうっとりとする女性達。
彼女達に囲まれながらも、彼の視線は友人とランチを食べるごんべい、彼女しか映っていない。

(ナナシごんべい…まさか君がここに入社してくるとはな…)

ごんべいは覚えていないだろうが、ロウにとって唯一心を惹かれた存在が彼女であった。

「はぁ、ヒロさんが本当の男だったらいいのに」
「ほんと、そうしたらずっとアタックしてるのにっ」
「ふふ、みんなみたいな可愛い子も好きだけど、実際はステキなオトコが好きなの。ごめんなさいね」
「あぁーん、ショックぅ…」

ロウの言葉に、彼を取り囲む女性陣は悲痛な声を上げる。
彼の整った顔立ちとルックスは、女性を嫌でも虜にしてしまう。
だが、それは彼にとって良い事ではなかった。

「ね、アタシはみんなと仲良しが好きなの。独り占めされるとかするとかは嫌い。だから、これからもみんなで仲良くしましょうねっ」
「はーいっ、ヒロさん!」
「ヒロさんはみんなのヒロさんだものねっ」

女性達が素直に頷くと、ロウはほっと息を吐く。
以前、女性から後をつけられたり自宅まで来られたり、無理やり抱かれそうになったりなど、ストーカーまがいな事をされていた。
女性達からそういう事をされない様に、ロウは念を押し彼女達に言った。
モテる彼をよく思わない男性達からも、悪口や暴力を振るわれる事も多々ある。

(このキャラは野郎達からも自分を守れる、女にはストーカーされずに済む。一石二鳥だな…)

そう、自分の身を守る為にロウは敢えてお姉キャラを演じていたのだ。
その事はごんべいは勿論誰も知らず、彼自身しか知らない事。
彼女の存在を見守りつつ、ロウは笑顔を振りまきながら昼食を取るのであった。




「ごんべいー帰ろ」
「ごめん、ちょっとこの書類だけ片付けていくから。先帰ってて?」

定時を告げる午後五時、続々と同僚達が帰る中、ごんべいはパソコンとにらめっこしたまま友人に答える。

「大丈夫?」
「うん、すぐ終わるから」
「分かった、じゃあまた明日ね」
「うん、またね」

友人と短いやり取りをすると、ごんべいはパソコンと再びにらめ合う。
長時間のパソコンで目の疲れが現れているが、止めるわけにはいかない。

(今日中にやっておかないと、明日が大変だわ…)

カタカタとキーボードの音が上がる中、スッと、目の前に缶コーヒーが置かれていた。

「ごんべいちゃん、そんな頑張りすぎたらダメよ。ほら、それ飲んで少し休んで」
「!ヒロさん?」

ごんべいが驚いて振り向いた先には、爽やかな笑顔があった。

「可愛い顔に皺が寄ってるわよ?もぅ、頑張るのも良いけど、休みも入れないとダメ。女の子なんだからそんなに無理しないで」
「えっ、でも私の仕事なのにヒロさんにやってもらうなんて悪いです…」
「いいのよ、アタシがやりたいの。ほら、休んでて」

そう半ば強引に言われ、ごんべいははいと頷き、手渡された缶コーヒーを開け一息つく。

「美味しい…」

気が張り詰めていたせいか、缶コーヒーがより一層美味しく感じられた。
ロウはというと、自分のデスクでカタカタとキーボードを手際よく鳴らし、素早く打ち込んでいる。
そこには、いつもおちゃらけた明るいロウではなく、凛々しい表情の美青年がいた。

(ヒロさん、改めて見るとかっこいいな…。それに、私の仕事やってもらっちゃって悪いし…)

オフィスを見渡せば、残っているのはもうごんべいとロウだけである。
休んでろと言われたが、やはり自分だけ何もせずにはいられない。

「そうだ、明日使う資料出しておこう」

明日の仕事で使う資料は、オフィスの棚にある。
背の高いロウに頼んで取って貰う事も出来たが、そこまで彼に迷惑はかけられない。
ごんべいは脚立を持ち出し棚の前に置くと、ゆっくりと足をかける。

「どこだっけ…」

脚立に上ってから、ごんべいはキョロキョロと棚を見渡し目当ての資料を探す。

「!」

パソコンから顔を上げロウの目に入ったのは、脚立に上り何かを探すごんべいの姿。
何処と無く危ないと感じ、彼はパソコンを打つ手を止める。

「あった、あんな所に…。っ、きゃっ!」
「!危ね!」

ごんべいが手を伸ばしバランスを崩したのと、ロウが椅子から立ち上がったのはほぼ同時であった。

(落ちるっ!)

痛みを覚悟し、ごんべいは瞼をぎゅっと強く閉じる。
だが、幾ら待っても痛みは現れず、それどころか、温かくしっかりとしたものに背中から受け取められていた。

「ッ…危ねぇ…」
「えっ…あ…ヒロ、さん…」

ごんべいが横を向くと、そこには整った顔立ちが心配そうに此方を覗き込んでいる。

「大丈夫か?怪我してないか?」
「!は、はい…大丈夫、です」
「…良かった、間一髪だったな」

ロウのいつもと違う低い声、男らしい表情と言葉。
そして、胸の上と下に回された細いが逞しい腕。
ごんべいは顔がどんどん赤く熱を帯びていくのを感じ、慌てて視線を逸らす。

「っ…ヒロさん、あ、ありがとうございます…助けて下さって」
「!い、いいのよごんべいちゃん、怪我がなくて何よりだわ」

ごんべいの慌てた様子に、ロウもやっと自分の素が出てしまっていた事に気付き、口調を元に戻しながら彼女から腕を離す。

「!あ、ごんべいちゃん、そのブレスレット可愛いわね。何処で買ったの?」

自分を悟られまいと、ロウはごんべいの腕に光るブレスレットが目に入ると、そのまま話題を変える。

「こ、これですか?えーと…ショッピングモールにある雑貨屋で」

ごんべいも自分の胸の鼓動が高鳴ってしまっている事を感じられまいと、慌ててそう答える。

「あ、あの雑貨屋さん可愛いもの沢山あるわよね。アタシもごんべいちゃんとお揃いの買ってきちゃおうかしら」
「嬉しい、ヒロさんならきっととても似合いますよっ」
「本当に?嬉しいわぁ」

女子会の女子トークの様な、キャピキャピしたやり取りを続ける二人。
お互い想いが悟られない様、ごんべいもロウも必死に話題を振っていたのだった。




「ヒロさんー今日のランチご一緒しませんか?」
「ずるいー私も!良いですかヒロさん?」
「ええ、みんな一緒に食べましょっ」
「きゃー嬉しい!」

脚立から落ちた自分をロウが助けてくれた翌日の朝、いつもの様に彼の周りには女性達が集まっている。
ごんべいもそっと、その中心にいる彼を見やる。

(ヒロさん…私を助けてくれた時、凄く男らしくて…かっこよかったな)

昨夜はあのまま女子トークをしながらロウと別れ帰路に着いたが、帰っても一晩経った今も、彼の姿を見ると胸の鼓動がドキンと鳴ってしまう。

「ごんべいーおはよ」
「あっ、おはよう」
「昨夜は大丈夫だった?」
「えっ?な、何が…?」
「仕事よ、ごんべいの事だから無理して遅くまでやってたのかなって」
「あ…だ、大丈夫、早めに終わらせたから」

友人の言葉にも驚き戸惑ってしまい、ごんべいは慌てて答える。

(やばいな私…重症かも…でもヒロさんはお姉だし。でも…助けてくれた時は男の人…だった)

仕事が始まってからも、ロウの事が気になってしまいなかなか手につかない。

「ナナシ、資料室へ行ってこの資料を探してきてくれないか」
「あっ、はい、分かりました」

上司に言われ、ごんべいは自分の椅子から立ち上がると、そのままオフィスを後にし、廊下の一番奥の資料室へと向かう。

「!あら、ごんべいちゃん」
「あ、ヒロさん、お、おはようございます。昨夜は…ありがとうございました」
「いいのよ、ごんべいちゃんに怪我がなくてよかったわ」

偶然だが、あまり人が出入りしない資料室にロウの姿があり、彼もまた何かを探している様だ。
ごんべいはあまり意識しない様にしながら、目当ての資料を探す。

「…」
「…」

昨夜の事を思い出し意識してしまい、ごんべいは口を開けずにいた。
その無言の雰囲気に居た堪れなくなり、ロウの方から言葉を上げる。

「ねえごんべいちゃん、昨日言ってた雑貨屋さん、今度一緒に行かない?女同士、貴女とショッピングを楽しみたいわ」
「あ、良いですね!私もヒロさんと一緒に行きたいです」
「良かったっ。じゃあ、計画立てましょ…」

ごんべいの答えに、ロウが笑顔でそう頷いたその時であった。
ガチャッと鈍い音がしたかと思ったら、そのままコツコツという足音が段々と遠ざかっていく。

「えっ…?」
「…」

驚くごんべい、ロウはドアの方へと向かいドアノブをガチャガチャと捻る。

「…駄目だわ、鍵を閉められたみたい」
「ええっ!?」

ロウの言葉にごんべいも慌ててドアに駆け寄りドアノブを回すが、やはりドアはビクともしない。

「そんな…」
「ここ、あんまり使わないから警備員さんが鍵かけちゃったのかもね。…大丈夫よごんべいちゃん、アタシ達がここにいる事知ってる人いるんだから。直ぐに開くわ」
「そ、そうですよね」

しどろもどろになりながら、無理やり笑顔を作りロウに頷くごんべい。

(ど、どうしよう…ヒロさんと閉じ込められるなんて…)

二人きりという事を考えただけで、顔が熱を帯び始めるのを感じるごんべい。

「あ、開くまでアタシ達はお互い仕事しちゃいましょ、ね?」
「そ、そうですね…あ、でも、ヒロさんと二人きりになれて良かったなぁって。ずっと他の人がいて、あまり話出来ないから…」

ごんべいの頭はロウと密室で二人きりというシチュエーションに、完全にパニックの様なドキドキの様なものが入り混じり、普段言えない様な事も簡単に言えてしまっていた。

「え…?」

ごんべいの言葉に、ロウは思わず驚きの表情を上げながら彼女を見やる。
頬は赤く染まり、彼の隣で棚を見ながら更に言葉を続けた。

「私、ヒロさんの事かっこいいなぁって…。昨夜助けて貰ってからずっとドキドキ止まらなくて。あ、ヒロさんがお姉なのは分かってるんです。でも、ヒロさんかっこいいなって…素敵だな、って…」
「…」

ごんべいももう、自分で何を言っているか分からなくなっていた。
こんなに積極的になれるのは、この二人きりの密室というシチュエーションだからこそ。
積極的になろうと思ってなったわけではないが、それを聞いたロウの中で、何かがスッと消え無くなっていた。

「ヒロさん、ショッピング楽しみにしてますね。いつにしましょ…っん…んんっ…?!」

ロウの方へ向いた途端、ごんべいは棚に身体を押し付けられ、唇が柔らかく熱いもので塞がれていた。
それがロウの唇であるという事を理解した時には、唇が離れ、自分を真っ直ぐ見つめる彼の姿が目に入る。

「ヒロさん…?」
「…我慢してたけど、もう無理だ。君にそんな可愛い事言われたら、もう我慢なんか効かない…」

そう言ったロウの瞳は潤みを帯び、熱い眼差しであった。
彼の細く長い指がごんべいの頬に触れ、優しく撫でていく。

「ごんべいちゃん…あんたの事、ずっと好きだった」
「!で、でも、ヒロさんはお姉…」

突然のキス、突然の告白の驚きの連続で、ごんべいは口をパクパクとしながら目を丸くさせる。
そんな姿が可愛くて、ロウはクスリと笑う。

「…オレ、お姉の振りしてるだけなんだ。ストーカーみたいな事されたり、男から嫌がらせ受けたり、もううんざりしてた。お姉になったらそういう事が一切無くなったからさ、だからお姉の振りして…ずっとあんたの事を想ってた」
「!私の事を…?」
「ああ。…高校生の時、同級生から嫌がらせされてて、それを止めに入ったくれたあんたに、一目惚れした」
「!あの時の…」

ごんべいの脳裏に、数年前の記憶が蘇っていく。

「ああ…オレはずっと、ごんべいちゃんが好きだった。この会社にあんたが来てくれた時は、嬉しかった。想いをつけずにお姉のままあんたの前でもいようと思ったけど…」
「っ、あっ…」

ロウの唇が耳たぶに触れ、チュッとキスをされると思わず声が漏れてしまう。

「あんたにそんな可愛い事言われたら、もう無理だ。…好きだ、ごんべいちゃん…」

ロウはそう呟き、耳たぶに舌を這わせながら、ごんべいの制服を器用に脱がせていく。

「あっ…あ…んっ…!ヒロ、さ…ん…」

ロウの舌が耳から首筋へと這わされ、脱がされた制服の下から現れたブラも上へとたくし上げられてしまう。

「ずっと、触れたかった…ん、ちゅ」
「あっ、あんっ!」

ピンク色の乳首がロウの口の中に消えると、音を立てながら強く吸われていく。
ごんべいは堪らず甘い声を上げてしまい、ロウにしがみついてしまう。
乳首を吸われながら、彼の指がスカートの中へと這わされ、そのまま下着の上から指を這わされる。

「ふあんっ!ヒロ、さ…やぁ…だ、だめぇ…っ」
「ふ…ごんべいちゃんのここはそうは言ってないみたいだな…」

下着の隙間から指が入り、溢れ出てしまっている蜜を絡ませながら、蜜を溢れさせる入り口に指を当て上下に擦り当てていく。

「はぁんっ!あんっ、あぁんっ…!」
「可愛い声…もっと聞かせて…ん、ふ…ちゅうっ」

蜜の入り口からすぐ上にある突起を押さえ、優しく転がしながら、硬く尖ってしまった乳首をちゅぱちゅぱと吸っていく。

「はあぁんっ、あんっ、ああん…やあぁ…だめ、だめぇ…っ」

甘い快楽が身体中に走り、ごんべいはロウにしがみつかなければ立っていられない程、ガクガクと足を震わせてしまう。

「ヒロさん…私っ…もう…」
「我慢効かない…?オレもだよ…」

ロウに愛撫され、ごんべいの身体は全身性感帯の様に敏感になってしまっていた。
ロウがズボンを脱ぐ音が上がり、ごんべいの下着も脱がしてしまうと、熱くなった彼のものが蜜で濡れた入り口に当てられる。

「はあぁっ…!」
「ごんべいちゃん…やっとあんたを抱ける…ッ」

ロウに与えられた快楽でヒクヒクと疼いてしまっているごんべいのそこは、あっさりと彼のものを受け入れ、ズプリと音を立て挿入を許してしまう。

「あぁんっ、あん、あんっ、ヒロ、さん…ああん」

腰を動かしながら、甘く喘ぐごんべい。
ロウの頬も赤く染まり、彼女を見つめながら自身を抜き挿しし、確実に彼女と自分に快楽を与えていく。

「これで…あんたはオレのもの…。ごんべいちゃん…好きだ…ッ」

快楽に整った顔を歪ませながら、ロウはごんべいの奥をリズムよく突いていく。

「はぁあんっ、あっあっ…ヒロさん…私も…好き…っん、あぁあんっ!」
「ッ…!」

お互い腰を打ち付け合い、そのまま身体を震わせると、ごんべいとロウは同時に果てていた。
熱いものが自分の中へ注がれていくのを感じながら、ごんべいは荒くなった息を整える。

「…あんたを抱いてから言うのも遅いかもしれない。…ごんべいちゃん、オレと付き合ってほしい」
「ヒロくん…」

お姉ではない男としてのロウ、これが彼の本当の姿なのだろう。
整った顔立ちを持つ、美しい美青年。
ごんべいはコクンと、首を縦に振った。

「私で良かったら…喜んで…」
「あんたじゃなきゃ駄目だ。オレは、ごんべいちゃん以外に興味はない。…ありがとな」

ちゅっと頬に優しくキスをされると、ごんべいは自然と笑みを浮かべてしまう。

「オレの事、ロウで良い、寧ろ、そう呼んでくれ。あんただけに呼んでほしい」
「じゃあ…ロウ…」
「…ああ、それでいい」

ごんべいに名前を呼ばれ、嬉しそうにロウは頷いた。
鍵のかかったこの部屋が開かれるまで、二人はお互いの想いを確かめる様に暫く抱き合っていた。
偽りのないロウを知る事が出来、ごんべいは心から嬉しく、幸せだと思うのであったー。


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