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「なるほどね、絶賛お仕事中ってところじゃないのよ」

顔の濃ゆい人、そう思っていたが勧められて店内に入るとその認識は一気に変わる。このオカマ達のなかでもあずみさんは割と可愛い方だ。他のキャストの方が体が大きくて厳つい。

「違うんです、いや違わないんですけどね、もう桂さんと沖田くんのやり取りの後始末が大変で、出来ればこの世で2人を合わせたくないってくらいほんと嫌で。出来たら別次元に住んで欲しいって言うか、二度と接触しないで欲しいというか」

席を勧められてびくびくとしながら座れば、問い詰めるような事をしてこないあずみに思わず本音がぼろぼろと零れた。

「あらまァ、とても参ってるわね。そんなだとお肌の調子が悪くなっちゃうわよ。今日のヘルプは全部パー子に回すから、裏方の仕事を2人でしてくれるかしら」
「はあッ?!!」

店の奥から突然聞こえてきた悪態をつく野太い男の声。
話の流れからしてパー子さんなのかなと思うも、姿は見えない。

「パー子さん、ヅラ子さんがこんなことになっちゃって、パー子さんのお仕事増やしてしまって申しないです。ちゃんと裏方の仕事の方でサポートはしますので、よろしくお願いします」

申し訳なくて声のする方に頭を下げる。

「ほらパー子、呼ばれてるわよ」

奥のカウンターに立って開店前の準備をしていた人が下を向いて声をかける。
なんでそんな所にいるのか。

「たとえ今日1日だけでも一緒に仕事をするんだから自己紹介くらいしなさいよ」

あずみの声に返答はなかった。

「ちょっとパー子!!…たく、ちょっと待っててね」

あずみは席を立つとカウンターの裏に行く。周囲で開店準備をする人達の手を止めさせると何やら一緒にしゃがみ込む。

「もう、パー子ったらなにしゃがみこんでるの。ほら立って!」
「あ゛ぁああ!くっそ!手ェ離せ!」
「何照れてんのよ、初心な娘じゃあるまいし」
「照れてんじゃねーよ!」

パー子さんはヅラと同じく忙しい時や人手が足りない時のアルバイトさんなのだろうか。そうだとすると、常の仕事としている人に比べれば、女性の格好をして人前に出るのは相当な勇気が要るのだろう。
あんまりじろじろ見るのも良くないなと思い、出されたウーロン茶のストローに口をつけた。

「んもう、ほら来なさい!」

ずるずるとパー子を引きずり目の前の席に座ったあずみに、ウーロン茶から目を離して顔を上げれば頭を抱え顔を隠すようにして座る可愛らしい桜色の着物を着た人。着物の色によく映える綺麗な銀色の髪はパーマがかかっているらしく、頭の左右に付け髪か地毛か分からなかったが猫のしっぽのようなふさふさの髪。

「パー子、ほら挨拶は」
「…よろしく」

鼻をつまんだ詰まったような声で返される。

「ちょっとパー子!顔くらい上げなさいよ、失礼でしょ」
「そうだぞパー子。***に失礼だとは思わんのか」

あずみと桂に強い口調で言葉をかけられて縮こまる姿に少し可哀想になる。

「あ、あの、顔は上げなくていいんで。パー子さん、今日はよろしくお願いします。ヅラ子さんがこんな事になってごめんなさい」
「……悪ィと思ってんなら手錠外せや。お前鍵もってんだろ」

唸るような声で小さく呟かれる言葉は鼻をつまんではいなかった。
聞きなれた声に思考が止まる。思わず頭をじっと凝視してしまった。

「……え?、ぇえ、まって、え?」

桂の顔を見て銀髪の頭を見て、数度それを繰り返して頭が動き出す。

「え、が多いぞ」
「いや、ヅラ子とパー子って、そういう事?」
「そういう事とはどういう事だ」
「いやヅラだからヅラ子で天然パーマだからパー子…、というか元攘夷志士しかいないじゃんこの店」

テーブルに肘を着いて額を手に乗せて俯く。
なんでこんなことになってるの?
なんで銀ちゃんはかまっ子倶楽部で働いてて、私の前に女装して座ってるの?
動揺を隠すようにウーロン茶を手に取ってストローに口をつけた時だった。もう降参、そう言いたげな表情で銀時の顔が上げられる。
ストローを通って喉を潤すはずだったウーロン茶が勢いよく逆流してグラスの中でごぼりと音を立てて跳ね上がった。慌てて机の上に置く。

「うえっ、げほっ!…っ」

なんか吸って吐いてしてよく分からないけど気管の方にも入ったみたいで咳が出る。苦しくて涙が出そうだった。

「ちょっと、大丈夫?」
「ご、…ごめ、なさ…」

あずみが慌てたように席を立つとハンカチで涙を拭ってくれる。
オカマの人は女性より女性らしい。そんな言葉を聞いたことがあった。
化粧はそう派手では無いものの、銀時の顔に合うように施され、全体的にマッチしていてむしろ可愛ささえ感じられる。
銀時が身を乗り出して叫んだ。

「なんなのオメーその反応!!?地味に傷つくから止めて、千々に砕けたプライド粉々にする気かコラ!」
「アンタたち知り合い?」
「そうだよ!知り合いにこの姿見られて、しまいには飲み物噴かれるくらい衝撃受けられる俺の身にもなって!」

慌てて自由な方の手を上げて横に振る。喉の違和感から咳がまだでて満足に喋れない代わりのジェスチャーだった。

「なに、可愛くねーって?上等だコラ、可愛くなくていいんだよ、こちとらそんなつもりでオカマになってんじゃねーよ。これだからね、誤解すんなよ」

体の前で親指と人差し指を丸めてジェスチャーをしてくる銀時に、銀時らしくて笑ってしまう。

「らしくて、いいとおもう」

治まった咳に言葉を押し出せば、驚いたような表情をした後になんとも言えない苦虫を噛み潰したような表情になるとチークで薄らと明るくなった頬に更に赤みが増した気がした。



少し前、銀時はカウンターの裏で小さくなって時間が過ぎるのを待っていた。
着替えて化粧をして、頭の左右につけ毛をつけ店内の準備を手伝っていた時だった。裏口から聞き慣れた2人の声が聞こえたのは。
あずみが2人を連れて店内に戻ってきた時には心臓が口から飛び出る勢いだった。
なんで***がこんな店にくるのか。カウンターの裏から話を聞いていれば理由はすぐに分かったものの、とっとと手錠を外して帰って欲しい。
こんな格好を見られたら羞恥で死ねる。
なのに話は銀時の思いとは違い飛躍していく。
あずみの話に思わず声を上げて突っ込んだ後にすごく後悔した。黙っていればここに隠れている事なんてそうバレはしなかったのに。自分の迂闊さについ舌打ちをした。
案の定隠れている場所から引きずり出されて***の目の前に座っている。

「つーかさっきも言ったけど、別に手錠の鍵持ってんだから外せばよくね。なァ***」

きっとこの格好で何を言っても締まらない。
代わりに少しだけ警戒心が薄れていそうな***の隣に席を移すと自由な方の手を取って身体に触れた。
女の格好なのに近くに寄れば大きい体。ちぐはぐなそれに驚いたのか、それとも触れる手から逃げるためか体を引かれる。それを見越したように桂に目配せをすれば繋がった方の手が桂によって掴まれ逃げ場を無くしてしまう。
一気に青くなる***の頬に顔を寄せた。

「鍵はどこかな」
「か、っ鍵位でこんな」
「俺にとっちゃー割と大問題でな、オメーとヅラがセットになってんの」
「ちょっとパー子アンタなにやってんの?!」
「アゴ美もヅラ子が自由な方が楽じゃね?だから手錠の鍵探し」

制服の上着の留め金を外して銀時は内ポケットに指を入れては中を調べて、目的のものがないと悟ると抜いて次に移る。
テーブルの上には警察手帳、ハンカチ、警笛、無線機などが置かれる。

「そりゃあ、ヅラ子にはお得意さんがいるし接客はして欲しいけど」
「だろー、俺もなんだよね。少しでも楽してーっていうか。ねーじゃんどこに隠してんの」

粗方ポケットは探しきったが一向に見つからない。

「オイどこあんの」
「教えるわけないでしょ」
「オメーこのままヅラとセットでどうすんの?」
「どうって、なにが?」
「トイレどうすんの?」

比喩をかけることもなくストレートに聞けば***の顔が一層、青くなる。

「なに、無策でこんなとこに来たの?バカだねェ。ヅラの仕事終わるまでって何時かわかってる?」
「な、何時?」
「分かってんだろ、水商売がどういう労働形態かくらい。という事で鍵は?」

さすがに折れると思ったのに黙りを決め込む***に制服のスカーフを掴んで引き寄せる。

「イケナイとこ探さねーといけねェ?こっから強気な婦警さんと18禁になっちゃうけどいい」

ふざけて言えば更に動揺したのか***の視線が揺れる。
その先はポケットから出した***の私物たち。

「あー、もしかしてこの中?」

警笛と無線機は隠すところがない。ハンカチを開いても何も無くて、次に警察手帳を探せば開いた内側のポケットに押し込んでいたものを見つけた。

「みーつけた」
「それ、!だめ!」

狼狽える***に片手でも器用に小さい鍵を取り出して見せつける。

「やるではないかパー子」
「オメーはさっきからパー子パー子うっせえんだよ。自分で探せよな」
「いやいや、婦女子の体に容易に触れてはならんだろう。さすが銀時だな」

桂の言葉に鍵を渡そうとした手が止まる。
隣に座る***の顔が見られなかった。怖々と握っていた腕を離す。

「いやいやいや!違うからね!さっき変なことは言ったけど、欠片もそんな邪な気持ち持ってたわけじゃねーから!!つーかヅラ!オメーも誤解を招くようなこと言ってんじゃねェよ!」
「ヅラじゃないヅラ子だ!いいからさっさと鍵を寄越せ」
「だめって言ってるでしょ!」

離した***の手が鍵を握る手を掴んでくる。それに畳み掛けるようにヅラが手を伸ばしてきた。
のしかかるように迫ってくる2人。

「私がどれだけ苦労したと思ってるの!」
「銀時、ヘイパス!」
「ちょちょちょっ!まてお前ら、乗るな」

長椅子の上に背中がつく。
その上に桂が***を押し倒すように降ってきた。


「つーかお前さ、ヅラ捕まえてどうすんの?」
「私の胃痛の原因を取り除きたかっただけ」
「ヅラに色々喋られたら困んのお前ェだろ」
「……それに関してはノーコメントで」

鍵の取り合いで桂と押し合い圧し合いをしてバランスを崩してしまい、銀時を弾みで押し倒してしまった上に桂と2人で倒れ込んでしまった。
椅子から落ちそうになる体を、腕を伸ばした銀時が受けて止めてくれた間に鍵を手に入れた桂はお店の控え室でヅラ子になる準備をしている。

「別に捕まって欲しいとか、獄に繋がれろとか言いたい訳じゃなくてさ、ちょっと大人しくしてて欲しいだけなんだよね。どうせ逃げられるのは目に見えてるからさ」
「うん、気持ちは分かるけどさ、どーすんのコレ」

腕を振られると金属の擦れる音がする。
桂の片腕に嵌っていたはずの手錠は、***を受け止める為に差し出した間に隙だらけだった銀時の腕に嵌っていた。

「鍵持ってんのヅラだし。つーかあいつ、恩を仇で返すたァいい度胸だよなァ、くそっ」
「2人とも愚痴垂れないの。お店ももうじき開くしそんな死んだ魚の目をしてちゃダメよ」

そう声をかけてきたのは、オーナーの西郷特盛その人だった。
真選組の隊服で、かまっ子倶楽部にいるのがいたたまれなくて仕方がない。

「***だったわよね。さすがにその格好でお店に置く訳にはいかないから、着替えてくれると助かるわ」

そう言って差し出された着物は女物にしては大きい。

「あ、あの、着替えると言っても手錠が邪魔で」
「ああ、それね安心して。ヅラ子に言ったら快く渡してくれたわ、鍵」

そう言って渡される鍵には血がついていた。
え、なにこれ?快くにしては大変物騒な跡。
受け取る指が思わず震えた。銀時に奪われていなかったら自分がこうなっていたのかもしれない。

「さ、坂田さん。とりあえずお礼を言わせて」


かまっ子倶楽部は繁盛だった。照明が落とされて音楽が流れる。
***は身軽になったこともあり、桂が仕事を終えるまで待つつもりでかまっ子倶楽部に居座っていたが、忙しさについできる仕事を手伝っていた。奥で洗い物をしたり給仕をしたり、店内を走り回った。あまりにも忙しくて本来の目的を忘れそうになる。手錠と鍵は仕事が終わるまでは西郷が預かることになっている。
軽くなった腕を擦ると、接客中の桂の姿が目に入る。女顔負けのあまりの綺麗さにどきりとした。時々上品に笑ってみせ、上手に客をあしらう態度がスマートでこの仕事向きすぎでは?と思わず思ってしまう。
その反面、女装はしていてもいつもと変わらない銀時の姿に笑ってしまった。
今回は仕事を放り出して逃げる様子は桂にはなさそうで、とりあえずは目の前の事を片付ける為に走った。


「おつかれ」

閉店時間になり客もいなくなると、店内は静まり返る。***も制服に着替えると店の椅子に座って桂の姿を目で追っていた。
そこにぴとりと頬に当てられる冷たい感覚に意識が桂から外れる。

「何がいいかわかんなかったからとりあえず水」

お店の物だろうか、グラスに入った水を隣に座る銀時から受けとった。

「…ありがとう」

着替えも済ませて化粧も落としたいつもの姿に何だか安心した。

「あんま休憩取ってなかったろ。つーかどんだけヅラ追いかけんの?帰ればいいのに」
「うーん、それ私も思ったけど私じゃさ、なかなか見つけられないんだよね。沖田くんはすぐ見つけちゃうんだけど」

グラスに差されたストローに口をつけて乾いた喉を潤すと、少しだけ甘みのある水に首を傾げる。水、なのかこれ。でもとても飲みやすくて、ついちゅーちゅーと飲んでしまう。甘さが疲れた体に沁みた。

「今回はほんと運が良くて、これ逃したらきっと土方さんに永遠にノーチェンジって言われる。つらい、そんなの辛すぎる」
「ノーチェンジ?、何が」

怪訝そうな顔をして聞いてくる銀時に、何故かすごく体が熱くなってきた。気分もなんだかふわふわして、意味もない会話に応じてくれる態度に嬉しくなる。

「んー、沖田くんと組むんじゃなくて、土方さんがいいなって話」

水が甘いせいだろうか。気持ちがすごく明るくなってきた。

「別に沖田くんのことが嫌いとか土方さんの方が大好きとかじゃないんだよ。好きとか嫌いとかとは別の話で」

ストローでグラスの中を掻き混ぜるとからりと氷が音を立てる。耳の奥で音が反響した。
何かおかしい。そう思った時にはグラスに残る水は4分の1を残して胃の中に入っていた。

「ねえ、坂田さん…、ちょっと聞いていい?これほんとに、水?」

今度は頭がクラクラし始めてテーブルに頭を置く。

「え、水だろ、」

グラスを銀時の手が奪うと、フチに直接口をつけて水らしきものを口に含む。飲み込むと顔が青くなった。

「おいコラアゴ美!これ酒じゃねェか!」

バックヤードからあずみが顔を出すのが見える。

「あらまァ、てっきりパー子が飲むのかと思って。アタシ達にとって水っていえばお酒のことでしょー!」
「違ェよ!水っつったら水なんだよ!つーかややこしいな、なんでこれ透明なの、なんで透けてんの?」
「水のように飲みやすいお酒、それが果実酒よ」
「知らねーよ!いや知ってるけど!つーか***もなんで半分以上飲んでしまう前に止めないの?!どう考えても酒だろこれ!なんでそんな一気に飲むの!」
「だって、坂田さん水って言ったもん。喉乾いてたし、甘くて飲みやすかったし」
「脇が甘ェんだよ!どーすんのヅラ逃げるよ、いいの?」

体を軽く揺さぶられると、お酒と分かった事もあり気持ち的にも酔いが回る。
それでも「ヅラが逃げる」その言葉に頭を上げると立った。

「だめ!それは、だめっていうかぁ…」

だが立ち上がった瞬間にくらりと視界が揺れる。

「ダメなのはお前ェ!いやほぼ俺が悪ィんだけどさ!」
「ふんっ、何をしているかと思えば。鬼の霍乱か」

着替えを終え、バックヤードから出てきた桂が笑った。

「霍乱つーか酩酊だろ」
「その状態ではもう俺を追えまい」

桂が懐から出した手錠と鍵がテーブルの上に置かれる。

「まあでも、俺が付き合えと言ったからな」
「……うん、言った。次はどこに行くの?」
「そうさな、お前が俺を真選組まで連れていきたくなくなるくらい絆される場所にしようか」

目の前のロン毛がすごくかっこよく見える。いや元から凄くかっこいいって知ってるけど、お酒のせいか背景がすごくキラキラしていた。

「ちょっと待てェ!!なに!なにその怪しい契約!お前ら俺が知らない間に何危ない遊び始めてんの?」

キラキラの背景に吸い込まれるように席から立ち上がれば、肩を引かれて桂との間に銀時の背中が割り込んでくる。

「危ないとはなんだ。***は紅桜の件でもそうだったが、ちょろそうだからな。飯を食って話して笑って、時間を共に過ごせば絆されてくれそうだろう」
「ほんとにそれだけか?あわよくば連れ込み宿になだれ込んで、恥ずかしいアレとかコレとか……!」

手をわなわな震わせながらハレンチなことを口にしようとする銀時に背中を叩いた。

「いってェな!お前は」
「知らないの坂田さん、桂さんは未亡人が好きなんだよ。未亡人はね、未亡人にしかない魅力があるの。私なんかに食指が動くと思う?」
「お前は何回脇が甘ェって言えばわかってくれる?!他人の言うことほいほい信じんな!バカなの?バカだろ!知ってる…」

疲れたように吐き出される溜め息に、腕を上げて脇に顔近づける。

「何やってんの?!物理的な話じゃねーよ!お前酔ってんだろ正常な判断ができてねーじゃん!」

もう銀ちゃんが何を言いたいのか定かではなくて、頭がふわふわして笑いがこぼれる。随分と久しぶりだったから。こうしてヅラと銀ちゃんと3人でバカをやるのが。

「パー子、グラス下げなさいよ。それとそろそろお店閉めるからやるならお外でやんな」

またバックヤードからあずみが顔を出すとグラスを手に銀時はバックヤードに向かった。

「オイお前らちょっと待ってろ。いいか、絶対だかんな。2人で夜の街に消えたら銀さん許しませんからね」

捨て台詞を残してバックヤードの向こうに消えると、ほんの数分で戻ってくる。

「桂さんはどこ行きたい?」
「俺か。俺は特に、ああ久しぶりに定春くんの肉球を触りたい」
「それまんまお前の単なる願望だろーが!そういうんじゃねェだろ、俺が言うのもアレだけど…こいつと親睦を深めてェんだろ」
「まあ、聞こえがいいように言えばそうだな」

親睦。とてともいい響きにお酒も状況も相俟って***の気分は上がることしか知らない。

「よし!今すぐ屯所に行こう!」
「待て待て、お前もそんな酔っ払った状態で真選組戻ってどうすんのっ!」
「えー、私と親睦深めたいんでしょ?だったら屯所が一番いいと思うな」
「怖ェんだけど、親睦じゃないよねそれ。牢獄行きだよね。勘弁してもうひとりじゃツッコミきれねーよ。あとお前歩き回るなら服着替えろ。それと忘れ物」

銀時はテーブルの上に置かれたままの手錠と鍵を手に取ると持たせてくれる。

「そっか、じゃあとりあえず私の家行こっか?ねー、桂さん」
「あぁあああ!!!もう勘弁して!」




♭24/04/23(火)

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