純黒の出会い.3


パソコンを不自然に見えないように意図的に壊した時だった。
「ねえリモンチーノ、あなたさっきラボにいないって聞いたけど?」
ベルモットからの電話に用意しておいた台詞をよどみなく話す。
「パソコンはダメだったので、キュラソーさんの持っていた携帯や無線を探しているんです。私のよりキュラソーさんの機器の方が頑丈に作られているので。ラムさんに電話したなら残ってるんじゃないかと思いまして」
「そうなの? でもキュラソーの乗っていた車は爆破したそうよ」
「そうなんですか!? 現場付近に来ましたが望みは薄そうですね」
どの車に乗ったか、どれほどの爆破規模か知っているが、知らない方がことは上手く進むだろう。
「オンラインで携帯のデータとか引き抜けないの?」
「無理ですよ! 私にそんな権限ありませんって!」
「あなたのこと、世界的大天才の側にいたから使えると思ってたのに使えないのね」
だったらベルモットが直接あの方に進言して私にもっと権力を与えてくれよ。
「そうですね。期待されるのは嬉しいんですけど、私も世界的大天才と同じで死にたくないんですよ」
それに側にいただけで私は天才じゃないんだよ。それに私はただのメカニックであって魔法使いでもない。能力にも限界があるし、組織にバレない程度に一部の技術を隠している。
「あら、そんなつもりはなかったの。じゃあね」
電話終了の電子音。ベルモットとの電話はとても疲れる。


ベルモットの居場所は東都水族館の管理室を示した。電気系統をダウンさせる気か。
この組織は人の命をなんとも思わない組織だ。そこに小さな子どもがいようと、何百人もの客がいる遊園地だろうが関係ない。
だから世界中からスパイが潜り込もうと必死なのだ。早くこの組織を壊滅させたい。

中に入るチケットを買おうと、一つしか空いてないチケットブースを覗くとキュラソーが警察関係者に取り囲まれてた。
なるほど、目的は警察からキュラソーを奪還することか。
チケットを買えないかと控えめに声をかけると、キュラソーが振り向く前にスーツの男にブラインドを下ろされた。
営業時間によると閉館までまだ余裕がある。チケットブースを閉めるということは警察はこれ以上人を入れない為なのだろう。しかし対応、酷くない? 子どもだったら泣いてるよ。

入館して観覧車へ向かう。当然のことながら観覧車に乗るためのチケットは持ってない。さてどうしようか、と考えていると観覧車のチケットを確認されるところで停電が起きた。停電のざわめきとそれを鎮めるスタッフの声。動こうとする客に紛れて列を抜け出す。混乱に乗じてスタッフオンリーのプラカードを無視して階段を上っていく。幸いなことに普段なら響くであろう足音は周囲の音に消された。
人が見えなくなったところでライトを点ける。予想よりも足場は悪くない。早く爆弾を探さねば。
大量の爆弾を設置するなら車軸かゴンドラの接合部だろう。車軸を照らすと見覚えのある黒い塊、C4があった。狙いが外れなくて良かった。

「誰だ!?」
バーボンの声が聞こえた。声のした方を照らすと消火栓の前に屈んだバーボンがいた。
「私だよ」少しの間ライトで自分の姿を照らしてから、再び地面にライトを向けてバーボンの側に向かう。
彼は私が作った起爆装置を処理している最中らしい。開けた時に作動するトラップは解除出来たようだ。
「いけそう?」
「まあな。難しくなくて助かったよ。手元を照らしてくれないか?」
「もちろん。それより私が処理した方がいいかな?」
「これくらい自分で出来る。ここにいるのは危険だ。ライトを置いて安全な場所へ」
「だからこの配線は私がやったんだって。私がいた方が安全でしょ」
「少し静かにしてくれないか。気が散る」
解体作業を交代してくれれば良いものを。バーボンはプライドが高いとみた。私の周辺にはプライドがとんでもなく高い人が多いから分かるんだ。
プライドが高いのは分かったが時間がない。慎重なのは正解だが、早くしないと死亡者まで出る。しかしこの手のタイプは邪魔しなければ制限時間内にやりきってしまうことが多い。ここは賭けてみるしか道はない。
心臓がうるさい。その日に会ったばかりの人を信じるのは久しぶりだ。
爆弾がここならジンたちは観覧車が見える範囲にいるだろう。横で通信の傍受を試みようと受信機を広げる。しおりを挟む
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