ゼロと公園


白蘭が関わっているかもしれないので、爆破現場へNorを使った不正アクセスの調査と、秘書に頼んだ都内の防犯カメラに男が映ってないかをボンゴレの技術者に正式に依頼することが出来た。
Norを使ったユーザーの特定には時間がかかるそうだが、爆破現場に忍び込んだ男が数日前に警視庁側の監視カメラに映っていたと伝えられた。それ以降の男の様子についてはまだ検証がが終わらない為に分からないが、今日中には検証が済むと言われた。

今にも雨が降り出しそうな空の下、バイクをコインパーキングに停め、警視庁の周囲の地図を頭に入れた。歩き回って男を探すも一向に見当たらないので、近くの公園に入った。

もし、誰かが警視庁内部の盗聴をしているならば、その電波が飛んでいるかもしれない。そして警視庁が目と鼻の先にあるこの場所ならその電波を拾うことも出来そうだ。
自分以外にも盗聴している人がいる前提の上に成り立つ行為は、一か八かの賭けである。なので音楽を聴くふりをして盗聴を行うことは危険だ。片耳のみのヘッドセットを装着して周波数を変化させながら音を探す。

髪でヘッドセットを隠し、ぼーっと携帯を弄っているよう見える体勢で神経を音に集中させると、男性の声が聴こえた。ビンゴ! なんとこの付近にいる誰かは捜査会議を盗聴していた。

しばらく聴いていると、盗聴機を付けられた人が退室したのでさっさとこの場所を離れる。公園を出るか出ないかの場所でNorを使ったユーザー特定について警察が掴んでいる情報を本部に送ろうと考えている時、背後から腕を掴まれた。

「捜査会議の盗聴ですか」
安室は怒りを隠そうともせずに語気を強めて言った。
「会う度に私を疑うの、やめてくれないかな」
捜査は進展している。ここまでイライラする理由はないはずだ。
「ではそのワイヤレスイヤホンの理由を聞かせてもらおうか」
安室さんは腕を掴んだまま、反対側の手を伸ばし、私の髪に触れてワイヤレスイヤホンを見えるようにした。
「盗聴なんて発想が出るのは自分がしてるから?」
自分の耳を人差し指で二回叩くと安室さんは自嘲するよう髪の間からワイヤレスイヤホンを覗かせた。
「あなたには関係ない」
「私も同じ意見よ。帰ってもいいかな?」
「待て! そんな嘘が通用すると思ってるのか」
「人は信じたいものを信じる生き物だから、信じたいものを信じればいいじゃない。そこに私は介入しない」

言葉に詰まる安室さんにさらに畳み掛ける。
「今回の件、盗聴機をつけようとした安室さんと違って私は安室さんに盗聴機も発信機もつけてない。もちろん警察の邪魔もしてない。それに会社は協力を渋らなかった。私に構う暇も理由もないと思うんだけど」
「目的は、なんだ」
絞り出した声は自信満々な安室さんとは思えないほど憔悴していた。
「惨劇を繰り返させないこと。政府が機能しないと、守れるものも守れない。だから今、私は味方だよ」

未来で起こったボンゴレ狩り。警察は全くと言っていいほど機能していなかった。異常までに行われたそれの標的は一般人も多かったが、例え警察の目の前で犯行が行われようとも、殺人と認められず単なる行方不明とされた。
政府が存在しようと、ミルフィオーレが存在しないとでも言うように、ミルフィオーレに関わる一切を無視し続けた。

「そんなもの、信じられるわけ──」
安室さんの手を両手で包み、祈るように胸の前に持ち上げる。
「信じたいものを信じればいい。それは貴方が決めること。私はね、人を守りたいの」


△▼△


風見を呼び出し、公園に向かう途中で警視庁から離れていないコインパーキングに沢田千代が乗っていたあのS1000RRが停めてあった。

風見に盗聴機を取り付けたのは沢田千代であると確信し、江戸川コナンではないと考えていた。それなのに、風見は沢田千代と会っていないと言う。その上、江戸川コナンに盗聴機について鎌をかけると否定しなかった。
自分にも風見にもこれ以上の盗聴機は取り付けられておらず、彼女を探すために彼らから離れた。

公園の出口で見つけた彼女は片耳にワイヤレスイヤホンをしており、彼女も盗聴していたのではないかと疑った。しかし、彼女が言ったことは間違っていない。オートバイに乗るのなら小型のワイヤレスイヤホンは理に適っている。盗聴を決めつけるには証拠が足りない。
盗聴機を取り付けられてもすぐに気付くほどに彼女は優秀だ。そんな彼女の言葉を聞くたびに丸め込まれている気がして不安が募った。弱味を見せてはいけないと思い、頭の中に警鐘が鳴り響く中、もしかしたら彼女は味方かもしれない、と片隅で声を上げる自分がいた。しおりを挟む
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