どうぞ遠慮なく見限って
やばいやばいやばい猛烈にやばい。
高校に入ってからかっちゃんのお世話になりっぱなし頼りっぱなしだ。
中学では何とかなってたけど、体力が落ちたせいで日常生活を送るのも以前より難易度が高くなった。

菓子折りやらお礼の手紙を準備しながらそう思った。

春の柄の便箋に時候の挨拶を書き綴る。
家には私が迷惑かけたり、お世話になったりした時用の菓子折りやらお礼の手紙やらが常備されている。常習犯だから、慣れてしまっている。嫌な慣れだ。



翌朝、いつもなら途中で別れるけど、今日はかっちゃんの教室の前までついて行った。A組の教室の中には入らず八百万さんと飯田さんを呼んでもらった。
二人は既に登校していた。
お礼の菓子折りを渡して、改めてお礼を言う。お礼の品も言葉も嫌がられてなくて、少しだけホッとした。

かっちゃんには菓子折りを受け取ってくれない。小学生の頃に「いい加減いらねーわ」って断られてからポーズだけになっている。
「毎回渡してたらキリがないだろ。俺はいらねー」って、今回も言われた。



「目時さんは爆豪さんの大切な人なんですね」

八百万さんは、そう言って笑った。真っ直ぐに私を見つめるから、自分の嫌な部分が見透かされた気がした。

「多分……違うと思う」
「え?」
「あ、いや。ただの幼馴染で腐れ縁なだけだと思う。私は手がかかって面倒だから世話を焼いてくれてるんだよ。かっちゃんは優しいから私じゃなくても、助けてくれると思うし……」
「そのようなこと……」
「もうすぐ予鈴鳴るから、私はこれで失礼するね。ありがとうございました」

かっちゃんが助けてくれるのは、単にかっちゃんの視界に入っているだけ。飯田くんや八百万さんのように、私じゃなくても困っている人がいれば助けるんだ。じゃなきゃヒーローとか目指さないよね。


**


なんと今日も体育がある。
体育の回数多くないとか、まあ色々思うこともある。でも高校の規程の体育の授業時間から著しく多くなかった。つら。

今回は二人組で協力してゴールを目指す障害物競争だった。クラスメイト同士の個性の把握と仲良くなるのが目的らしい。

無個性でしかも体育は毎回最下位の私とか絶対組みたくないでしょ。
私は絶対避けられてる。私はハズレだ。私と組む人が可哀想になるようなハズレ。
適当に組めって言われたらぜっったい余るか優しい人が組んでくれるかどっちかだろう。でも決め方はクジで先生は生徒にクジを引かせた。

私の相手は誰だ?、って私以外も思ってるよね。わかるわかる。

「ごめんね。私で」

私と同じ文字を引いたのは心操さん。喋ったことはないけど、先生にそう呼ばれていた。

「謝んなよ。よろしく」
「こちらこそよろしくね。心操さん」
「さん付けしなくていいよ」
「じゃあ、心操くん」

心操くんは私に個性を教えてくれた。彼の個性は洗脳。身体能力に直接繋がるものではないらしい。

「すごい」

説明が終わった時には自然と口からこぼれていた。
洗脳って個性を言えて、周囲からの目から耐えられるだけの精神力の持ち主だった。羨ましい。私は言えない。言ったところで耐えられない。


心操くんが私に理解できないって目を向けるから、私は続けて喋り出す。

「すごい個性だなって。ごめん、口から出てた。優しいヒーローみたいな個性だと思ったから」
「初めて言われた」
「だってオールマイトとかは街も一緒に破壊してしまうけど、心操くんの個性なら街を直接破壊することはなさそうだし。敵を暴れさせずに拘束も出来ちゃうんでしょ? イレイザーヘッドみたいで強いなぁ」

心操くんは黙ってしまった。やばい。地雷踏んだ? 個性はみんな違うしふとした言葉が地雷になることは結構ある。

「嫌なこと言っちゃったかも。ごめんね」
「いや、嬉しかった」
「え?」どういうこと。
「目時の個性は?」
心操くんは強引に話を進めた。そういえば時間もあまりない。

「――足の小指の関節が二つあること……です」
私は言えない。個性について洗脳出来ますって言えない。

「――運動はダメダメだし、今から謝っておくけど活躍とか、フォローとか満足に出来ないかもしれない。でも足を引っ張らないように頑張るね。思い通りに動かしたかったら遠慮なく命令して私のこと使って」
「――嫌じゃないのか」
「うん。全然」
私も洗脳する側だ。洗脳されたことはない。あの怯えたり、嫌悪感を露わにして向けられる目は私も知っている。
自分が洗脳される恐怖はなかった。むしろ興味があった。
彼は個性を使いこなせる人だ。 信頼できる。
「もしかして一生洗脳が解けないとかあるの?」
「いや。解除条件は――」
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