I want to know...!02

「…うわぁ……」
部屋に入ったケーディは思わず声を漏らした
高く積まれた書類の数々、それだけでなく至るところに書類が散らばっている
「あー…わりぃな、こんな部屋で。その辺テキトーに座れ」
ウェンディルはぽりぽりと頭を掻き、冷蔵庫から紙パックの紅茶を取り出した
「あの…ここにあるのは…」
「んー…?資料だ、資料。」
「資料…?」
ケーディが近くにあった資料を手に取ると過去に起こった事件の詳細がびっしりと書かれていた
「あんま見んじゃねーよっ」
ケーディから奪うように資料を取り、ぺしっと頭を叩いた
「…で、聞きたいことってなんだ?」
「あ…それは……この間のような事件は…頻繁に起こるのかと…それと…ウェンディルさんのような方は…どのぐらいいるのでしょうか…」
「……は?お前そんな事聞きにわざわざこんなとこまで来たのかよ…」
「どうしても…ウェンディルさんに聞きたくて」
「頻繁に起こるっちゃあ起こるが…俺みたいな奴らはすくねぇぞ。あと、さん付けするな気持ちわりぃ」
ウェンディルは音を立て紅茶を啜り、ソファーに座り込んだ
「……頻繁に起こるのに…少ないの…ですか?」
「まぁな、俺らの数は昔と比べるとかなり減ってる」
ウェンディルの回答を聞くとケーディは少し考え込んだ
「何故でしょうか…」
「さぁな、俺が知るかよ…大体、俺らみたいな奴らは元々お前らと共存してたんだよ。」
じーさんばーさんから聞いた話だがな、と付け加え無くなりかけの紅茶の紙パックを覗き込んだ
「ま、今となっちゃ俺らは嫌われ者になっちまったがな」
「あの…もう少しその話聞いても…?」
「…は?」
「警察としてですが…ウェンディルのような方と関わる事があるので…聞いておきたくて…」
「…ったく……しょうがねぇな…」
ウェンディルは呆れたように呟いた
「…んで、何処から聞きたい?」
「へ…っ?」
座り直し、伸びをしているウェンディルがメモ帳を取り出しているケーディに問いかけた
「どっから聞きたいのかって聞いてんだよ、共存してた頃か?それとも現状か?」
「えっと…それじゃあ共存していた頃を…」
「共存、か…聞いた話になるがいいか?」
「はい…っ」

「俺らは元々人間同じ村や町に暮らしてたんだよ、んでその当時から人間を襲うような奴はいた…少数だったがな、ここまではいいか?」
ウェンディルが近くにあった資料を取り、簡単な図を書いた
「はい…っ」
「そんでだんだん人間が増えて俺らを脅威と感じ始めたんだ、寿命も身体能力もちげぇからな。まぁ、納得はできるが…脅威と感じ始めてからが問題だな」
「問題…ですか?」
ケーディがメモを取っていた手を止め、ウェンディルをじっと見た
「お前も知ってるだろ魔女狩りだの吸血鬼狩りだのは…それ以外にも身に覚えのねぇ事言われて殺されたやつがいるって話だ」
「…そんな事が…あったんですか…」
絞り出すようにそう呟くとケーディはぐっとメモを握り締め眉間に皺を寄せた
「なーんでお前がそんな顔すんだよ、お前がやった訳でもねぇしよ」
「そんな事があったなんて…僕は知りませんでしたから…」
ふぅんと呟きウェンディルは頬杖をついた
「ま、そんなこんなで忌み嫌われる存在になっちまった訳だし俺らは人間じゃねぇって事を隠して生きてるんだよ」
こんな風にな、とウェンディルはフードを脱いだ
「…!」
「なんだ、これも聞いてなかったのか?ったくハヴァンは…」
驚き目を丸くしているケーディをよそに、ウェンディルはガシガシと頭を掻いた
「つ…角…?なんで…」
「なんでってそりゃお前…俺が人間じゃねぇからだろ…まぁ何の角だかは知らねえが」
頭に生えた小さな角を触りながらウェンディルは呟いた
「こんなんでも隠してねーと色々面倒なんだよ。隠してても変な奴に目付けられるってのに…」
「そう…なんですか…」
「まぁな、大変なんだぜ?一年中だしよ…もう慣れちまったがな…」
ふぅ、とため息をつきウェンディルはフードを被り直した
「そんでまぁ…忌み嫌われる存在になった俺らみたいな奴らの中には人間に対して攻撃的になる奴らがいるってことだ、その数が大半を占めるからあんな事件が頻繁に起きるんだよ」
「なるほど…その…事件を起こす方は…どれぐらいいるんですか…?」
「さぁな、自分が人間じゃねぇってのも知らない奴もいるんだ…詳しい数は知らねえよ」
飲んでいた紅茶の紙パックを空だと確認するように振り側にあったゴミ箱に投げ捨てた
「そうなん…ですか…」
「まぁ…俺が知ってるのはこれぐらい…だな、他に聞きてぇ事あるか?」
「あっ…いえ、特にはもう…」
「んじゃあさっさと帰れ。長居する必要はないだろ?あ、あとこれ」
立ち上がったウェンディルが一枚の紙切れを渡した
「これは…?」
「俺の電話番号。今日みてぇに急に来られると困るんだよ、次からはお前が直接電話してこい」
「あ…はい…分かりました」
「そんじゃ、お見送りはいらねえな?坊っちゃん」
ウェンディルはニッと口角を吊り上げわざとらしく言った
「い…いりません…っ!」



『…なんだ?お前から電話とは珍しいな』
「おー…?別に、坊っちゃんが帰ったからご報告ーっと思ってな」
『そんな訳ないだろ…何か用があってしてきたんだろ?』
「別に用はねーよ、お前に似てるって思っただけだ」
『似てる?アイツと俺がか?冗談だろ?』
「冗談じゃねーよ、昔のお前そのまんまだ。昔話、してやろうか?」
『…勘弁してくれ』


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