note
*ジャンルCP雑多でなんでもあり


(静吉)

可愛い後輩が出来たと、静雄はここ最近赤毛の子供を前にするたびに思う。この力故に周囲から疎遠されてばかりだったが、そんな自分にもようやくまともな後輩が。
自分を恐れるでも非難するでもなく、ただ傍にいて黙って話を聞いてくれる、すごくいい奴。時々コーラを奢ってやるとすごく嬉しそうに笑う奴。
(……けど、なんでかなあ)
そんな"いい奴"である後輩が門田やサイモンやセルティにも同じように接しているのを見ると、どうにも面白くない。
それが恋だと、静雄はまだ自覚していなかった。




(静吉前提吉+帝+正)

ファーストキスは甘いってよく言うがまあファーストキスを経験したこともないような諸君にはまだ早い話だろうなあ、昼休みに紀田君がそんな話をし始めた。何の話の流れで彼がそう言い出したのかは思い出せないが、その話題に顔を赤くした帝人をからかう紀田君の声を遠くに聞きながら、僕は一人考える。
(ファーストキスは、甘い)
一般論ではそうなのだろうか。けれど。
「……僕は苦かった」
ぼそりと呟くと二人の視線がこちらに向けられた。
なんだとヨシヨシいつの間に彼女なんか作ったんだ!騒ぐ紀田君に彼女じゃなくて男だけど、とはさすがに言えなかった。




(臨帝/続2月22日)

「サイケ、学人」
先日から俺の家に増えた同居人、白い猫と黒い子猫の二匹には帝人君がそれぞれ名前を与えた。白い猫にはサイケ、黒い子猫には学人。何を考え何を思って帝人君がその名前をつけたのかは知らないが、猫達の方に異存はないようで呼ばれる度になあと間の抜けた返事をしている。
しかし、飼い主よりも帝人君に懐いているのはどういう了見なのか。
「可愛いですね」
猫より帝人君の方が可愛い、という言葉は飲み込んだ。




(臨帝/2月22日)

猫を見つけた。まだ寒い一月半ばの事だ。ぽつぽつ降る雪の中ゴミのように打ち捨てられていた段ボールには白い猫と黒い子猫が入っている。
「……寒そうですね」
歩みを止めた俺の隣にいる帝人君がぽつりと漏らした。
「仕方ないよ、雪だし」
「そうですけど……」
「それとも君が飼うの」
無理だよねえ君は貧乏学生な上にアパート住まいなんだから、言えば堪えるように帝人君は唇を噛み締めた。さぁもう行こう、彼の手を引こうとすればするりと逃げられ帝人君は躊躇いもなく汚れた段ボールを持ち上げた。
「飼ってくれる人を探します」
それは意地だったのか単なる同情だったのか、恐らく両方だろう。参った、俺の負けだ。
「分かったよ、帝人君」
「え、」
それ、俺が飼うよ。言えば帝人君は唖然とした後、笑みを浮かべた。
「ありがとうございます」




(臨帝/アンドロイドパロ)

もう諦めなよと、何度も言った。しかし彼は首を横に振って、決まってこう言う。
「いいえ、これだけは、どうしても完成させたいんです」
この研究だけは、どうしても。
馬鹿だと思った。病に侵された体に鞭を打ってその研究とやらに没頭する帝人君は、本当に馬鹿だ。日に日に衰える体力、痩せていくばかりの体。それでも彼は研究を止めない。
「馬鹿だよ、君は。本当に馬鹿だ」
「そうですね、科学者なんてみんな馬鹿ばっかりです」
自分の夢のためにしか生きられないんですから。そう笑った彼の顔を、俺は今でも覚えている。
それから少しして、帝人君は実に呆気なく俺の前から消えた。後に残されたのは泣く事を忘れた俺と、彼そっくりの姿形をした機械だけ。
(君は、俺に後を追うことすら許してくれないんだね)
彼が生涯をかけてまで完成させたかったもの。先の永くない彼が望んだ半永久的な命。彼と同じ姿形のアンドロイドを見捨てるなんて事、俺には出来なかった。






new | old








「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -