「お、ちょうどいいところに」
続のいるリビングには、見覚えの無い女性と男性がソファに腰掛けていた。
「誰、その子。彼女さん?」
髪の長い美人な女性が言った。
「ち、違います!」
「続、実は先ほど猫が…」
花村さんが手短に続に事情を話す。
その間に一応名乗っておくことにした。
「なまえです。さっきちょっと助けてもらいまして」
「へー、奇遇。俺たちもそこの神様に助けてもらったんだよね。」
「私は月宮。こっちは日向。よろしくね」
美男美女、とはまさにこの人たちのための言葉なのではないだろうか。
そんなことを考えていると、続は私たちに向き直った。
「で、話の途中だったが、俺はできるだけ動かずに手駒で遺産の回収を進めたいんだよ。」
「ちょっと、一般人も巻き込む気?この子可哀想よ」
「ああ、そいつもお前らと同じ混血だから。」
月宮は少し目を丸くする。
「ということで、お前ら一生俺の下僕として働け」
「!!」
「「「いやだ…」」」
素直な感想だった。
折角混血の呪いから解放されたのに、次は出会ったばかりの人の下僕!?
冗談じゃない。
「いやだじゃねーよ」
続は話を続ける。
「残念だが、神の力を入れる際、俺はお前らの体内に爆弾的なものを入れておいた。お前らはもう俺に従うしかないんだよ」
「っー…!」
日向の額に冷や汗がはしる。
「…なんてね!そんな仕掛けでもしておいたら面白かったのにね!ほんと残念あーつまんない」
「このタイミングでシャレになんない冗談やめてくんないかな…!」
二人してソファに項垂れる。
「ていうか、人がせっかく善意で助けてやったのに、「恩」の一つも感じてないのか?そこまで人としてクズなのか!?お前ら」
つまりは真心には真心で返して欲しい、ということである。
「あははっはははっ何それわかりづらすぎ!そうねえ…一回。一回で恩を全部返すくらいあなたのために動くの」
月宮が笑顔で交渉する。
続はしてやられた、という顔でしぶしぶ承諾した。
しかし、大事なところを忘れてもらっては困る。
「ねえ、あたし神の力もらってない」
「ああ…そうだったな。じゃあ今回の目的を達成できたらその呪い解いてやる」
こうして私たちは続に一回だけ手を貸すことに決めた。
交渉成立