新しい門出の日。アカデミー入学式。
やっとイタチ兄さんのような強くてかっこいい忍者に一歩近付ける。そんな期待を胸に、私は入学者の列に並び、壇上に代わる代わる出てくる偉い人の話を聞く。
幼馴染のサスケはどこに並んでいるのか、とそっと辺りを見渡すと、少し申し訳なさそうな、遠慮がちな顔をしたサスケを自分の左斜め後方に発見した。サスケはこちらには気付かない。
「それでは、これにて閉会の言葉といたします。みなさん、入学おめでとう!」
そんな言葉を聞き終えると、糸が切れたかのように辺りがザワザワと話しだす。かくいう私も先程見つけた幼馴染の元へと駆け寄った。
「サスケー!」
「なまえ!」
私に気付いたサスケは己の胸に飛び込む私を受け止める。そしてサスケから少し体を離した私がサスケの後ろにいたサスケのお父さんに「こんにちは!」と挨拶すると、サスケのお父さんは「こんにちは」と返してくれた。その返答ににこーっという笑顔で答えてから、私は未だ私の体を支えてくれているサスケに向き直る。
「サスケの家はお父さんが来てくれたんだね!」
私の言葉にサスケは一瞬表情を曇らせてからにこりと微笑んだ。
「…うん。なまえは?」
「私のお父さんとお母さん、今日どうしても外せない任務があるんだって!だから誰も来てないの…」
「じゃあ今から1人で帰るの…?」
「そうだよ!」
サスケがちらっとサスケのお父さんの顔を見る。すると今まで黙っていたサスケのお父さんが口を開いた。
「これからアカデミーの先生に挨拶に行くんだが一緒に行くか?その後家まで送っていこう」
思わぬ提案に私は目を見開き、バッとサスケの顔を見ると、サスケはにこっと笑った。
私とサスケはいわゆる幼なじみで、親同士の仲が良く、生まれた時から一緒にいると言っても過言ではない。
何をするにも一緒。サスケと離れることなど考えられない。逆もまた然り、だといいなと思う。
そんな時だった。私の人生を大きく揺るがす出来事が起こったのは。
「みょうじなまえさん、ですね?」
「えっ」
着いていったアカデミーの先生への挨拶が終わり、さて帰ろうかという時だった。
突然仮面を被った暗部の人に呼ばれ、私はびくりと跳ね上がった。
横でサスケもびっくりしている。
「ご両親のことで話があります。ついて来てくださいますようお願いしたく。」
初めてのことでどうしたらよいか分からずオロオロする私。すると、横にいたサスケのお父さんが暗部の人の前に立ち、私の代わりに口を開いた。
「俺も行こう、詳しく話を聞かせてくれ」
サスケのお父さんは暗部の人にそう言うと険しい顔で話を続ける。
その横で不安に駆られている私の手をそっと握ってきたのはサスケだった。
「オレも行くよ。」
「っ・・・うん」
そうして暗部の人につれられ着いた場所は病院だった。そして私はその時始めて、目の前で人が亡くなる瞬間を目の当たりにした。
…私の両親が、息を引き取ったのだ。
暗部の人によると、お父さんとお母さんがいた班は任務で敵に待ち伏せされ、全滅してしまったそうだ。
「お、父さん……お母さ、ん……」
涙が出ない。だってこれは夢でしょ?
夢だと思っていても、立っていることが出来ずに膝の力が抜け、崩れ落ちる。
握っていた手が離れる。しかし、サスケも私も何も考えられずにただただ唖然とするだけだった。
悲しみの入学式