書記に落ちた生徒会長。


「会長、会長」

 やや高めの柔らかい声で慣れない役職名を呼ばれて、先日生徒会長に就任したばかりの二年生、横宮忠士は生徒会への要望アンケート用紙をめくっていた手を止め、肉付きのいい顔を上げた。

「昨日の議事録、あとは会長のサインだけだからお願いします」
「ああ、悪い。昨日忘れて帰ったんだったな」

 天使の笑顔で書類を渡してきたのは、同じく生徒会書記に就任したばかりの一年生、夏目樹だ。
 今日は特に集まってする仕事もなく、定期テストが近いためか生徒会室には横宮と夏目の他に誰もいない。
 いつもこの天使のような愛くるしい顔の後輩に振り回されてばかりいる横宮は、やや警戒して書類を受け取ると、ペンを取って署名欄に名前を書き入れた。

「他に名前を書くところはあったか?」
「いえ、これで大丈夫です。……会長の字って、意外に小さくて可愛らしいですよね」
「見た目に似合わないクセ字で悪かったな」

 中学校に入学する前には既に大人顔負けの体格になっていて、地元の相撲部屋からスカウトが来たほどの巨漢、しかも素が武士を思わせる男らしい顔立ちであるにも関わらず、横宮の書く字はちんまりとした丸字で、友人達にもよくからかわれる。
 後輩にまでクセ字を指摘され、ふてくされたように呟くと、夏目は柔らかな声で笑って距離を縮めてきた。

「違いますよ。この大きな手でそういう繊細な字を書いちゃうギャップが……好きなんです」
「!」

 この天使の悪戯には、とことん弱い。

 好きなんです、と言いながら、自分より一回り小さな手でペンごと手を握られて、横宮は高校生男子の平均より遥かに大きな身体を硬直させた。

「うふふ、ぷにぷにして気持ちいいですね」
「デブをからかうな」
「会長の場合、ぷにぷにの下にちゃんと筋肉もついているじゃないですか」
「おい、もういい加減にこの手を……」

 表情の読みにくい顔はほとんど変化しないが、新米生徒会長は握られた手をどうしていいかも分からないほど動揺している。

 中高一貫の全寮制男子校という男だらけの環境で既に五年近く過ごしているとはいえ、横宮は今まで男相手に性的な興奮を覚えたことはなかったし、その趣味はないはずなのである。
 それが何故か、夏目にこうして触れられているだけで、身体の奥から自分でもどうすることもできない熱が湧き上がってきてしまうのだ。

 確かに夏目は綺麗な顔立ちをしていて、大きな目と長い睫毛が時折妙な色気を感じさせるが、決して女の子のように見えるという訳ではない。
 むしろ、友人達とふざけて笑い合っている様子は中学生気分の抜けないやんちゃな男子そのものだというのに。

「手も好きだけど、やっぱりお腹が一番好きかな」
「っ、こら、夏目!」

 書類の置かれた机を動かした夏目が、弾力のある膝の上に細い腰を降ろし、制服越しに腹の感触を確かめてきた時には、さすがに横宮も動揺の色を隠さずその手を制止しようとした。

「ああ、すごい……気持ちいい」
「……っ!」
「ねえ、会長、脱いで……?」

 横宮の形ばかりの制止を気にせず、夏目は巨大な身体を包み込んでいたブレザーを脱がせ、向かい合う体勢で膝に乗って身体を密着させ、ボリューム感のある腹の肉の感触を確かめるように揉んでくる。

 腹の肉なんて揉まれても何とも思わないはずなのに、耳元で囁く夏目の吐息混じりの声に反応して、横宮の股間には怪しい反応が生まれ始めていた。

「おい、な……つめ」
「会長も、気持ちいいですか」

 そんな訳あるか、と言うことはできなかった。
 膝の上に愛おしい体重を感じ、いつの間にか、横宮はその細い腰に手を回して夏目の身体を抱き寄せてしまっていたのだ。

「あ、勃ってる……」
「お前がいやらしい触り方をするからだ」
「お腹よりもっと気持ちいいトコロ、触ってあげますね」

 そう言ってベルトに手をかけ、もどかしい手つきで横宮の制服の前を寛げていく夏目を止めることは、もう出来なかった。
 相手が男だとか、ここが生徒会室だとか、そんなことを考える余裕もない。
 高校生男子の健全な雄の欲求は、既に理性の限界を超えて爆発寸前のところにまで来ていた。

「わ、大きい、ですね」

 下着を下げられると同時にぶるんっと勢いよく飛び出してきた横宮のペニスを目にして、夏目が頬を赤らめた瞬間、腹につきそうな程に反り返って逞しく勃起したソレは更に膨張して、先端の小さな穴にぷっくりと蜜を浮かべた。

「すごいな、俺のと全然違う」

 全寮制の男子校で部屋のシャワーを使うとき以外は風呂も共同という生活を続けていれば、他人のモノを見ることくらい珍しくも何ともないだろうが、勃起した状態を間近に見る機会はほとんどないだろう。
 大きな目を純粋な好奇心に輝かせた夏目が細い指先でツン、と亀頭に触れてきて、横宮は危うくそれだけの刺激で大暴発を起こしてしまいそうになった。

「お前も脱げ」
「えっ、俺は……」
「散々人を煽っておいて、この状況で逃げられると思うか?」
「あ、会長……っ、やッ」

 逃げようとする腰を強引に抱き寄せ、先ほど自分がされたのと同じようにベルトを外して制服を脱がせながら、一応夏目を安心させるために、これから自分が何をするつもりなのかを告げておく。

「突っ込んだりはしない、抜き合いだけだ」
「ほ……んと?」
「童貞の俺がいきなりそんな高度なコトに挑戦できる訳がないだろうが」

 下着のゴムをずらし、自分のモノよりも一回り小ぶりなペニスを取り出してそう言うと、可愛い後輩は天使の顔で笑って思い切り抱きついてきた。

「俺……ほんとはこういうの、初めてで……会長も童貞でよかった……!」
「中高一貫の全寮制男子校なんて、ほとんどみんな童貞だろ」

 そうでなくても、ぽっちゃり体形を超えて太いこの身体では女の子にモテるとも思えないし、男同士だったとしても夏目のような可愛い後輩が自分にそういった意味で好意をもってくれていることが、横宮には奇跡のように思えた。

「ね、会長、いっしょに擦っていい?」
「ああ、イク時は言えよ」
「んっ……あ、あんッ」

 夏目が腰を揺らすと、肉付きのいい太腿がクッションのように弾力をもって柔らかい尻を跳ね返す。
 硬く育った二本のペニスを合わせて握り、扱くペースに合わせて腰を揺すってやると、夏目は細い身体をのけぞらせて甘い声で喘いだ。

「あ……気持ちい、い、やあぁッ」
「今の顔、すごくエロいぞ、夏目」
「やっ、見ちゃ駄目……あぁあっ!」
「チンポの先から汁も溢れっぱなしだし」
「かいちょ、いじわる、……あ、んッ」

 下から突き上げるように腰を揺すった後で、弾力のある横宮の腹に自分の腹がぶつかる感触が堪らなく気持ちいいらしい。
 か細い声で泣きながらも、タプタプと腹が当たる度に夏目のペニスからはいやらしい蜜が零れて、血管を浮かび上がらせたソレは限界間近の小さな痙攣を繰り返していた。

「は、あッ! かいちょう、……もう、イッても、いい?」
「ああ、俺も限界だ」
「あ、あっ、あッ……激し……やあ、あんっ!」

 敏感な雄茎を擦る速度を上げ、腰を激しく揺すってやる。

「あ、もう、ダメ……あ、やぁ、イクっ、イッちゃう……!」
「夏目……!」
「や、あ……あぁあッ、ん、ああぁッ!」

 細い身体をぷるぷると震わせて。
 夏目は真っ赤に充血して張り詰めたペニスを横宮の手の中で弾けさせ、それと同時に横宮も濃い白濁液を放って夏目の白い肌を汚したのだった。

「会長……」
「腹を揉むな」

 お互いに脱力して、呼吸を整えている間にも、夏目の手は横宮の腹や胸を探って揉み続ける。
 今まで誰かにその肉付きのいい身体を触られても何とも思わなかったのに、この可愛い後輩の手で揉まれるとじわじわと雄の欲求が湧き上がってきて、さすがに二回戦は思い止まった横宮は、夏目の手を取って悪戯のお仕置きをするようにその細い指先を軽く甘噛みした。

「俺が誰にでもこんなことする奴だって、思わないで下さいね」
「誰もそんなことは思っていない」
「本当は俺……中等部の頃から、先輩ひと筋でしたから」
「デブ専ってやつか」
「違いますってば! すごくお人好しで、今回も別に生徒会長なんてなりたくないのに周りに頼まれて結局立候補しちゃったりとか、そういう優しいトコロ、大好きなんです」

 もちろんこのお腹も大好きですけどね、と言ってもう一度腹の肉を揉まれて。
 膝の上に心地よい重みを感じながら、横宮は可愛い後輩の身体を強く抱きしめた。

 結局、天使の笑顔で実は小悪魔な後輩に簡単に落とされてしまっただけのような気がするが、それも悪くない。

 そう思ってしまう時点で、既にどうしようもないくらいこの可愛い書記に骨抜きにされていることには、まだ気付いていない生徒会長だった。


end.

(2012.9.9)


 


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