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「タチ専門って、……え、ええっ!?」

 思わず声も、デカくなる。

 小杉に下手くそ扱いされないため必死に学習した俺のネット知識によると、タチというのは行為の時の男役だったはず。
 そういえば、以前冗談混じりに俺のケツを狙うようなことを言われた気もするが、本気だとは思わなくて聞き流していた。

 目の前にいる『社内イチの美人』は、身体の造りも顔の輪郭ももちろん男のものだが。
 比較対象が俺で、しかもベッドの上でどちらかがもう一方を押し倒す場面を想像した時に、小杉が俺を……というのは絵的に違和感が有り過ぎた。

 イヤ、同じ男同士だし。小杉が俺に挿れるってのも、有りといえば有りなのかもしれないけど。

「でもお前、ガタイのイイ奴が好みだって……」

 そういうのは大抵そっちの世界では男役だろうと思って、それですっかり誤解してしまっていたのだ。

「屈強なバリタチを組み敷いて啼かせるのが好きなんだ」
「いい性格だな!」

 前から知ってはいたが、コイツは爽やかな笑顔の悪魔だ。
 つまり、あんなに切ない健気っぽい顔で安藤課長を見つめながら、実はそのケツを狙っていたということか。

「もしかして、俺のケツを狙っていたり、するのか」

 恐る恐る尋ねると、小杉の目がスッと細められたのが見えた。

 やっぱり、俺のケツは危険な状況に曝されているのか。
 顔に似合わず結構立派な小杉のアレをあんなトコロに、と考えただけで、ケツ筋がキュッと締まる気がした。

 ――出来れば俺は、小杉を抱きたい。

 自分と同じ男の身体なのに、しっとり柔らかい肌も、感度のいい小さな乳首も、顔に似合わず立派な男の器官も、堪らなく俺を煽る。
 何より、普段は“仕事のデキる係長”の顔の下に隠れている、生意気だけど可愛い素顔に近付けることが嬉しい。

 というか、元々ゲイでもないのに、男にケツを掘られるという気にはちょっとなれないし。
 でも、小杉を女扱いしたいとは思っていないし、対等に付き合うために必要なのであれば……。

「ノンケのケツは掘らない主義だと言っただろう」

 真剣に悩む俺の耳元で、柔らかなテノールの笑い声を響かせて。机から降りた小杉は、俺の足の間に膝を入れ、ネクタイで遊んでいた手をゆっくり下の方へと移動させていった。

「小杉?」

 いくら他に人がいないとはいっても、まだ陽の高いうちから職場の会議室で、この怪しい雰囲気は何だ。

「おい! 止めろ」

 細い手がベルトを外し始めた段階でさすがにヤバいと思って止めに入ったが、静止の手を上手くいなして、手際のいい同期はあっという間に俺のスラックスの前を寛げてしまう。

「何も用意していないなら、現地調達させてもらおうか」
「現地調達って何だ」
「チョコレート・ミルク」
「チョコレートミルク!?」

 まさか……と思った時には、もう遅かった。

 椅子から膝を離して、床に座り込み。
 俺の足の間に顔を入れてきた小杉は、ボクサーパンツを中途半端に引き降ろして、気付いた時にはもう、中から俺のモノを取り出していた。



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