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 でも。よく考えてみると、こういうのは数の問題じゃないし。

 色々な種類のチョコが食えなくて残念だとか、男の見栄的な問題はあっても、今年に限って言えば、仕事の付き合いで大量の義理チョコを貰うより、一人から本命を渡された方が嬉しいかもしれない。

「……」
「何だ、歯が痛むのか」
「違う!」

 目の前の机に腰掛けて俺を見下ろす同期の顔をチラッと見上げると、やや長めの睫毛がゆっくり上下に動くのが見えた。



 クリスマスイブの一件以来、小杉と俺の関係は今まで以上に微妙な状態をさ迷い続けていた。

 食事に誘えば断られることはないし、その後、俺の家に寄って“大人の時間”を過ごすことも拒まれたりはしない。
 ただ、お互いのモノを扱いて抜き合うより先の段階に進む気は小杉にはないらしく。
 出すモノを出してシャワーを浴びた後は何故か小杉がベッドを占領して、俺はソファーで寝かされるという悲しい夜をもう何度も味わっていた。

 行為はいつも俺の家で、出勤準備のために翌朝早くアイツを家に送るのがパターン化しているというか。
 俺は小杉の家に上げてもらったこともないのだ。

 この関係は一体何なんだと訊きたい。

 きっかけは多少強引だったかもしれないけど、俺としては遊びや興味本位で男の身体に手を出したワケじゃなく、今の状況は“付き合っている”といえる仲だと思っているのに。
 小杉の態度からはそんな甘さの欠片も感じられないのが、気になって仕方なかった。

 もしかして俺が一方的に変な勘違いをしているだけで、小杉にとっては暇つぶしのセフレ程度の軽い関係でしかなかったとしたら、ショックで立ち直れないかもしれない。
 問い詰めてみて、『実はまだ安藤課長のことを引きずっている』なんて言われたら……と思うと、結局は何も言えず、今の生殺し状態に耐えるしかないヘタレな自分が心底情けなかった。



「なあ、小杉」
「ん」

 バレンタインデーというのは、この微妙な関係を終わらせるチャンスかもしれない。
 どちらにしろ、こんな曖昧な状況が続くのは俺にとっても小杉にとっても良くないことなんだ。

「お前は、何か俺に用意してくれてたりしねえの?」



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