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一汗かいて出すモノを出して。多分俺も梶木も、酔いは完全に醒めている。
何となく勢いでここまでヤッてしまった気まずい空気をどうすればいいのか。
耳たぶを甘噛みされて汗で濡れた髪を撫でられながら、俺の頭はこの状況を何とか切り抜ける方法を必死で考え続けていた。
「小杉……」
「ん」
腰がとろけるような、甘い声。
こんなに甘い雰囲気を醸し出されて、明日から会社でどんな顔をしてコイツと話せばいいんだ。絶対、挙動不審になって周りに怪しまれてしまう。
「俺、もう一回イケそう」
「何?」
まとまらない思考を宇宙の彼方に吹き飛ばしたのは、次の瞬間梶木のとった恐ろしい行動だった。
「いッ……!? あ、あぁあっ!」
突然足の間に手を差し込まれて、何のつもりだと訊く暇もなく、ありえない場所に焼け付くような痛みが走る。
「っ、はぁッ!」
痛みという言葉では済ますことの出来ない、衝撃的な激痛。
「あれ? だ、大丈夫か」
「お、前……っ、何を……っ」
「もしかして、痛い?」
「早く、指を……抜け!」
信じられない。
このノンケの大馬鹿野郎は、何の予告も準備もなく、突然俺の後ろのその部分に指を突き刺してきたのだった。
どんな経験豊富なバリタチ相手にも、後ろを許したことなんてなかったのに。梶木の指にバックバージンを……。
下準備だとか行為の流れだとか、仲間うちの“お約束”を知らない怖いモノ知らずのノンケほどタチの悪い物はないというか。
いくら男相手の経験がないからといって、いきなり後ろに指を入れてはいけないくらいの基礎知識は持っていてもいいんじゃないだろうか。
「んあッ、あ!」
突っ込んできた時と同じように思い切り指を引き抜かれて、あまりの激痛に目から涙が零れ落ちた。
もし、今まで俺が喰ってきた男達にも同じ痛みを味わわせていたのだとすると、心の底からそれを反省したい。
入念に濡らして解して、何度も前立腺を責めてイク感覚を覚えさせてから挿入しているから、こんなには辛くないと思うけど。
「悪い、挿れてもいいのかと思って」
「濡らしもしないでいきなり突っ込むな馬鹿! 下手くそ!」
「泣くほど痛かったのか」
「お前も同じ目にあってみろ!」
今からでもケツをガン掘りしてやろうかと涙目で睨んだ男の顔には、まだ欲情が燻っていて、発情したオス独特の色気に危うく食指が動きそうになってしまった。
「その、悪気はなかったっつーか……ヤリたい一心でつい」
「もう寝る」
「いきなりかよ!」
元々は酔った勢いだったとしても、同情ではなく梶木が本気で俺に対してその気になったのかと思うと、何だか胸の奥が妙にくすぐったくて。こんな感情は初めてで。
「なあ、ケツ、大丈夫か」
「キスから勉強して出直せ、馬鹿」
「さっきまで感じてたくせに!」
ひたすら謝る梶木をベッドから追い出して、適当に後始末をさせた俺は。
実はさっきのアレがバック初体験未遂だという事は告げずに、ヒリヒリと痛む尻を庇いながら梶木くさいベッドで眠りについたのだった。
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■TEA ROOM■