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油断した隙を狙って身体を回転させ、今まで俺の上にのっていた逞しい肉体を逆に組み敷く。
乾いた唇に自分の唇を重ねて、一旦舌先で味わうように下唇をなぞってから、固まったままの梶木の口の中に舌を滑り込ませた。
角度を変えて更に深く中を探ると、硬直していた腕が動いて肩を力いっぱい掴んでくる。
まだ、解放してやるものか。
キスくらいなら味見のうちにも入らないだろう。先に仕掛けてきたのは梶木の方なんだから、もう少し遊んで大人のテクを教えてやる。
……と思っていたら。
上下逆転したはずの体勢を再び元に戻され、それまで大人しかった煙草の匂いの舌が反撃を開始してきた。
「んっ……!」
いつもなら、一度組み敷いた男に上を譲ったりするような失態はしないのに。
まさか梶木がこんな反応を返してくるとは思っていなかったせいか、簡単にベッドの上に押さえ付けられて、噛み付くような乱暴なキスの洗礼を受ける。
下手だと言われたことがそんなに悔しかったんだろうか。
さっきの淡泊なものとは違い、今度はねっとり舌を絡めて吸い上げて。
「っ、は」
「んん……ッ!」
お互いに負けるまいと変な闘争心を燃やして、静かな争いに没頭する。
いつの間にか、腰に当たる梶木のソレは、引き返すことの出来ない状態にまで硬度と存在感を増していた。
「……下手じゃ、ねえだろ」
「上手くはないけどな」
「まだ言うか!」
それより、この当たっているモノをどうする気だ。
ゆっくり視線を下にやると、腹の間から、下着に納まらなくなった亀頭がボクサーパンツのゴムを押し上げて顔を出しているのが見えた。こんないいモノまで見せてもらって、何だか物凄いサービスだ。
さすがにこれ以上はノンケをからかうにはやり過ぎだという気がして、どう切り上げたものかと考えている俺に、考えなしの同期は予想外の行動に出てきた。
「おい、何だこの手は」
何故か、梶木の手がパジャマのボタンを一つずつ手早く外していく。
「邪魔だから脱げよ」
「梶木……?」
「お前だって、勃ってんだろ」
「な……っ!」
何を考えているんだ、コイツは。
「やめろ、そこまでするつもりはない」
“酔った勢い”で済まされるのは、どう考えてもキスまでだろう。勃ってしまったモノは仕方ないにしても、トイレか風呂場で処理すればいいだけの話だ。
「俺はそこまでするつもりだ」
「男の身体だぞ!? 抜ける訳が……」
途中まで出かけた言葉は、真剣な瞳に飲み込まれてしまった。
「出来るか出来ねえか、やってみれば分かるだろ」
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■TEA ROOM■