第1話




深呼吸して、インターホンを押す。

チャイムの音がしたあと、
数秒おいて、玄関のドアが開いた。



「おう、遅かったな。」


「ちょっと、道に迷っちゃって」


「迷うような立地じゃねーだろ」



方向音痴か、と憎まれ口を叩くのは、
幼馴染のグリムジョー。

高校を卒業して、お互い実家を出てからも
連絡は取り合っていたが、
こうして直接会うのは、久しぶり。



一人暮らしをする彼の家に
お邪魔したのには、ある訳がある。





それは私が、ここ1ヶ月ほど、
ストーカーの被害に遭っていたことが原因。


といっても、痴漢とか盗撮とかっていう
実際の被害はないんだけど、

通勤時間帯をずらしても
いつも一緒になる人がいるんだよね、
なんて話を親にしたら、
それはストーカーだ!
って言い出して聞かなくて。



それでお母さんが勝手に、
グリムジョーの親御さんに相談をして

"私とグリムジョーの生活圏が近いから"
という理由でしばらくの間、
彼の家に避難、兼用心棒という形で
お世話になることになったのだ。





「ごめんね、うちのお母さんのせいで
グリムジョーに迷惑かけちゃって。
ストーカーとかじゃなくて、
単なる偶然だとは思うんだけどね…」


「気にすんな、世の中にゃ一定数
モノ好きがいるっていうだろ。」


「それは私のことをフォローしてるのか
貶してるのかどっちなんだろうね?」




そりゃフォローしてるつもりだぜ?なんて
軽口を叩きながら、
挨拶を済ませて部屋に上がると、
模様替えの途中なのか、
あれこれ家具を移動した形跡があった。


聞けば、12畳ある1部屋が
部屋の真ん中にある仕切りで
2部屋の仕様に分けられる仕様らしく、
今まで1部屋として使っていた場所を分け
わざわざ私の部屋として
用意してくれていたらしい。




「今の時期、仕事が立て込んでてな。
まだ片付いてねえところもあるが
部屋にあるのは基本、好きに使っていい」


「忙しいのに、ごめんね。
私にも手伝えることあるかな」


「まあお前が荷物片付けてる間には終わるだろ」


「そうだ、荷物といえば…
グリムジョーに渡してって
お母さんに持たされたんだった。」




手に持ってる大荷物のうちの一つを漁り、
多分、お菓子が入ってるんだと思う、
と伝えて手提げを渡す。



おう、と返事をして受け取り、
軽く中を覗いて、テーブルの上に置いた。

と思ったら、少し怪訝な顔をして、
再度手提げの中を確認したグリムジョー。



お母さん、そんな変なものでも入れたかな?

私も気になって覗こうとしたら、
これはお前からか?といって、
見覚えのない衝撃的なモノが出てきて、愕然とした。





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