君との未来、君への誓い・後編



そして、前日。
ステージに出るグループは、照明や立ち位置、時間の調節のためにリハーサルを行うことになっていた。
松山と美子も、そのリハーサルに出るために屋台の準備を抜け出し、ようやく出来上がった衣装に着替えていた。

「松山君。」

用意されたタキシードに着替えて待っていたところ、手芸部部長の相沢に呼ばれた。

「ああ、そっちはどうだ?」
「もうちょっと待ってね。でも・・・さすが美男美女のカップルだわ・・・」

そう言いながら、相沢は松山の全身を何度も見ていた。

「お、おい・・・」
「ジャージとかも似合ってたけど、・・・うん!これだといつもとのギャップもあって素敵ね!」
「・・・」

思い切り褒められて、なんだか居場所がない感じの松山。どうしようか・・・と視線を彷徨わせていると、また相沢が話しかけてきた。

「・・・藤沢さんも準備が出来てたわよ。」
「・・・本当か?」
「ええ、今回はヘアアレンジやメイクも得意な子に任せていあるから・・・すっごい美人になってるわよ?」

「ま、元がいいからなんでしょうけどね」と相沢は続けた。松山もその言葉を聞いて、ドキリとした。
美子のウェディング姿・・・想像しただけで、顔が熱くなる。
きっと綺麗なんだろな・・・とぼんやり考えていた。

「そうそう、それを見せるためにこっちにきたんだった!」

そういうと、相沢は手招きをして松山を別の教室へ誘導していった。「この部屋よ」と相沢に教えられ、段々と自分の心臓の音が早くなっているのが聞こえた。ゆっくりとノックをすると、中から「どうぞ」という美子の澄んだ声が聞こえてきた。
松山はドアを開けると、目の前の光景に声を失った。

真っ白で純白の衣装に包まれて、振り返った顔は美子そのもので。
でも、いつもよりも清らかで輝いて見えて・・・

美子も振り返って目を大きく見開いていた。

「・・・松山・・・君?」
「・・・お、おお・・・!」

情けない声を出しながら、後ろ手で教室のドアを閉める。

そして、お互いがお互いを見つめたまま、固まっていた。

「・・・凄くかっこいい」

そう言って、美子は少し頬を赤らめてはにかむ。

「かっこいいのは、前から知ってたけど。」
「・・・っ」

美子を見つめていた松山は、顔を赤くしてそっぽ向く。
そう言われて嬉し恥ずかしいのと、美子のその姿に見惚れすぎて、松山は美子になんて答えたらいいかわからなくなっていた。

「・・・松山君?」
「・・・!」

松山が気がついた時は、美子が近づいて顔を覗き込んでいた。

「どうしたの?具合・・・悪い?」

そう思って本当に心配した美子は、そっと手を松山の額に伸ばした。その瞬間、松山はその美子の手を払ってしまった。

「・・・っ!」
「・・・あ!わりぃ!違うんだ、その・・・っ」
「・・・ごめん、嫌・・・だったよね?」
「だから違うって・・・っ」

そう言って美子の顔を見ると、笑ってはいたが少し沈んだような表情だった。そんな顔を見てしまった松山は「・・・あー、もう知らねえ!」と言いながら急に美子の体を自分の方に引き寄せ、抱きしめた。

「・・・きゃ!?」

美子は松山に抵抗する暇もなく、簡単に抱きすくめられてしまう。そのまま、どちらもしばらく言葉を発することなく、だた時間が過ぎていった。

「・・・誰にも」
「・・・え?」

松山が沈黙を破り、言葉を発した。美子からは松山の表情は見えなかったので、松山が何を言おうとしているのか見当がつかなかった。

「・・・誰にも、見せたくねえ。」
「・・・!」
「このまま・・・このまま、掻っ攫いてぇ。」

そう言って、きゅっと抱きしめる力を強めた。

普段こんな風な言葉が松山から出てくることはあまりない。だからこそ、偽りのない、松山の本心だと言うことが美子にはわかった。理解できたからこそ・・・美子は胸に甘く切ない痛みが走るのを感じた。

「・・・やばい、先に謝っとく」
「・・・え?」

そう言われたと同時に、抱きしめられた力が少し弱まる。美子が不思議に思った瞬間、急に顎を掴まれ上を向かせられた。

「・・・んっ!」

同時に松山の唇が重なる。驚いていたため、薄く開いていた口を貪るように松山は口付けをした。
いつもはお互い恥ずかしがって、軽く触れるくらいのキスで止まることが多かったのだが・・・松山のそれは甘く激しく、一気に美子の意識は溶けてきた。
時々唇に吸いつかれ、その度に美子の意識も松山に全て吸い込まれそうになる。

「・・・っぁ・・・は・・・っ」
「・・・っ、美子・・・」

ようやく唇が離れたかと思うと、松山はそっと美子の頬を撫でた。
美子は虚ろげな意識の中、松山の瞳を見つめた。松山の瞳は美子を捉えていて、その熱い瞳から目がそらせなくなる。
松山のその手は段々と首筋をなぞり・・・その手付きにぞくりと美子の体の奥は熱くなる。

「・・・松・・山、君・・・」

美子が松山の名前を呼ぶと、ハッと松山は目を見開いた。そのまま慌てて美子から離れようとするが、美子は体から力が抜けていたためにふらついた。慌てて松山はその体を支える。

「・・・っ、すまねぇ!!大丈夫か・・?」
「・・・ん、大丈夫だよ。」

心配そうに美子の顔を覗き込むと、美子はにこりと笑って答えた。その顔を見て松山は顔を顰めた。

「わりぃ・・・やっぱり抑えられなかった・・・」
「・・・?」
「・・・すっごく綺麗で・・・そのままめちゃくちゃにしてしまいたいって思っちまった・・・」

そういうと松山は目を逸した。

「・・・ごめんな。お前を大事にしたいって思ってるのに・・・」
「・・・嬉しかったよ?」

その言葉に驚いた松山は美子の顔を見た。美子はうっすらと頬を赤らめて松山に微笑んでいた。

「・・・だって、松山君だから・・・松山君にそう思ってもらえて、嬉しかった。」
「・・・美子・・・」

その言葉に呆然と美子の顔を見ていた。そしてくしゃっと恥ずかしそうに笑い、もう一度その体をそっと抱きしめた。

「・・・ありがとな。」

***

そして二人のモデルの話はリハーサル、当日共に成功に終わった。それだけでは留まらず、二人のファンはより一層増えたのである。

それから数日後、部活後の自主連を終えた松山が部室へと入ってきた。それを待っていた美子が、何かを眺めていた。

「・・・あ、お疲れ様。」
「何見てたんだ?」
「この前の文化祭の写真よ。町子が撮っててくれたの。」

「ほら」と言って松山に写真を見せると、松山はまた恥ずかし層に顔を顰めた。

「・・・あいつら、見てたのかよ。」
「ふふ・・・っ、でも嬉しかったな、ウェディングドレスが着れて。」

その言葉に、松山は美子を見つめる。そして嬉しそうな彼女をみてクスリと笑い、後ろから抱きしめた。

「・・・っ、松山君?」
「・・・また、着せてやるさ。」
「え、それってどういう・・・」
「その時は・・・―――」

その後に続く言葉は美子の耳元で囁かれた。それを聞いた美子が顔を赤くしながらそっと頷くと、松山は嬉しそうに抱きしめる力を強くした。






―――――――――――――――――――
7654キリ番リクエスト品です!
『文化祭ネタで、手芸部とかの発表で美子ちゃんのウェディングドレス姿&お相手役のモデルをお願いされる二人』という内容でした!

途中危なくR18になるところだった(笑)
でも大人になってから「あの時約束したよな?」と言って初夜で押し倒すのもありかと(笑)
最初の方書いてて結構楽しかったです〜♪

キャラの紹介しないとですね!
山瀬君、石井君、長谷川君・・・ふらの高校サッカー部員(アプリより)
相沢部長、菜々子さん・・・完全今回のみのオリキャラ、手芸部部員

リクエストしてくれた通りすがりのモブ様へv
1ヶ月以上経ってしまった気がします!!大変即なってしまい、本当に申し訳ありませんでした!!
リクエストして下さってありがとうございましたー!!v
ぜひ受け取ってくださいvv(`・ω・´)



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