君との未来、君への誓い・前編



年に1度、生徒たちが自分たちで考え、クラス単位や部活の仲間たちと共に学校を盛り立てる「文化祭」という行事がある。
学校によっては春や秋に行うところが有り・・・ここ、ふらの高校も例外ではない。

「・・・で?今年はうちの部活は何やるんだよ?」

練習後、サッカー部の部室で着替えを終えた部員たちが集まっていた。
松山もそのひとり。
今年3年生で且つ、キャプテンである松山は文化祭の会議にも参加し、限られた予算と時間の中で何を出来るか、3年の部員やマネージャー達と考えていた。

「・・・準備ったって、練習もあるからなぁ・・・」
「なによ、準備なら私たちに任せなさい!」

声のした方を向くと、町田が胸を貼って言い切っていた。

「・・・いや、藤沢なら任せられるけど、お前は・・・」
「・・・なによ、小田。文句があるなら言ってみなさいよ?」
「だって、お前不器用だしドジじゃねえか。」
「ちょっと!それどういうこと!?」

小田と町田の痴話喧嘩が始まりそうで、松山は顔を顰めた。すると美子は苦笑して「先に話進めちゃいましょ。」と松山に助け舟をだす。それに「おお」と返事をした松山がもう一度予算が書かれた紙を見つめる。

「・・・この予算なら、じゃがバター屋なんてどうだ?」

ひらりと松山が見ていた紙を奪って、石井は言った。

「じゃがバター?」
「ああ、家の実家でじゃがいも大量に作ってるし、バターとか乳製品は長谷川んちで作ってるだろ?」
「ああ、親にいえば恵んでもらえるかもな。」
「それに・・・そうした方が予算も余るだろ?そしたら・・・」

そこで石井はにやりと笑って松山を見た。松山も石井の意図に気がつき、笑う。

「・・・選手権に向けての予算に変わるってことか。さすが石井、そういう頭だけは働くよな」
「そんな風に言うなよ・・・部活思いのいいやつだろ?キャプテン。」
「ああ、お前は本当にいいやつだよ。」

そう言うと松山は立ち上がった。

「じゃあ今回のサッカー部はじゃがバターの屋台で決定な。生徒会に提出してくる。」

部員たちも賛成の声を上げた。キョトンとしていたのは、話についていっていない小田と町田だけであった。

***

文化祭まであと2週間。練習をしながら、そっちの準備も進めなくてはならない。
松山と美子は結構遅くまで残って、いろいろと文化祭の準備をしていた。

「・・・だから、このスケジュールだと町田が午後に入って・・・」
「そうね、山瀬君はこの時間でどうかしら?」
「ああ、いいんじゃね・・・」

その時、大きな音を立てて部室の扉が開いた。二人は驚いてしてその扉の方向を見つめた。
そこには・・・

「・・・はぁ〜・・・よかったぁ!まだいましたよ!部長!!」
「ちょ・・・ちょっと、あんた早すぎ・・・はぁ、はぁ・・・で、でも、二人を捕獲できたみたいね・・・」

二人の女子生徒が現れた。一方は普通に、もう一方はここまで思いっきり走ってきたのか、息をだいぶ切らしていた。

「・・・」
「・・・」

突然のできごとに、松山と美子は固まったままだった。それに気がついた女子生徒のひとりが声をかけた。

「・・・あ!驚かせてごめんなさい!!おふたりにお願いがあったんです!!」
「・・・え?あ、ああ・・・」
「実は!今度の文化祭に出て欲しいんです!!」
「・・・は?」
「是非!!お願いします!!」

そう言うと女子生徒は二人に迫り、部室の机を勢いよく叩いた。
唖然とする松山と美子。そして松山はようやくぽつりと一言告げた。

「・・・いや、俺達・・・普通に文化祭参加する・・・けど・・・?」
「違うんです!!そう言う意味ではなくて!!」

松山の言葉に女子生徒はひとり白熱していた。と、そこで美子がもうひとりの女子生徒に声をかけた。

「・・・あれ?あなたは確か、手芸部の部長の・・・相沢さん?」
「・・・あ、うん。ごめんね藤沢さん、こんな遅くに突然おじゃましちゃって・・・」
「いえ、大丈夫よ。でもどうしたの?」
「実はね・・・今度の文化祭のことで藤沢さんと松山くんにお願いがあって・・・」
「お願い?」

首をかしげながら美子が聞くと・・・

「実はね、藤沢さんと松山くんに、私が作るウェディングドレスのモデルをやってほしいの。」
「・・・え?」
「藤沢さんにイメージがぴったりで・・・で、相手役と言ったらやっぱり松山君しか考えられなかったから、二人とも校内で一番有名なカップルだし・・・だから、どうしても二人にって思って・・・」
「・・・ええ!?」

美子が急に声を上げて驚いたところで、松山と女子生徒は気がついて美子たちをみた。

「美子?どうした?」

そういって松山が聞くと、美子は松山の方を向いた。とたんに美子の顔が赤くなっていく。

「・・・美子?」

もう一度松山は美子を呼ぶが、今度は頬に両手を当てて下を向いてしまった。

(・・・私と・・・松山君が・・・!?)

狼狽えている美子を見て、部長の相沢はもう一度同じ説明を松山にした。すると松山は・・・

「・・・はぁ!?ちょ、ちょちょちょっと待て!!?」

急にガタっと音をたてて椅子から立ち上がった。

「・・・俺と美子が!?」
「・・・お願い!どうしてもイメージがピッタリなの!!」
「・・・だけど・・・」

そう言われても、松山も美子も頭が混乱するばかりだった。

モデル・・・その話だけでも結構二人にとってみたら大きな話なのに、テーマが「ウェディング」となると・・・
もちろんお互いに、この人と結婚できたら幸せだろうな・・・と口を出さずとも思っていたが、いざ実際に形となるというと・・・やはり考えるものがあった。

「・・・私からもお願いします!!」

その言葉に、もうひとりの女子生徒を見た。

「・・・部長にとっては、最後の文化祭なんです。相沢先輩は凄く腕もいいし、できれば藤沢先輩をモデルに最高の演出で皆に相沢先輩のデザインを見て欲しいんです。だから・・・!!」
「・・・菜々子ちゃん・・・」

菜々子と呼ばれた生徒は、必死に松山と美子に懇願していた。その表情を見て、二人は顔を見合わせた。

「・・・松山君、いいでしょ?」
「・・・ああ、しょうがねえな。」

そう言うと、二人は笑いあった。

「・・・じゃあ!!」
「ええ、こんな私でいいのかわからないけど・・・お願いします。」

そう言って美子が二人に向かって笑顔を向けると、二人は嬉しそうに頷いた。

***

その話は、次の日サッカー部の中にも広まっていた。

「ついにお前ら結婚かよ!?」
「松山!お前確かもう18になったよな!?よし、小田!婚姻届もってこい!!」
「なんで俺なんだよ!?」

その話題で賑わいすぎて、練習どころではなくなっていた。

「・・・てめえら、いいかげんにしろよ・・・?」

珍しく笑いながら静かに怒る松山に、皆「ひっ!?」と息を飲んでグランドに散らばっていった。

「・・・たく。」
「・・・はい、松山君。」
「・・・ん?ああ、タオルサンキュ。」

ちょうどいいタイミングで美子が松山にタオルを持ってきた。それを受け取り、汗を拭いていると、また美子が話しかけてきた。

「・・・あのね、相沢さんから伝言なんだけど、今日寸法測りたいから、部活終わったら手芸部の教室に来てくれないかって。」
「そっか、わかった。」

「お前も行くんだろ?」と美子を見て聞くと、こくりと頷いた。

その話題が広まったこと、そしてサッカー部員の協力があって、二人はなんとかモデルの準備と屋台の準備を両立しながら文化祭へと向かうことができた。




―――――――――――――――――――
後編に続きます。
後編はR15なので、観覧にご注意ください。







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