「いい加減、彼女がほしいなあ……女の子に飢えてきた……」

「彼女、とは?」

「女の子の恋人のことだよ。あー、男だらけのむっさい審神者なんて辞めて提督に転職しようかな」

「……ッ!?!?」

「可愛い女の子に癒されたいよー」

「あ、主! 俺が癒してみせますよ!」

「え? いや長谷部は男じゃん」

「…………ッ」

「そんな顔したって駄目だからな! おれは! 女の子が! 好きなんだ!!!!!」



***



 そういう理由なんだ、と顔を青くして語る長谷部くんが長谷部くんの顔をした別のナニカにしか見えない。彼から取り上げた刀を握る手に思わず力がこもる。

「そ、そんな理由で切り落とそうとしてたの……?」

「付いてたら主を癒せないんだぞ!?」

 ええ、知らないよそんなこと。どうしてこう彼は主に関しては歪みないというか、間違った方向にまっすぐなのだろう。彼のやろうとした行為が頭に浮かんで、心臓がヒュッと冷たくなった。正気の沙汰じゃない。そもそも、それを切り落としたからって女の子になれるかと言われたらまた別の問題なのではないだろうか。そこについては彼の頭にはないのだろうか。長谷部くんはもう少し頭が良いと思っていたんだけどな。

「本丸で唯一の女になることができたら主の寵愛を独り占めできるのに……」

「長谷部くんの「主大好き」はそういう意味だったの?」

「他になにがある!?」

そうか、長谷部くんはそういう意味で主が好きだったのか。ということは、主に対してのあの従順さは彼なりのアピールだったのだろうか。僕らと主への態度の差が露骨だなあなんて思っていたけれど、そういう意味が含まれていると分かったら途端に長谷部くんが可愛く見えてきた。気がする。

「あ、でも短刀の乱ちゃんとか左文字の宗三さんあたりは主に可愛がられているよね? そっちを目指してみたら?」

「主の寵愛を受けているのは俺だ!」

「いやいやいや長谷部くん現実を見て」

「…………」

「切り落とす前に女の子っぽい感じを目指して様子を見てみたら?」

「…………」

「軽いのから始めてみようよ、ね」

「…………乱藤四郎から服を借りてみる」

「絶対やめて」

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