(〜2016.01/31)
――俺はね、主のことを愛しているのですよ。
気付かなかっただなんて言わせません。口には出してきませんでしたが、こんなにも俺はあなたのことが大切なのだと行動で示してきました。身に覚えはありませんか? あのときも、このときも、すべては主を想うがゆえの行動でした。
ずっと、ずぅっと俺はあなたの一番の刀になりたかったのです。武功をたてることも、資材の管理も、馬の世話だって畑仕事だって、すべては主のためだからしてきたことです。いえ、もしかしたら主のためですらないかもしれません。俺があなたに必要とされたいから、だからしてきたことなのかもしれませんね。
お慕いしております。この長谷部は、ずっと、あなただけのものです。愛しています。主、あるじ、愛しています。
だから主、どうかそんな顔をしないでください。俺はあなたのために死ねるのならば、それ以上に嬉しいことなどありませんから。だから、大丈夫です。何も心配することなどありませんよ。付喪神にあの世などありませんから、俺はあなたのものであり続けますから。ね、主、泣かないで。
ああ、でも、俺以外の奴が主命を賜ることになるのだと思うと耐えがたいですね。ああ、死にたくない。ずっと主のおそばにいたかった。
…………いやだ、俺は、あなたを俺だけのものにしたかった! 主、あるじ! いやです、俺はずっとあなたのおそばにいたい! 死にたくない! 死にたくない!! 助けてください主! 俺はあなたのおそばから離れたくなどありません! あるじ、お願いです、俺を…………!
(毒矢をうけても手入れすればなおるんだけど……)
(どうしてそれを先に言ってくれなかったのですか主! くそ! 知っていたらあんな事言わなかったのに!)
***
(〜2015.10/07)
「最近、動物を飼い始めたんだ」
「へえ、長谷部くんにしては珍しいね。どんな子?」
「気まぐれで可愛いやつだ。初めは俺を怖がっていたのだが、最近は大人しくなってな。やっと触っても嫌がらなくなったんだ」
「もしかして猫かな? いいね、高かったんじゃない?」
「いや、街を歩いていたところを連れてきた」
「野良? 誰かの飼い猫じゃないといいね」
「……そうだとして、返せと言われても今更無理だがな」
「長谷部くん、そんなにその子のこと気に入ってるの? 写真とかないのかい? 見せてよ」
「誰がお前に見せるか」
「……冷たいな。僕と長谷部くんの仲じゃないか」
「………………」
「そこで黙るのやめてよ」
「……俺の、ずっと求めていた運命の相手なんだ」
「長谷部くんってば大げさだな! たかが猫なんだろう?」
「お前には俺のこの気持ちは分からないだろうな」
「……そんなに猫が好きだったなんて意外だよ」
「ふん、どうとでも言え」
(いつから猫を飼っていると錯覚していた?)
(あるじ、家で大人しく待っていてくださいね)
***
(〜2015.07/15)
「長谷部、お手」
「はい! 主」
「長谷部、くるっと回ってワンって言って」
「主命とあらば」
「ふふっ愉快だわ。 長谷部は可愛いね」
「お褒めに預かり光栄です」
「長谷部は待てもできるの?」
「迎えに来てくれるのであれば、いつまででも」
「じゃあ私は光忠とお買い物してくるからお留守番していてくれる?」
「……! 燭台切など頼らなくとも荷物持ちでしたら俺が!」
「長谷部、“待て”できないの?」
「……ッ! …しゅ、主命とあらば……」
「うん、良い子。じゃあいってくるね」
(主、主が買い物に出てる間ずっとへし切長谷部がブツブツ呟いていて気持ち悪いことこの上ありませんでした。迎えに来てくれるなら…とかなんとか)
(えっ何それ気持ち悪い。ごめんね宗三)