少年の恋心は小さな一番星へと姿を変えた
これまでもずいぶんと切ない思いをしていたのに、今ではなおのこと切なさが募るのでした。彼女はまったくの一人ぼっちだったのです。彼女はほかの草木の頂きを六間ちかくも抜いてそびえていましたので、下にいる植物たちは彼女を憎みうらやんで、なんて傲慢ごうまんな女だろうと思っていました。人並はずれて身のたけの高いということは、結局彼女にとっては悲しみの種になるだけでした。それも、みんなはああして一緒に暮らしているのに、自分だけは一人ぼっちだ――ということだけならまだいいのですが、なおその上に、なまじ背の高いおかげで、植物たちにとって大空の代わりになっているもの、つまりあのいまいましいガラス屋根に、だれよりも一ばん近いものですから、彼女の胸にはだれよりも深く故郷の青空のことが刻まれて、人一倍それが恋しくなつかしかったのです。そのガラス屋根ごしに、時おりは何かこう青い色が見えるのでした。それは蒼穹そらでありました。見知らぬ国の、色あせた空ではありましたが、でもやっぱり青空には違いありませんでした。で、草木たちがてんでにおしゃべりをしている時、アッタレーアはいつも黙り込んで、空を慕っておりました。たといあの色あせた空の下でもいい、ちょいと表へ出てたたずむことができたらどんなにいいだろうと、そればかりを思っておりました。
「ねえ皆さん、どうでしょうね、もうじき水を掛けてもらえるんでしょうかしら?」と、水気の大好きなサゴ椰子やしが尋ねました、「あたくしもう、ほんとに今日は乾ひあがってしまいそうですのよ。」
「いやあ、あんたの言われることには、ほとほと驚き入りますなあ、お隣りさん」と、太鼓腹のサボテンが申しました、「毎日あんなにどっさり水を掛けてもらっている癖に、それでもまだ不足だと言うんですかね? まあこの私をご覧なさい。私はほんのわずかの水分しかちょうだいしちゃいませんがね、でもご覧のとおりつやつやと、みずみずしておりますよ。」
「あたくしどもはあんまりつましい暮らしには慣れとりませんのでねえ」と、サゴ椰子は答えました、「あたくしどもはどこやらのサボテンさんみたいに、からからにかわいたみすぼらしい地面じゃ、育たないんでございますよ。あたくしどもは、かつがつの暮らしなんぞには慣れておりませんの。それに、これははっきりお断りして置きますけれど、だれもあなたの御意見なんぞお願いしてはおりませんわ。」
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