遥かな人に寄せる夕べの歌



 暁の血盟は終末を退け、惑星ハイデリン――またの名をアーテリスには平和が訪れつつあった。災厄の傷痕は深く、偽神獣との戦いは各地で続いているものの、各国が手を取り合うようになった今、平穏な日々が戻るのは時間の問題であった。

 暁の血盟が『表向き』には解散した今、英雄は各国を回りながら、ルクスを知る者に彼女の顛末を伝える事にした。
 まずはキャンプ・ブロークングラスに向かい、ルキアやマキシマに星海での出来事を説明したところ、ふたりとも無念そうに神妙な面持ちをしていた。だが、結局のところルクスが生き延びてイルサバード派遣団に協力したとしても、テロフォロイに加担していた事実は覆せない以上、彼女に茨の道が待っている事は明白であった。
 これで良かったと言いたくはないが、生きていて欲しかったと思うのは、かえってルクスを一生苦しめる事になるのだとしたら。答えの出ない疑問を抱き続ける一同であったが、突然、英雄の元に通信が入る。
 緊急事態ではないが、心情的に急いだほうが良い内容であった。
 英雄は急用が入ったとふたりに告げ、この場を後にしようとしたが、今まで重い口を閉ざしていたマキシマに声を掛けられた。

「……結局は英雄殿に重荷を背負わせる形となり、なんとお詫びすれば良いか……本来ならば、ルクス様を思い留まらせるのは我々の役目でありました」

 民衆派として共に過ごした経験がある事から、ずっと責任を感じているのであろう。英雄は首を横に振れば、「ルクスはマキシマが思っているほど善良な人間ではない」と告げた。これにはマキシマもルキアも目を見開いたが、自分たちを気遣っての言葉なのか、または英雄はルクスと対峙して彼女の本性を知ったのか、それを問う事はしなかった。

「無念ではあるが……星海で真に愛する人と再会出来たのなら、ルクス殿にとって救いはあったと思うしかない、か」

 複雑な表情で口角を上げるルキアに、英雄も力なく笑みを浮かべたのだた。



 英雄が転移した先は、惑星アーテリスではなく、ハイデリン――ヴェーネスが人類を救うために用意していた月の居住地、ベストウェイ・バローである。
 そこでレポリット族とともに英雄を出迎えたのは、ウリエンジェであった。

「お忙しいところ、申し訳ありません。ですが、あなたの心情を察するに、早急に対処したほうがよろしいかと」

 そう切り出すウリエンジェに、英雄は頷いた。

「……レポリットがルクスの遺体を発見し、暫定措置としてここで保管しておりますが……彼女の生前の訴えを尊重するならば、弔いは必要でしょう」

 ルクスの生前の訴え。それは、アサヒの遺体を放置したからアシエンに憑依され、こういう事態が起こったのだという主張であった。
 尤も、それが戦争というものである。ドマ側にしてみれば、アサヒをはじめとする帝国軍は侵略者に過ぎず、占領から解放された自国の民の生活を立て直す事が最優先であった。それに、果たして帝国は敵国の人間の遺体を丁重に弔っただろうか。そもそもアラミゴで埋葬したゼノスの遺体ですら、アシエン・エリディブスに奪われていたのだ。死者の肉体が残っている間は、防ぎようがない事でもあった。

「アシエン・ファダニエルが消滅しても、同じ『転生組』のアシエンがあと何人残っているのか……全てのアシエンが消滅したと確認出来ない限り、ルクスの肉体が憑依される可能性はないとは言い切れません」

 ウリエンジェはあくまで憶測として語っているが、英雄もそんな事は有り得ないとは言い切れなかった。『超える力』に目覚めたルクスは、間違いなく強かった。ファダニエルのような破滅思想を持ったアシエンがまだ残っている可能性もある。
 それに、ここでルクスの遺体を放置したら、それこそ帝国がやってきた事と同じだ――英雄はそう思い、彼女の亡骸を眠らせる安息の地を探しに、再び各地を巡る事にしたのだった。



 アーテリスに戻った英雄は、まずはルクスの故郷であるガレマルドを訪れた。テルティウム駅を拠点に、ガレマルドの復興活動を続けているアルフィノとアリゼー、そしてユルスに会い、彼女の遺体を弔って欲しいと説明したものの、誰よりも先にユルスが拒否した。

「それは出来ない。彼女は反逆者だ」
「そんな……ルクスは散々帝国に尽くして来たじゃない」

 一考もせずに断るなどとアリゼーは驚いて声を上げたが、それでもユルスの意志は固かった。これはユルス個人というより、生き残った帝国民の総意である。

「アルフィノとアリゼー、それにお前の話を俺は信じている。バブイルの塔で彼女の身柄をファダニエルに奪われただけなら話は分かる。だが、お前が単独で月に向かった際、他でもない彼女が敵として立ちはだかったのだから、残念ながらテロフォロイの一員として見做さざるを得ない」

 英雄も、筋の通っているユルスの意見に反論する言葉は持ち合わせていなかった。仮にゼノスとファダニエルに脅されて、敵として立ちはだかったとしても、その時に英雄の手を取り、共闘の意思を示してくれていたら。彼女はテロフォロイに利用されていただけで、一員とは見做されない。
 次いで、アルフィノも言葉を紡ぐ。

「……そもそもルクスは、ガレマルドに骨を埋める事を願っているのだろうか。星海に還った本人に問い質す事は不可能だけれど、出自を鑑みれば、無理に故郷に拘らなくても良いのかも知れない」

 蛮神と化したルクスと戦った英雄は、彼女が後天的に超える力を手に入れたわけではないと感じていた。アレンヴァルドと同じ、ガレアン族と他種族のハーフである事は想像に容易い。確かにユルスの言う通り、最後にファダニエルと手を取ったのなら、テンパードと化した帝国の民などどうなっても構わないという意思だと思われても仕方がない。
 英雄はアルフィノの助言をもとに、引き続きルクスに縁のある国を回る事にした。



 ドマは、そもそもアサヒがヨツユに蛮神召喚の罪を背負わせる事で、帝国再侵攻の口実を作ろうとしていた。ドマの民の心情を考えれば、ガレマルドと同様許されないだろう。

 ルクスは一時はガイウスに会いに行きたいと言っていたが、結局のところファダニエルを選んでしまった上、ガイウス本人がルクスの事を覚えているとは限らない。ルクスが評価されるようになったのは、第XII軍団に転属してからである。マーチ・オブ・アルコンズでも英雄はルクスと対峙した記憶がないし、第XIV軍団の頃は名もなき兵士のひとりに過ぎなかったのだろう。ゆえに、ウェルリトにいるガイウスへの相談は憚られた。

 接点のある国として残ったのは、ルクスが少しの間配属されていたアラミゴだけであった。
 ルクス本人はドマの和平交渉の時もフォルドラの事を気に掛けていたし、アラミゴで埋葬するのは無理でも、解決の糸口が掴めるかも知れない。英雄は一縷の望みに賭け、フォルドラに会いに行く事にしたのだった。



 フォルドラは、アレンヴァルドと共にアラミゴ系帝国人の支援を行っていた。遺恨は残るものの、それでも人々は少しずつ前に進んでいる。
 英雄が訪れたと聞いたリセも駆け付けて、アレンヴァルドも含めて三人に事情を伝える事になったものの、さすがに英雄もルクスをここに埋葬して欲しいとは言えなかった。アレンヴァルドたちの活動が受け容れられつつある中、侵略者であるルクスを弔って欲しいと求めれば、彼らの努力はたちまち無駄になってしまうからだ。

「ルクスの魂は星海に還ったけれど、身体は月に残っているんだね……」

 だが、英雄がすべてを言うまでもなく、リセはその事実だけで何を求めているのかを察した。弔う場所が欲しいのだと。
 英雄は、ガレマルドでは彼女は反逆者だと断られてしまい、ドマやアラミゴでは到底無理だとは思うが、何か解決の糸口が掴めないかと思い、皆に相談した事を伝えた。
 とはいえ、そんな厄介な事を投げられても困ると、フォルドラは顔を顰めさせた。

「私たちに分かるわけがないだろう。そもそも、あの女とは元同僚というだけだ。心を許した覚えもない」
「でも、俺たちを助けてくれたじゃないか」

 フォルドラとは対照的に、アレンヴァルドは歩み寄る姿勢を見せた。『塔』でルナイフリートから受けた攻撃による傷が治癒する事はなく、車椅子での生活を強いられているが、それでも前向きに生きている。そんな彼は英雄に向き直れば、ルクスの事を何も知らないだけに、遠慮がちに言葉を紡いだ。

「アルフィノから聞いた話でしか、ルクスという人の事は知らないが……俺と同じハーフガレアンなんだろう? 帝国でどんな暮らしをしていたかは分からないが、嫌な思い出があるとしたら、かえって故郷ではない方が良さそうだ」
「あの女は魔導院を卒業し、出世を約束されたエリートだ。少なくとも惨めな暮らしはしていない」

 アレンヴァルドの憶測を即座に否定したフォルドラに、英雄も彼女が何故ここまで強く出るのか、その気持ちは汲み取る事が出来た。
 ルクスがイルサバード派遣団に心を開いてくれていれば、こんな事にはならなかったのだから。
 仮にルクスがファダニエルに殺される未来は防ぎようがなかったとしても、最後の最後までテロフォロイに抗う意思さえ示してくれれば、残された人たちの印象も違っただろう。
 話が進まない中、ふとリセが呟いた。

「故郷に拘る必要はない、か……。ねえ、ルクスはきっと、アサヒと一緒に居られれば、それで良かったんだよね?」

 リセの問いに、英雄は頷いた。それだけはルクスの確固たる意志であり、蛮神と化した彼女の心の叫びを、英雄は今でも覚えている。ドマで過ごしたあの偽りの時間が、ルクスにとって、人生で一番大切な想い出と化していたのだ。
 とはいえ、やはりドマにルクスの遺体を埋葬するのは道理にかなっていない。
 だが、リセが思いも寄らない事を口にした。

「ファダニエルがゾディアークと融合して、それをあなたが倒したのなら……アサヒの身体は月で消滅した、という事だよね」

 英雄はその言葉に目を見開いた。というより、『そうするしかない』と言った方が正しい。このアーテリスにルクスの居場所がないのなら、複雑ではあるが、彼女が殺された月でそのまま弔うしかない。

「あなたは納得いかないかも知れないけど……ルクスは本物のアサヒと星海で一緒になれたんだから、彼女の亡骸をどうするかは、要は残されたアタシたちの気持ちの問題だよね」
「誰も彼も綺麗事を……あの女が満足して死んだのなら、何の問題もないというのに」

 どこまでも否定的なフォルドラに、リセもアレンヴァルドもまあまあ、と落ち着かせるようなジェスチャーを取ったものの、彼女の意思は変わらなかった。

「あの女は、結局のところ何処までも帝国人なのだ。私の事を憐れんでいたのも、『帝国に従順な属州民』だったからに過ぎない。従順ではない属州民は粛清対象だ。そもそもあの女がゼノスに評価されたのも、ドマの反乱制圧で功績を挙げたからなのだぞ」

 フォルドラの言う事は事実なのだろう。だが、ルクスは決してアサヒの事を属州民だからと同情心で好きになったわけではないだろうし、きっとフォルドラとも対等な同僚として接したかったのではないか――英雄はそう思い、なんとも報われないと苦笑を零した。
 その表情を見て、アレンヴァルドは思わず挙手した。

「俺たちに何か出来る事はないか?」
「おい、何を勝手な……!」

 窘めるフォルドラであったが、英雄が「例えばルクスが生前好きだったものがあれば、棺に入れるのはどうだろう」と呟いて、それに答えられるのは己しかいないではないかと苛立ってしまった。とはいえ、テロフォロイに協力するという形で同胞を裏切った以上、彼女をよく知る者がいても弔いたいとは思わないだろう。
 仕方なしに、フォルドラは溜息を吐きながら、ごく僅かな交流を思い出し、告げた。

「アラミゴ王宮の空中庭園……ゼノスの許可を得てよくあそこに入り浸っていたそうだ」
「庭園……ルクスは花が好きだったのか」
「いいね、早速用意してくるよ! 溢れ返るくらいね」

 笑みを浮かべるアレンヴァルドとリセをよそに、フォルドラは、美しい花が咲き乱れる庭園に佇むルクスを思い返していた。

「生まれた国も時代も違えば……ルクスはきっと戦いとは無縁な世界で、花を愛でて生きていたのだろうな」

 誰に言うでもなくそう呟いたフォルドラの表情は、どこか無念そうでもあり、英雄はどうしても、別の未来があったのではないかと思わずにはいられなかった。





「……まあ、そうだろうな。お前もよくやったさ、お疲れさん」

 大量の花を入れた袋を携え、月に戻った英雄を出迎えたのは、ウリエンジェではなくサンクレッドであった。ルクスの遺体を月で弔うと暁の血盟に伝えたためか、恐らく手伝いで来たのだろう。力仕事となる以上、人手は多いに越した事はない。更に遅れてヤ・シュトラも駆け付けて来た。

「アルフィノとアリゼーはガレマルドの復興で手が離せないし、グ・ラハ・ティアとクルルもバルデシオン委員会の仕事で忙しいそうよ。でも、皆ルクスの事を気に掛けていたし、特にクルルは興味深い事を言っていたわ」

 首を傾げる英雄とサンクレッドに、ヤ・シュトラは口角を上げて言葉を紡いだ。

「ルクスは結局のところ『超える力』の持ち主だったと見て、恐らく『過去視』ではなく『未来視』を持っていた」

 クルルの推察は当たっていた。とはいえ、それが真実か突き止める事は、今はもう不可能となってしまったのだが。

「ルクスが視た未来は、終末を退けた『今』ではなくて、災厄が訪れた少し前の世界。だとしたら、土壇場になってすべてに絶望して、ファダニエルに寝返った彼女の行動原理にも説明が付くわ」
「成程。自分が生粋のガレアン族だと思っていた頃から視ていたとしても、単なる悪夢で片付けそうだしな」

 サンクレッドも同意し、今更考えたところで過去は変えられないと分かってはいつつも、一同は神妙な面持ちを浮かべていた。
 そんな中、ウリエンジェが緩慢な足取りで現れた。彼の後ろでは、来客らしきふたりの男が歩を進めている。

「ルクスの話を聞いたエスティニアンが、ウェルリトに出向いて声を掛けてくださったそうです」

 ウリエンジェの声に英雄が顔を向けると、彼の後ろには顔馴染みのふたりがいた。

「よもや、あの娘がこのような末路になろうとは……」

 俯き、悲痛な表情を露わにしているガレアン族の男、ガイウス・バエサル。かつての第XIV軍団長――ルクスの上官。そして、もうひとりは思いも寄らない男であった。

「一方的に男に狂って死ぬところまで、憧れのリウィア様を真似る馬鹿がいるかよ。……クソッタレが」

 黒いグラスで目を覆っているため、表情を窺う事は出来ないが、そういえば彼も元第XIV軍団であった事を思い出し、英雄は少しばかり安堵した。
 男の名はネロ・トル・スカエウァ。どうやらルクスは、軍団長からも幕僚長からも存在をしっかり認識されていたようだ。



 さすがにこの先はレポリットたちに任せるわけにはいかないと、揃った一同は空中庭園に咲いていた花を、ルクスの亡骸が眠る棺に敷き詰めていった。
 ネロはまだしも、ガイウスは相当辛いように見えた。だが、それでも英雄はふたりに問うた。ルクスはふたりから見てどんな人だったか、と。

「当時は、恐い者知らずで大物になると思ってたぜ。本気でリウィアに憧れていたみたいでな、向こうも悪い気はしなかったように見えた……オレがどうやって取り入ったんだって訊いたら、怯えたツラしやがって」

 ネロに詰められて怯えるルクスは、本人には申し訳ないが想像が付くと、英雄は少しばかり笑みを零した。だが、ガイウスはずっと悲痛な表情を浮かべるばかりである。

「あの娘が生きていると知っていれば……我とともに、アシエンを倒す旅に連れ出せたものを……」

 後悔の念は止まらず、ガイウスは一筋の涙を零した。

「あの娘が力に溺れてしまったのは、我の責任だ……力こそが平和をもたらすと教え説いた我が、あの娘の運命を狂わせてしまったのだ」

 ガイウスの悔恨に寄り添う言葉を、英雄は持ち合わせておらず、今はただ、静かに見守る事しか出来なかった。



 ルクスの墓はゾディアークが封印されていた跡地に作られた。彼女の遺体がアシエンに利用される事のないよう、月の監視者が目を光らせ、レポリットも定期的に巡回してくれる事になった。
 とはいえ、星海に還ったルクスの魂は、今はもうアサヒとともに現世を観測できないほどの深層へと沈んでいるはずだ。英雄たちがこうして弔った事も、当の本人は知る由もないし、知れば余計な事をするなと怒りを浴びせられそうである。
 英雄は駆け付けてくれた暁の仲間たちと、そして、ガイウスとネロに礼を述べた。

「礼を言うのは我らのほうだ。ルクスと最後の別れの時間を与えてくれた事を、心から有り難いと思っている」

 ガイウスはそう告げたものの、表情が晴れる事はない。恐らく、ガイウスはずっと罪を背負って生きて行くのだろう。知らないほうが良かったのではないかと英雄は一瞬思ったものの、エスティニアンとて考えがあって声を掛けたのだ。辛くとも、死者の想いを背負って生きていけ――そんな声が聞こえてきたような気がして、英雄はただただガイウスに頷いた。

「ったく、どうせ今頃は星海で好きな男とよろしくやってンだろ?」

 ネロは呆れるようにそう言い放ったが、ヤ・シュトラが目を細めて言い返す。

「あら。好きな男だけではなくて、その人の身体を奪って好き放題した男も一緒なのよ。案外地獄かも知れないわ」
「ハッ、その方がいい薬かもな。ガレアン族はいつだって未来を掴むために技術を磨いて来たンだ。とっとと死ンだ事を後悔させてやるからな」

 ネロは帝国の民を引き連れて、ベストウェイ・バローを利用して月で技術開発も行うとの話である。そんなネロにしてみれば、未来に絶望してファダニエルと星を破滅させる事を選んだルクスは、許せない存在でもあるのだろう。
 だが、それはネロなりの悔恨でもあるように英雄は感じた。生きてさえいれば、一緒に夢を見る事が出来たかも知れないのだと。

「……例え我らの言葉は届かずとも、彼女の魂が溶け、青き星に再び生まれ落ちた際……絶望しない世界である事を祈るばかりです」
「ああ、そうだな」

 そう告げるウリエンジェとサンクレッドに、英雄は頷いた。
 フォルドラが言ったように、もしルクスが戦う必要のない世界に生まれたとしたら。きっと大好きな花に囲まれて、愛する人と穏やかに暮らす事が出来たかも知れない。ルクスはアサヒの魂が溶けるまで星海に残り続けるだろうし、アサヒもアモンを監視し続ける以上、転生までにどれほど長い年月がかかるかは想像も付かない。
 それでも、英雄は己たちが守り切った青い星を見つめ、願った。いつかルクスが転生した世界は、戦いのない平和な星であるように。

2024/01/26
- ナノ -