SS


▼07/29 11:13


「あっつーい」
「そうですね」
「とけちゃいそー」
「ええ」
「あついあついー」
「脱げばいいじゃないですか。なんだったら僕が脱がせてあげまっ…いたっ」
「あっつーい」
「そうですね」

▼06/12 23:59


久しぶりに会った彼女の髪は腰のあたりまで伸びていた。
少し、痩せただろうか。
どうすればいいのかわからず、僕はただ微笑んだ。
荷物を持たない、空いてる右手を握ったら彼女はどう反応するだろうか。
それさえもわからなくなってしまった。忘れてしまった。
でも
「宗次郎、」
ああこの声だ。僕の名を呼ぶそれはずっと変わらず。
「…お久しぶりですね」
握りしめた右手は温かかった。きっと、あの日も温かかった。




(お久しぶりですということでリハビリ第一弾です。笑)

▼04/13 19:34

6

この日、玄関の前に瀬田くんの姿はなかった。寝坊したのかと思って、しばらく待ってみたけれど、現れる気配はなくて私はひとりで学校に向かった。
休み時間も、教室には来なかった。
メールを作成したけど、送信ボタンを押す気にはならず、未送信ボックスに保存された。
ちょっとだけ。ちょっとだけ彼の教室を覗いてみようと思い、トイレに行くふりをして開いていた扉から彼の姿を探したけど、見つからなかった。
昼休み、購買のパンを買うために廊下の人込みを掻き分けながら進んだ。さすがに人が多くて視界も悪く、曲がり角を曲がった瞬間、ぶつかった。
「あっ…ごめんなさっ」
「…」
瀬田くんだった。たった何時間しか会っていないだけなのに、何日も会っていなかったような感覚に陥った。彼の手には化学の教科書が握られている。実験だったのだろうか。先週うちのクラスがやった実験プリントが教科書からはみ出ている。
「せ、瀬田くんっ。来てたんだね、学校」
「…」
沈黙が流れた。え、なに。なんなの。彼はじっとりとした目で、私の目ではなく肩の辺りを見つめている。埃がついているのかと思い、思わずそこに目を向けた瞬間、彼は何も言わず私の横を通り過ぎその場から立ち去った。ふわりと香るのは昨日抱きしめられた時と同じ彼の香り。なぜか、振り返ることはできなかった。

▼04/09 15:59

5


帰り道、またこうして当たり前のように瀬田くんは隣に並ぶ。これまた自然に繋がれた手はぎゅっと握りしめられている。こうしてみると、手とか背とか私より大きいんだなって気付く。
ゆらゆらとその腕を揺らしてみれば瀬田くんはこっちを見て微笑んだ。
「どうしました?」
「ん?なんでもない」
「そうですか」
じっとアスファルトを見つめながら歩いていれば、左に傾く身体。慌てて態勢を立て直そうとする前に、私は不安定な姿勢のまま瀬田くんの腕に包まれた。「どうしたの?」「こうしたかったんです」その一言を呟いたきり彼は何も言わなくなった。
遠くで小さな心音が聞こえる気がする。緊張、しているのだろうか。普通よりも速いであろうそれに私は耳を傾けた。
どれくらいこのままだったかわからないが、その間中私の腕は居場所を探し宙を彷徨っていた。だらんと下げたままにするか、それとも…。
「ごめんなさい、帰りましょう」
すっと離れた身体と身体の間に風が吹き抜ける。それがさっきよりも冷たく感じられた。頬に手を当てればその理由がなんとなくわかった。

▼03/30 19:06

4


何度も振り払おうと努力したけど結局はそのまま登校した。だってそのたびにすごいんだよ色々。廊下を歩いていれば視線が突き刺さる。
「お昼にまた迎えに来ますから」
「はあ」
そういえば瀬田くんとは違うクラスなんだなあと今更ながら気付いた。なぜあのとき教室にいたかは謎だがもうこうなってしまったんだ。仕方がない。笑顔で振られる手にぼんやりと応えながら私は席についた。
前の席の友人はテンションが上がってる様子で「すごいすごい!あの瀬田くんと登校だよ!」と騒いでいる。
あの人全然紳士的じゃないし、黒いし、強引だし。とにかく私が持っていた瀬田くんのイメージ(すごく優しい・王子服が似合う・周りに花が舞う)はこの二日間で砕け散った。それを友人に伝えると「まさかあ」と言って軽く流された。本当なんだってば。

宣告通り彼はやってきた。私が自分のために作ってきたお弁当を「僕のですか?」とか言うもんだから「違う!」と叫べば、ぽんと頭に手を乗せて「照れなくていいんですよ」。照れてない!
そして何故か知らないが、瀬田くんが購買で買ったであろうメロンパンを渡され、お弁当交換が成立した。手を引かれるがままに屋上に向かい、ベンチに並んで腰かけた。
「んー、美味しいです玉子焼き」
「そりゃどうも」
「料理上手なんですね」
「そうでもないと思うけど」
さっきから女子の視線が私たちに注がれている。こう改めてみてみると、瀬田くんはかなり人気があるんだなあと思った。これだけの容姿と優しさ(私にはみせない)が備わってるんだから当たり前か。そして今その人の隣にいることが不思議でならない。
「瀬田くんはどうしてあたしと…」
「?」
「その…あたしのことどうも思ってないんでしょ」
「まあ」
「だったらなんで」
「さあ。なんででしょ」


▼03/21 15:10

3

朝、着替えてる最中に携帯が鳴った。ディスプレイを見てみれば、やはりあの人物の名。
昨日の帰り道、当然のごとく瀬田くんはあたしの横に並んで歩いていた。
特に会話もないので携帯を弄っていたら、あたしからそれを取り上げ自らの携帯と赤外線通信を始めた。
そしてあたしの携帯には別に欲しくもない彼の電話番号やメールアドレスが電話帳の一番上に登録されていたのだ。「瀬田宗次郎」と入力してあるくせに、なぜ電話帳で一番上に?と思ったが、名字のふりがなでこの問題は解決した。

瀬田(アイスルカレシ)宗次郎(ソウジロウ)

アホか!


一体どういう読み方をしたら「瀬田」を「アイスルカレシ」と読むことができるんだ。
携帯を枕に投げつけ無視をした。鳴り止まない着信音をそのままに準備を進めた。やっと静かになったそいつを持って玄関の扉を開ける。
「いってきまー…」
「おはようございま…」
す、の声を聞く前に扉を閉め鍵をかけた。
朝の爽やかな雰囲気にマッチしすぎてる爽やかな笑顔。
何故だ。何故いる。何故あたしの家を知っている。ああそうだ。確か昨日、瀬田くんが無理矢理あたしを家まで送ったんだ。
「あのー」
優しい声掛けとは裏腹に扉がホラー映画並みに激しく振動した。ドアノブがありえない速さで上下している。
「で、出るから落ち着いて!」
少しだけ顔を覗かせれば、瀬田くんは扉を掴んで勢いよく開けた。
そのせいでバランスを崩し、朝っぱらから瀬田くんの胸にダイブすることになった。
「非情すぎますよ。人の顔見るなりドア閉めるなんて。電話にも出ないし」
「…ご、ごめんなさい」
「さあ行きましょう」
かなり自然な動作で手が繋がれた。しかも恋人繋ぎ。
女の扱いに慣れているんじゃないかと思ったが、生憎瀬田くんの女関係の噂は全く聞かない。
「ねえ瀬田くん」
「ん?」
「別れ…」
「却下です」
ですよね。

▼03/21 01:39

2

ぎゅうぎゅうと圧迫される体。
思考がついていかない。まあそりゃものの1分足らずで所謂「恋人」になったんだから仕方ないんだけど。最早「恋人」の定義さえも解らなくなってしまった。言い知れぬ圧力で相手に肯定を強いてなるものだっけ恋人って。もっとロマンチックなものだと思うんだけど違うかな。
それより苦しい。はっきりいって苦しいのだが。
「や、めて!」
ぐいぐい、と瀬田くんの胸を押すがびくともしない。いやそれよりも「もっと抱き締めて欲しいんですか?」なんて勘違いも甚だしい言葉を放った。
「瀬田、くん、は」
「はい」
「あたしのこと好きなの?」
「別に」
「別にって…じゃあ別れ…」
「却下です」
恋人だと仮定してだね!あたしは話を切り出してあげたんだ。恋人は恋人の気持ちを汲んで頭ごなしに拒否する横暴な行動は慎むべきだと思うのだが。
「これからは毎日僕とお昼を食べること。登下校も一緒ですよ。僕以外の男子を視界に入れることも禁止」
おおう。なんだかとんでもないことになってきた。相変わらず穏やかな口調なのが更に怖い。ふいに体が離れたかと思えば、目の前にはやんわりと微笑む瀬田くん。
「僕もあなたのこと好きになれるよう頑張りますから。一方通行な恋なんて辛いでしょう?」
ああもう!なんだこいつ!


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