▼ 7.わたしだけに笑ってなんて
目を擦っても目の前でニコニコ微笑んでいるのは紛れもなくソウジロウ君で、ほっぺをつねってみるけど痛いだけで夢でもないみたいだ。具合でも悪いんですかと声をかけられ、私はぶんぶんと千切れんばかりに首を振った。
(ななな何で私の隣に座ってんの?)
震える手をどうにか抑えようと膝の上でぐっと握る。本当、どうしたら良いかわからない、可愛い可愛い、身長私よりも高いんだ。まつげ長い。実際に近くで見ると新しい発見ばかりで胸がバクバク張り裂けそうだった。ぎゅうと唇を噛み俯きながらこの感動して興奮しきっているさまを外に出さないように耐えていれば私の手を取るソウジロウ君。
「−なっ!!」
パクパクと魚の様に口を開け閉めしている私はきっと空気に当たっている肌全てが真っ赤に染まっている。そう断言できる。
「僕に会うといつもそうなりますよね、避けられてるというか目があったと思ったら直ぐに逸らすし…」
戸惑うように視線を下にずらすソウジロウくん。な、なんなのこの子は。こんな至近距離で手を握られて戸惑ってるのは私の方だよ!!
「僕の事が嫌いなんですか!?」
「…は?」
ひとコンマ置いて何を言っているのか理解した私は「そんな筈ないっ!」と大きな声で訂正した。この世界に来て初めてこんな腹から声出したと思う。そんな風に見られてたのか。
「昔から…ふふふぁん、というか」
わっ!!慌てて何か言わないと何か言わないとと言葉を探していたらなんだか変な事まで口走ってしまった!!ひぃぃぃ、わたしは何て事を言ってしまったんだ!!もう、駄目だ。死のう、あ、死ねないんだった、どうしようとりあえずまたナズナちゃんにあのデカいフライパンで頭を殴って記憶喪失にして貰おう、そうしよう。
「…………」
ー虚ろな目でソウジロウ君をみれば彼は口を開けたまま固まった。そうだよね、気持ち悪いよね、引いてしまったに決まっている。
ポ、ポジティブに考えよう、むしろこれで追い出されてここから脱出できるのだから一石二鳥じゃないか。し、しかも記憶喪失になれるんだからまた遠くから何も気負いせずにストーカーでき…
「嫌われていたんじゃないんですね、良かった」
私の思考をまた真っ白にして、ただ照れ臭そうににこりと笑うソウジロウ君。
君はどこまで天使なんですか?
(今、データ消えても笑顔でいられる自身がある)
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