▼ 6.見えないラインのあちら側
それからこのギルドでお世話になる事になったわたしは静かに過ごしていた。
厄介事にあまり関わらないように静かに過ごしていればソウジロウ君と会う事もないし、それなりにギルド内にも話をするトモダチというものも出来た。ナズナちゃんは思い出したように私の所に来ては弄り倒して帰って行く。
「そろそろ限界なのになぁ」
外はまだ空気が悪いらしいから危ないと出しては貰えない。仲間が向かえに来たからと嘘をついてみたけれど引き渡さないと駄目だと突っぱねられ呆気なく嘘だとバレてしまった。ナズナちゃん曰く私は分かりやすいらしい、くそ。
私の話す人はみなモブキャラみたいなものだった。主要メンバーはソウジロウくん筆頭にやはりキャラが濃く出来上がっており(やはりレベルが高い分、装備がしっかりしている)直ぐに幹部的な人達は分かった。
一戦引かれたようなあちら側には先日の仲間の人とソウジロウくんたち。
なんだあのゴツイのは。明らかに男だよね?どういう設定にしたらあんな風になるの。素直に性別男にして女の装備をしているのか?むっちむちじゃないか。嫌いじゃない。私の知り合いにもゴツイのがいるが女装をさせたらああなるのだろうか。考えただけで笑いがこみ上げてくる。
「元気かなぁ、ぷはッあはは…」
乾いた笑いが私の周りの静かな空間に消えていった。きっと彼も、そして以前戦いを共にしていた彼等もきっとこの世界にいる筈なのだけれど。
−−リィン
その時、念話のコールが聞こえた。
んーと、どうやって取るんだっけかと唸りながら開けば耳元で聞き慣れた低い大きな声が響いた。
『…っおっせーんだよ!!早く出ろウスノロ馬鹿女!!』
聞こえてきた大きなボリュームに鼓膜が震える。…私は思わず通信を切るボタンを押してしまった。
−−リィン!
『何切ってんだ馬鹿野郎!!』
「煩いし、口悪いんだもんアイザック」
そうは言っても、寂しい思いをして頭に浮かんでいた人物から掛かってくるのは嬉しいものだった。顔がにやけてしまう。
『なんだ、どうした?』
「別にー」
何でもないよと言えば嬉しいんだろときっとドヤ顔をしているだろう彼が見えるようだ。
『って、お前どこに居んだよ!!アキバに居んのか?』
「うーん、それがやばい事になってさ」
『とりあえず危ねえから俺が迎え…』
「ファラさん、今大丈夫ですか?」
その声に震えながら振り返ればやはり私の大好きな人物が微笑みながら立っている訳で、綺麗な黒髪をなびかせちゃっている訳で、とりあえず私はコクリと頷き。うるさく耳元で何かを言っている念話をぶち切った。
(あっ、誰かと念話中でしたか?)
(いえ、全然。只のいた電でした)
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