▼ 1.ただのファンのひとりです
あー、なんだかんだ今日は仕事もない友達と遊ぶ予定もない、暇だな。冷蔵庫から買いだめてあったプリンをひとつ手に取りソファーへ腰掛ける。テレビを付けスプーンをくわえながら気づいた。そういや、あいつが昨日わざわざ電話掛けてきたんだっけ。
「今日、エルダーテイルがアップデートされる日だ」
なんだっけ?ノウスソフィアの…とちらりと机に置かれたパソコンを見る。あそこまで行くのがめんどくさいな。でも、アップデートの日はみんなが楽しみにして沢山の人がログインしてくるはずだ。もしかしたらあの人も来るやもしれぬ。
ぐぬぬ、とスプーンを噛み締めながら年甲斐もなくよいしょっと腰をあげてソファーから机の椅子に座り直した。
パソコンを開けて電源をつける。
そしていつものようにエルダーテイルをクリックしてその時をギルドホールで待っているのだが…。
「お、そろそろかなー…っ!!」
なんか新しい画面に切り替わったと思ったらいきなり意識が落ち、もがく暇もなく地面にこんにちわ。
−−どぐしゃ!
「は?…は?へ?」
周りを見渡せばわたしの部屋とは程遠い石垣やら木々がざわめく…どこだここは?
しかも、格好がなんだかRPG風なんだけど…まさかね。うん、まさかそんな筈ないよ。だって非科学的じゃないか、そんな事信じないよ、信じない。
「あー…うん、分かった」
よろよろと泉から離れる。
泉にうつった姿は紛れもなくどこかでみた事ある姿で…うん、目を逸らしたかったけどそれは自分で初期設定を決めた愛しい姿だったから無理だった。
「うわー、こんな事あるんだ」
くそー!!っとバタバタ暴れてみればピコンとアイコンの音がして、まさかなと思い半笑いで見上げれば目の前にメニューが開いていた。こんなんあり得ないぞ、普通。
「なぁ、あんた今ログインして来たプレイヤーだよな」
(普通の世界だったらおまわりさんを呼んでたけれどエルダーテイルだものね)
(人種も装備も…凄いリアルやないかい)
「ちょ、鎧触らして」
「お、おう、そうだよな、そうなるよな。俺達もそうだったから分かるよ。と言うか女の子達すげえ可愛い、流石ゲーム自己設定万歳」
そっか、みんな自分で決めた設定のままなんだもんな装備も。自分の格好を改めて見直せば少し気恥ずかしいそんなこそばゆい感じがした。ああ、そうか。普通の装備に飽きたわたしはギャグ装備を身につけていたんだっけ。格闘家の女の子がセーラー服を着てハチマキ巻いてたら良いなと言う某ストリートファイ○ーのサクラの影響を受けて装備をしていたんだった。これは流石にないわ、きっと知らない人のが多い。メニューを開き直ぐさま戦闘用装備に切り替える。
「見てんじゃねぇぞ、コラ」
そんなこんなで、大好きなプリンも食べる事の出来ない私のここでの不自由な生活が幕開けるのである。
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