▼ 10.わたしなんかでいいの?
なんだかすごい事になってしまったどうしよう。手は握られているしじいっとこっちを見られてる。手汗、ハンパない。
「後ろからナズナちゃんとか」
「出てきません」
「ドッキリカメラとか」
「仕掛けてません」
手を解こうとしても更に強い力で握り直されてこれじゃあ逃げられる気がしない。これ本当にドッキリじゃないの?まぁ、確かにソウジロウくんはこういった女の子の心を踏みにじるようなドッキリには加担しなさそうだけども…。
「信じられませんか?」
少し寂しげにわたしを見つめるソウジロウくんは嘘をついていない。こんな綺麗な目な人が嘘をつく筈がない。わたしはソウジロウくんを信じるよ、信じる。
しかし、恥ずかしい…今更だけどストーカーだったのだわたしは。なんでストーカーのわたしが何故ソウジロウくんの隣に座って手を握っているの?もうおこがまし過ぎて穴があったら入りたいくらいなのに。
「好きです」
「う…うん…」
「僕の事嫌いですか?」
「…嫌いじゃないよ、嫌いじゃないけどさ」
「じゃあ好きですか?」
「は…はい」
「好きですか?」
「…好きです」
なんか誘導尋問な気がする、だけど「はいっ!」と満面の笑みで区切りを付けられてはもうなにも言えない。
でも一つ思ったことがある。
「……あの、付き合うの?」
「は?」
え、今ソウジロウくん「はぁ?」って言った?いや、そんな訳ない。ソウジロウくんは「え?」って可愛く首を傾げる事はあっても「はぁ?」なんていう事なんてないよ。
「あ、ごめん。展開的に付き合うのかと…勘違いしてごめん、ゲームの中だもんねっ」
少し焦ってそう正せばしかめた顔のソウジロウくんがまた「は?」と言った。今度は見違いでも聞き違いでもない。今確かに「は?」
って言ったよ。
「僕、告白しましたよね?」
「は、はいっ」
「足りなかったですか?見るからに少しおバカそうですもんねファラさん、そこが可愛いんですけど」
「え、ちょ…」
今なんかバカって言われたような気がする。あれ、今日はよく聞き違えちゃうな。
少し混乱していれば、男の子特有の大きな手にぎゅうっと両手を包み込まれる。じぃっと見つめてくるソウジロウくん、なんだか王子様みたい。
「僕と付き合って下さい、ここでも。勿論、元の世界に帰った後も」
「はい…」
どうしよう。ぽろぽろ涙出てきちゃった。こんな異質な世界で出会ったとして本当に恋をしてそれがまさか実るなんて思わなかったし、ましてやソウジロウくんはここの世界だけの話じゃなくてもとの世界に戻ってもと言ってくれた。どうしよう、どうしよう、凄い嬉しい。だんだんと実感してきたらもう涙が止まんない。
「ソウジロウく…ん、」
「はい」
「ソウ、ジ…ウ…ぐん…」
「はい」
優しい声で返事が聞こえてくる。きっと涙で滲んでもう前が見えないけど、きっとソウジロウくんはにっこり笑って私の言葉を聞いてくれている。
撫でる手が優しい。
「ず…ぎ…っ……」
「はい、僕もです」
(もう、逃がしません)
コメントする(^ ^)
[ prev / next ]