刀語中編 のコピー | ナノ


▼ 12.正体がバレたよ。-fin-

昔から液晶越しに話していたアイザックとクラスティ様をリアルと言ったら何かおかしいが本物が目の前にいる。
まぁ、アイザックはオフ会でずいぶんと前に顔を合わせていたし、帰る時に同じ方向だなと思っていたら向かえのアパートに住んでいたから本当の顔を知っていたのだが。

「うわーアイザックごつい、やっぱデカごつい」

クラスティ様から目を離したい一心でとりあえず思った事を口にした。

「ちげぇだろ!何でお前の用事は無期限なんだ!!しかも会いにも来ねぇたあどういう事だ!!」

「ごめんてー、怒んないでよ」

オコ?オコなの?と電車で若い子達が使っていた言葉を使ってアイザックを覗き込めば「別に心配してただけだ」とデレを発揮したため必死にジャンプしてアタマを撫でてやった。振り払わないところがデレなのだ、可愛いやつめ。

「おや、私は無視かい?」

「ひっ!!」

私の上からキラリと眼鏡を光らせ見下ろすクラスティ様に怯えるようにアイザックの後ろへ隠れた。怖い。大きいしあんなインテリ居ていいものなのか、武器斧でしょ?どんだけ鬼畜なんだ畜生ぶるぶる。

「お、お久しぶり…」

「暫らくだな、どこで何をしていた。私へ連絡一つ寄越さないとは偉くなったものだな」

「え、あの、連絡する意味が…わか、わかっ…ごめんなさい」

なんだこの男の威圧感は、ビリビリと肌で感じる殺気にとりあえず頭を下げるしか他はない。アイザック助けてよ、馬鹿じゃないのなに耳赤くしてんの。

「え?あの、シロ先輩」

「あー、僕が参加する以前から茶会にいたから一応有名人なんだよ。でも彼女騒がれるのとか好きじゃないから上級者にしか顔は知られてない」

「え、」

「ソウジロウが初めて加わった時は用事で来られなくて、次の茶会で遠くからソウジロウの紹介をしたら半狂乱で変態っぷりを発揮してね、それから遠くからソウジロウを見てハァハァしてるだけだったんだよ」

言った事内緒ね、なんていう腹黒。

「どうだ可愛らしい生のファラちゃんの姿は!ほ!は!」

アチョー!!と某中国女性ファイターの装備を身につけ真似をしながらファイティングポーズをとれば、アイザックは悶えうずくまりながらも悪態をついた。直継が呟く「コスプレが嫌いな男はこの世に存在しない」そしてアカツキは飛び膝をその変態の頬に蹴り入れた。

「は!ちんちくりんじゃねぇか!強そうに見えねぇな!」
「でもアイザック顔あか」
「うるせえええ!」

「だが年齢に反して痛いな、その装備」

くいっと眼鏡を上げてフッと鼻で笑うクラスティ様にな、なんだと!と振り返る。

じゃあこの装備はどうだ!この軽量を加え格闘家のうちではレア中の激レアの装備だぞ!ボフン!「確かに今では手に入らない幻の装備ではあるが、貴様には似合っていない」

そんな会話をうずくまるアイザックを横に繰り広げている正統派装備の背が高いインテリイケメンと小さなコスプレ少女…成人女性が変な争いを勃発している中、その騒ぎを聞き付けてやってきていた西風の旅団メンバーは話を一部始終聞いた上で目を丸くして驚いた。

そしてファラと同じ職業のカワラは小刻みに震えながら歓喜の雄叫びをあげた。

「し…師匠!師匠!思い出しました…格闘家の間では有名な話なんですが、少し前に姿をバッタリ眩ました世の格闘家達が憧れるプレイヤーの話なんですけど、激レア装備を持っているにも関わらず超難関ダンジョンをギャグ装備(コスプレ)のみでクリアしまくっている女性プレイヤーなのだと…名前は格闘家達のなかでも上層しか知らないんですが…もしかしてファラさんがその……」

「うん、その二つ名って"七色の扮装鬼神"じゃない?」

「あっ!そうです!!」

「シロ先輩…僕、戸惑いが隠せません。Level90なのに少しステが低いレアな装備なのはそれでか」


クラスティ様にぼっこぼこにものを言われてくじけた私は涙目になりながらもいつもの変哲のない装備に変える。着替えている時も「フッ、どうした?もう終わりか、二つ名は飾りのようだな」だなんて言われた。くそー!!
黒い、黒いよお、シロくんが真っ白に見えるくらい暗黒だようソウジロウくん。

振り返って助けを求めれば、肩を落としたソウジロウくんが背景を黒に背負って私を恨めしそうに見ていた。

「…ボクだけ知らなかったんですね」

「セタ?…お、おいまさかおまセタとまさかな、まさかだろ?」

今までうずくまっていたアイザックが顔を上げる。さっきとは比べものにならない程に俊敏に説明しろよ!!と向き直る彼にびくりとしながらもふふんと鼻を鳴らした。

「むふふ、あの時から凄い進歩でしょ。おっさんがたじろがないでよ」

「嘘だろ、ふざけんな…」

「いや貴様もいい歳だろう?」

やめて、クラスティ様!まだ四捨五入しても25なんだから!三十路じゃないんだから!



「ファラさんはもうボクのものです」


後ろからぐいと引っ張られる。重力に負けて私はストンとソウジロウ君の胸に着地した。

聞いた?みんな聞いた?アイザック聞いた?ちょ、クラスティ眼鏡拭いてちゃんと見てる?

「んじゃ、わたしはソウジロウくんのものなので」

火照る頬を抑え、ぷんぷん怒るソウジロウくんに手を引かれてその場を足早に去る。
なんだか嘘だろ!!とアイザックが叫んでるし、珍しくクラスティ様も眼鏡が傾いているけど気にしない。

「ソウジロウ君、皆と知り合いだったこと黙っててごめんね…」

「まぁ、それは百歩譲ったとしても、ボクを避けていたのは酷いです、茶会に来ていたのに今まで知らないなんて」

「皆に口止めしてストーカーしてたから、ばれたら嫌われちゃうと思って…」

「…嫌いになんかなりませんよ」

深くため息をついたソウジロウ君は握られた手を更にぎゅうっと強く握った。

「でもまぁ、ここが僕たちのリアルになった時、貴方に直ぐ出会えて良かった」

結果オーライですかね、と恥ずかしくて頬をかくソウジロウ君にいつもより数倍きゅんとした。

「可愛い」

「…やめて下さい怒りますよ」



--fin--
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