▼ 11.鼻血ふきふきして下さい
「もう!ファラさんちゃんと僕の話聞いてますか?でもボーっとしたファラさんもとっても可愛いですけどね!」
「…ソウジロウきゅん」
貴方がこんなに付き合った人に甘えたになる性質だとは思わなかったけれど、なんにせよ仔犬みたいに尻尾ふりふりして目を輝かせて近寄ってくる様はとっても可愛い。
だけど、身が持たないよ。
心臓がドキドキして?いや、そんな可愛い表現じゃない。ソウジロウ君を押し倒してキャンキャン言わせたい。そんな衝動をぐっと耐える日々だ。とりあえずナズナちゃんにはいつもヨダレ拭きなと言われている。こんな私で本当に良いのだろうかソウジロウ君は。
「でもちゃんと僕を見てくれないとお仕置きですよ?」
「今日はファラさんからちゅうして下さい!…昨日、僕の装備の匂いを嗅いで鼻血出してた事皆に言って欲しくないですよね?」
前とは違う好きあった関係と黒いソウジロウくんにドギマギしている日々である。
ソウジロウ君がまさか腹黒性質を備えているとは知らなかった。嫌だ?ううん、むしろそんなギャップにハァハァしてる。
可愛い顔でそんな生意気な事言われるなんてとてつもなく興奮する。
「ファラさん、鼻血」
ほら、今だって。最近はしょっちゅう私のお鼻から血が垂れている。最初はきゃあ!なんて可愛い声出して隠していたけれどもう最近はそんなのどうでも良い。
笑いたければ笑えば良い。
欲求不満過ぎて死にそうだ。
「あ!そうだ!今日は新しく出来たカフェに一緒に行きませんか?」
「…へぇ、良いね!行く行く!」
二人で街中を歩いてれば見憶えのある顔に出くわしてしまった。
「うわ、しまった」
「ぅおおい!!お前、どこまでシカト祭りなんだよコラぁ!!」
「ぎゃあああ!直継だぁ!!おパンツ取られる助けてソウジロウ君!!」
引っ張られる腕にもがきながらソウジロウ君に手を伸ばせば目をまん丸くしている。
「おま、何で俺の念話には出ないんだよ!!シロのには出てんのによぉ…おりゃあ寂しくて寂しくて…」
負を背負ってずーんと蹲るデカ継。私は彼のそばに寄り肩に手を置き振り返った彼に笑顔で告げた。
「だって直継、弄りたかったから」
「出たドエス!!」
「まぁまぁ直継。良いじゃないか、ソウジロウとも上手くいったみたいだし」
ゆるゆると直継をたしなめるシロ君が私とソウジロウ君を見て微笑む。その横にいる幼女誰?
「シロ君、幼女趣味あったの?」
「うん、いつの間に脳みそ溶けちゃったのかな?」
ぷるぷる震えながら「幼女言うなー!!」と怒っている彼女は列記とした大人らしく、直継が腹を抱えて笑っていた。申し訳ない。
「ほんとごめんね、直継は私が調教しなおすから許してあげて」
「む、なら許す」
「怖い!!その話なんか怖いからやめて!!」
私達が三人で、いやアカツキちゃんとわたしで直継の行く末を決めていると後ろから「あ…あの…」と久しぶりにソウジロウ君が口を開いた。
「そういや何でファラとソウジロウが一緒にいるんだよ、お前ストー…ぶっ!!」
「え?何?ストーブ?この世界には無いんじゃないかなぁ」
その時、察しの良いシロ君が声を出した。
「ああ、そうゆうこと」
「し…ししし、シロ君…」
「昔から大好きだったからね。PTにソウジロウが入ってると絶対来ないし、遠くから見て楽しみたいっていう変態ストーカーだったからね」
「シロくんやめてええ!!!!」
なんで、なんでそういうこと簡単にバラしちゃうの!私が涙目で訴えてもフフフと笑って知ってる事を全部ソウジロウ君に話し始める。うわあああ!!アカツキちゃんが私を見る目が変わっちゃったじゃないか!
「ばか!ばかばか!!腹黒眼鏡あんぽんたーん!!」
「まだ言えないような事は言ってないけど?」
「…ごめんなさい」
「ぶは!良かったじゃねぇか!」と盛大に喜び笑い出す直継をシロ君の胸ぐらを掴みながら横目で見ればまた余計な事を口走る。
「な?大災害前に電話してやって正解だっただろ?」
その言葉を聞いたソウジロウ君は静かに話を聞くのから一転、「は?電話?電話て携帯の?」と前のめりになりながら直継やシロ君に問いただした。直継がそんな珍しいソウジロウ君に「随分とご執心なのな、お前」と肩を叩きながらにやにや笑っている。
「ねぇ、だけどあんたが電話してこなかったら多分プリン食って録画してたドラマ見てええ、こんな落ちなの!?ってひっくり返ってさぁお風呂って仕事で疲れた体を休めていた最高の一日だったんだけど。でも、ありがとうございました。とりあえずソウジロウ君から手を離して、おパンツが伝染る」
「ちょっ!あの、電話って!?」
「リア友なんだよ、直継とファラ」
ファラと直継は同じ高校だったんだよと聞いてソウジロウはワナワナと震え出した。それはそうだ、今までアキバの街の治安を良くする為に一緒に居たシロエと直継までもがファラの知り合いで、尚且つ直継はリアルで生活を共にしていたのだから。皆と自分以上に古い友人である事にもだが、それを教えてくれなかった事にもショックを隠しきれないのだ。
楽しそうに久しぶりの会話をする二人をソウジロウはぶるぶると捨てられた仔犬のような顔で見ている。
「直継は就職活動で忙しくてログインが二年ぶりだけどファラはちょくちょく来てたよ」
ソウジロウの涙がこぼれ落ちそうになった時新たな声が後ろから聞こえてきた。
「なんだ有名な顔が集まって」
「久々に見る顔じゃないか」
この声は某戦闘系ギルドのアイザックにクラスティさまではないか。
まぁ、アイザックはさて置いて。くいっと眼鏡を上げるクラスティ様に私はごくりと喉を鳴らした。苦手なのだ、腹黒の中でもたちが悪いぞこの人は。
(何か私の顔に付いているかな?)
(いたたた、何でホッペつねるの!!)
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