叶えてあげよう、夢の続きを


!)未成年者が飲酒するシーンが含まれますが、未成年飲酒を推奨する意図はありません。


「ネズミ、ネズミ、起きろ。二次会行くってよ」

サソリという先輩に肩を揺すられて、ネズミは目を覚ました。
どうやら、酔って机に突っ伏して寝てしまっていたようだ。
腕がひどく痺れて、すぐには起き上がれない。
ネズミが呻いていると、サソリは砂色の髪をかき揚げ覗き込んできた。

「立てるか?それとも、もう帰るか」
「…帰る」

不機嫌さを隠さず、ネズミはぼそりと答える。

「なんだよ、酔ったのか?ネズミにしては珍しいな」
「違う。なんか、いい夢見てたんだよ。くそっ」

目覚めたくなかった。
ふわふわして、とても心地の良い夢だった。
もうよく思い出せないが、そこに紫苑がいた気がした。


よう、夢の続きを


結局、サソリに肩を借りて飲み屋を出た。
具合の悪そうなネズミに、他の先輩たちは心配して声をかける。

「ネズミくん、大丈夫?」
「飲みすぎたか?」
「もう帰る?」

実際のところ、なんとなく体がだるいだけで、大したことはなかったのだが。
最低の気分だったネズミが、それぞれの質問に答えるのも億劫で黙っていると、代わりにサソリが答える。

「おれがこいつ送ってくから」

そう、お大事にな、と口々に言い置いて先輩たちは賑やかに去っていく。
じゃあ…とサソリが口を開きかけ、そして固まった。
どうしたのかとネズミは顔を上げ、同じく絶句する。

紫苑がいた。
いつものスーツ姿ではなく、ラフな格好で。

「ネズミ」
低く冷えた声で、紫苑が言う。
「それから…君は、サソリ君だよね」

普段の優しい紫苑とは違う、威圧感さえ感じられる様子に、サソリは萎縮する。

「いま何時か分かってる?しかも、見たところネズミくんは酔ってるよね。普通なら補導ものだよ、君たち」
「すみません、今すぐ連れて帰りますんで」

冷や汗を浮かべながら、サソリがやっとのことで言う。
紫苑は、サソリの声など聞こえなかったように無視し、じっとネズミを見据える。
ネズミも、負けずに見返す。

「サソリくん、君は帰りなさい。今回は見なかったことにする。けど、ネズミ。君は」

紫苑の瞳からは、何も読み取れない。
しかし、怒っているのは分かる。
腹に力を込めて言い返す。

「おれが、なんだよ」

サソリが、非難するように身動ぎする。
紫苑の目が、すっと細まった。

「こっちへ来い」
「は?」

紫苑はネズミの手首を掴み、サソリから奪い取る。
帰っていいと言われたサソリは、呆気に取られて二人を見送った。


「おい紫苑、なんだよ、どこに行くんだよ」
「ぼくの車」
「は?また送ってくれるわけ」
「そう」
「いい、遠慮する、ガソリン代がもったいない」
「だよね」
「は?」
「だから、今日の行き先はぼくの家。そんな状態の君を、電車に乗せられるわけないだろ」
「おれ、そこまで泥酔してないぜ」
「分かってないんだ、君は」
「何が…って、ちょ、…ん」
「逃がさないよ、ネズミ…僕だって男だ」


紫苑はシャツを、パサリと脱ぎ捨てた。


しお…、やめ、…

やめない。今までさんざん、君が誘ったくせに

はっ…、ちが、そんなんじゃ…

何が違うの?違わないよね

ちょ…、落ち着けって、し…おん、…あっ

それは無理




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