はいでえ!比嘉中!! | ナノ
8/19 木手永四郎
また一から始めよう。
今度こそはわったーの時代だ。
そう言われて嬉しかった。
けれど、やはり今は悔しさが強かった。
木手 永四郎
更衣室に入ると、皆が一斉に着替え始める。
平古場君と甲斐君は、これからどこに遊びに行くかを話していた。
その不謹慎さに一瞬腹を立てそうになったが、無理して周りに明るい声を振り撒いているのだと気付く。
わざと声を大きくして、周りの人に話題振り撒いて。
平古場君も甲斐君も、悔しい気持ちは当然あるだろう。
けれど、それを面に出さずに次があるさ。と笑い飛ばす強さを持っている。
なのに、俺はどうなのだろう。
キャプテンのくせして気落ちした仲間達にまだ次がある、この負けをバネにしよう、そんな一言すら喉がつかえて言えない。
自分の感情を抑制するので手一杯の現状。
甲斐君や平古場君が重たい空気を払拭しようとしてくれているのに、いつまでも引きずって暗い雰囲気を纏う自分がいたたまれない。
だからといって、とてもじゃないが彼らのように明るく振る舞えやしない。
「キャプテン?」
ハンドタオルを持って、更衣室を出ようとすると田仁志君が心配そうにうかがってきた。
部員に気を使わせるとは、本当に何をやっているのだ自分は。
上手く笑えるかは知らないが、顔の筋肉を笑みの形にする。
「血を洗い流してきます」
それだけ言って更衣室を後にした。
額に触れれば、表面が乾き始めた血がゼリーのような触感を与えてくる。
腕も砂まみれだ。
みっともないな。と思い、トイレへ向かった。
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