デスノ 君と私は足してゼロ | ナノ
6周年企画:原作介入
ぴゅうと風が吹いて皆が首を縮める冬だった。
買い出しに出て、寒い寒いと家に入って荷物を置いた時、タイミング良く携帯電話が音を奏でた。
見れば知らない番号。
海外電話なのだろう、ディスプレイにはやたらと多い数字が表示されていた。
通話ボタンを押して、はい、と声を出すと、年末年始に聞いたきり、とんとご無沙汰だった大好きな声がした。
「シャリさんですか?」
「はい。お久しぶりですワタリさん」
君
と
私
は足して
ゼロ
起死回生
「今は何処に居ますか?」
問われて、ブタペストだと告げるとそうですか、とあっさり受け入れられた。
何でハンガリーに居るのか聞いてくれないのか……そういう、他人の生活に介入しないところも好きです。
無関心のドライさはこちらを振り向かせたいと思う女心には有効なのだ。
「今は家ですか?」
「はい。アパートの中です。部屋には私しか居ませんから安心して下さい」
外出中であれば、私はワタリさんをワイミーさんと呼ぶ。
外でワタリさんをワタリさんと呼ぶほど私は彼等の立場を理解していないわけではないし、理解しながらもつい癖で口を滑らせるほど愚かでもない。
ワタリさんが周りを気にするという事は、きっと内容も重たいのだろう。
ワイミーズの中で成績もさほど良くなかった、あのクラスでは落ちこぼれと言われた私に真面目な話を振ってくるなんて、どういう風の吹き回しだろうか。
以前と同じように、ワタリさんの代わりにLの世話をしろと言うのだろうか?
素直な気持ちを言わせてもらえるならばLの世話なんでワタリさんの依頼でなければ一蹴して終わりだが、ワタリさんが言うのならこの私が引き受けないはずがない。
第一、どれだけ寛大なワタリさんだって四六時中Lと一緒では、いい加減Lに愛想を尽かすはずだ。
私も一週間で根を上げそうになったしね。
ワタリさんだって稀には息抜きにLから離れたいはず。
まぁ、前みたいにいきなり来いと言われて何も身支度しないままに飛び出したのに比べたら、前回の経験がある分、今回は落ち着いて話を聞けるから良いとしよう。
一週間なら会社に連絡を入れて有休をとれるし、私もクビにならないで済む。
まぁ、Lが居るのは国外だから往復考えて10日連休をいただくとしようか。
「ニュースは見ていますか?」
「ワタリさんほどではありませんが、日常生活に差し支えない程度に」
「では、キラをご存知ですか?」
「ああ、ネットで騒がれてますね」
キラは今やネットの話題の中心だ。
確か、犯罪者を神の手で裁いている存在と言われていたな。
たまたまそういう感染症が流行り出したのかと思って傍観していたけれど、どうにもそういうわけではないらしい。
逃走中の犯人が心臓麻痺で死んだらしいし、周りはその心臓麻痺を引き起こす病気に感染していないからウィルス性のものではないとか。
それに、最初は捕まった犯人が裁かれていたから収容所の中で口減らしを兼ねて殺されていると考えられていたけれど、さっき述べたように逃走中の犯人が死んだのだ。収容所の中で行われている犯罪ではないと分かる。
ワタリさんが話題に持ち出すということは、これらが何か意味を持つのだろう。
けれど、それを私に言うのはどういう了見なのか。
神の手とか、リアルで慎ましやかに生きている私には別次元の話すぎて、話題に乗っかる気もなかったのだけれど。
おかげで最近のキラ情報には疎い。
「その犯人の調査を、現在Lが指揮しています」
あんな曖昧な、変な力を持つ存在を相手にしているの?
人間と戦っていれば良いのに、また変な相手を選ぶものだ。
神と戦うとでもいうのかね。
殺されているのは犯罪者なのだから、放っておけばいいのに。
どうせ人を殺した凶悪犯ばかりなのだから、殺した分殺されても文句も言えないだろうし。
それに心臓麻痺で死ねるのだから、もがき苦しんで死ぬより良いではないか。
よほど良心的な神の手だよ。
私が神の手を持っていたなら、犯罪内容をそのまま返す裁きを下すだろうのに。
「Bがキラに裁かれました」
「え?あいつ犯罪者だったんですか?」
今もどこかで探偵業を営んでいるはずなんだけど。
まぁ、法に触れるやり方で情報収集するのを厭わない奴なのは重々理解しているし、サイコパスなのも知っている。
けれど、あいつは賢いから見つからないはずだ。
公にならずに物事を進めているはずなのに、何でそのBが殺されている?
何で、キラの目に止まった?
「ご存じなかったのですか?いつからハンガリーに?」
「2002年の11月です」
「アメリカに居たのは?」
「2002年の10月までですね」
「新聞は?」
「読んでいましたよ」
「では、知っているはずです。ビヨンド=バースデーを」
言われて、カチリと記憶の鍵が開けられる。
B。ビヨンド。ビヨンド=バースデー。
あれがBの名前だったのか。
だからあの年末に、私にいつかBの名前を知る事になるって言っていたのか。
あの馬鹿、何で犯罪者になって新聞に名前を載せているんだよ。
本名が知られているって事は出生も調べられているって事だ。
ワイミーズハウスにかかる負担も考えろ。
それにしても、あの馬鹿は3人も殺して何がしたかったのか。
尤も、それを知る術はない。だってBはもう死んでいるのだから。
「それで弔い合戦ですか?」
Lらしくもない。
LはBが嫌いだったはずだ。
BはLに固執して、煩わしかっただろうし。
それにBは変態だったし。
B。
Beyond=Birthday。
犯罪をするに至った経緯はワイミーズに入ってあの空間で育てられたからか、それとも持って生まれた天性か。
どちらにしろ、彼が苦しまずに死ねたことだけが、唯一の救いだ。
あれ、あいつ確か焼身自殺を図ろうとしたんだっけ?
痛かっただろうな。
本当、馬鹿だね。
「いえ、私情はありません。ただ、シャリさんにお伝えしておこうと思いまして」
「そうですか。それで、私は何をすれば良いんです?」
ワタリさんが私に電話してきて、Bの死を伝えるだけで終わる訳がない。
相手は神の手を持つ存在。
きっと猫の手も借りたいくらいだろう。
「まず、日本に来て下さい」
「私の役割は?」
「ある人物の尾行です」
「え?尾行?日本で?私、凄く目立ちますよ」
黄色人種ではないのだから、目立つにもほどがある。
「構いません。むしろそれが狙いです。シャリさんは偽名での生活に慣れていますしね。日本では、決して本名を名乗らないで下さい。今からパスポートも偽装して、日本に来て下さい。貴方は日本では…そうですね、##name_3##とでも名乗って下さい」
「名前を変える理由は?」
「最近のニュースを見ていませんね?」
「見ていませんね」
「では、それらについてもこちらに着き次第ご説明します。まずは、早急に来て下さい」
「分かりました」
またあの一週間の時みたいに私は家をそのままに、そして会社に連絡も入れずに少しの荷物を持って空港に向かった。
今度は一週間では帰られないだろう。私は晴れてまた無職だ。
でも、構わない。
生きて帰って来られたら、また仕事を探せばい良いんだ。
私はどこでだって生きていける。
パスポートの偽装なんで得意ではないけれど、今年の頭にワイミーズで遊び半分に作った物があるから、それを利用しよう。
目指す先は日本。
***
遊々、お祝いメッセージをありがとう御座いました!
Twitterで話していた内容をどうしても話にしたくて、原作にヒロイン介入する物語を書いてしまいました。
LがFBI(レイ・ペンバー)に頼る前にヒロインに頼っていたら、きっと面白い事になっていただろうなと思います。
バスジャックされても身分明かす物がないし、おやおやバスジャックされちゃったよ私は銃も持ってないしくらいに構えて、月も情報入手出来ずに太刀打ちできなければいいのにと。
で、大学もヒロインが入って月に対してあの時の少年じゃないかよろしく!みたいな。
(月はリュークからヒロインが尾行していると知らされているから疑心でムカムカすればいいです)
お姉さん肌なので、ミサとも仲良くなれるのではないかな〜って。
本当に、表舞台にLが出ずにヒロインが動き回って、FBIや日本警察との衝突も緩和させて行けたらいいのに。
尤も、日本警察は姿を見せないLに不信感しか持たないから、難しいのでしょうけれど……そこはワタリさんサポートで頑張ってもらえればと思います。
本当、原作にヒロインが介入すれば、Lの死亡フラグバッキバキに折ってくれると思っています。
しばらくはこの妄想だけで楽しんでいけます。
本当に、物語を一緒に作ってくださりありがとう御座いました!
2013.11.30
- 20 -
[
*前
] | [
次#
]
←
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -