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コナー



料理はチェイスと距離を縮める為の手段でしかなかった。少なくとも、変異体になる前のコナーにとってはそうだったはずだ。それが愉しく感じるようになったのはいつ頃からだっただろうか。チェイスが自分の料理を"美味しい"と笑顔で頬張るのを見て、もっと凝った料理を作りたいと思うようになった。少食なはずのチェイスがたくさん食べるのを見て、もっと様々な料理を学びたいと思うようになった。目的を達成する為の手段でしかなかったはずの料理──それがいつの間にか、コナーにとって趣味と呼べるほど愉しいものになっていた。

料理だけではなく、もしかしたら恋愛小説を読む事やおしゃれをする事も趣味と呼べるのかもしれない。最近はチェイスが好む恋愛小説を読むのも愉しく思えたし(チェイスが好きな恋愛シチュエーションを知る事が出来るから、という少し変わった愉しみ方だが)、チェイスとお互いの服を選んだりしておしゃれを愉しむようにもなったからだ。改めて考えてみるとコナーの趣味はチェイスが関係する事ばかりだった。段々と愛する人の色に染まっていく、染められていく…それはコナーにとってどうしようもなく心地好くて、言葉にならないほどの幸福感があった。


「チェイス」


先に寝室のベッドに横たわって寛いでいたチェイスの名前を呼び、コナーは彼に覆い被さるようにしてベッドの上へと乗り上げた。自分の下で「どうしたの、コナー」と優しく微笑みかけてくるチェイスを見て、コナーは小さく笑みを返すと彼と唇を重ね合わせる。触れるだけの優しいキスの後、コナーはチェイスの耳元で「僕をあなた色に染めてください、チェイス」と囁いた。

ぐるりと視界が反転して、今度はコナーがチェイスに押し倒されるような体勢になった。「後悔しないでね」というチェイスの言葉に何か答えるよりも先に、チェイスの唇でコナーの唇は塞がれてしまう。喜びと興奮で無意識のうちに身体が打ち震える。口内に侵入してきた舌に翻弄され、チェイスの身体へ必死に腰を押し付けながら──"この淫らな行為も趣味と呼べるのだろうか"なんて、コナーはそんな事をぼんやりと考えた。

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