「あー…しまったな、今日は春日さん達と飯食いに行く約束してたんだった」
昨夜、遅くまで仕事をしていたせいで、約束の時間ギリギリに目が覚めてしまった。小さく舌打ちをして、春日さんに"遅れるから先に店入っててくれ"と手短にメールを打って身支度をする。いつもより髪型のセットに時間がかけられず、納得のいかない仕上がりになってしまったが仕方ない。支度を終えた俺が急いで玄関の扉を開けると…。
「おはようございます、綾瀬さん」
何故か、ハン・ジュンギがそこに立っていた。目を丸くして「…何でここに居るんだ、お前」と問いかける。ハン・ジュンギはその問いに答えず、「今日はいつもより髪型が決まってませんね」と俺の髪型を見て呟いた。余計なお世話だ。
「…寝坊したんだよ。悪いか」
「そうだろうと思ったので迎えに来ました」
「春日さんにメール送ったのついさっきだぞ。何で遅れると思ったんだ、一応まだ約束の時間前なのに」
「昨夜は遅くまでお仕事をされていたようなので」
「…それを話した覚えもないんだが」
ハン・ジュンギは笑みを浮かべるだけで何も言わなかった。「お前…俺の監視ばかりしてるようだが、そんなに暇なのか」と呆れたように言うと、ハン・ジュンギは「暇ではありませんが、誰かが監視していないと貴方は無茶ばかりしますから」と肩をすくめてみせる。
「あまり私の仕事を増やさないでもらいたいですね」
別にハン・ジュンギの仕事を増やしているつもりはない。無茶する奴を監視したいのなら春日さんでも監視してたらいいだろうが。「春日さん達が待ちくたびれてしまいます。そろそろ行きましょう」と、ハン・ジュンギは俺の腕を掴んで歩き出した。
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